1.プロローグ
身体の芯を貫くような、重く鋭い衝撃。
それが何度も繰り返されるたび、僕の意識はパチパチと弾ける火花のように遠のいていった。
目の前には、怒りで形相を変えた両親。
部屋の隅には、僕を縛り付けていた数々の「教育」という名の鎖。
この狭い、光の届かない部屋が、僕の世界のすべてだった。
「……あぁ、そっか」
口の中に広がる鉄の味を感じながら、僕はどこか他人事のように思った。
僕の人生、ここで終わるんだ。
人には決して言えないような仕打ちを受けて、息を吸うことさえ制限されて。
結局、最後までこの家から一歩も出られないまま死んでいく。
けれど、不思議と絶望はなかった。
元々、「なんとかなるでしょ」と笑っていられる質だったからだろうか。
それとも、ようやくこの地獄から解放されることが、ただ嬉しかったからだろうか。
薄れゆく視界の端で、窓の外に広がる夜空が見えた。
あそこには、制限も、暴力も、自分を縛り付ける親もいない。
(……次は。もし次があるなら、もっと自由に生きていきたいな)
誰にも邪魔されず、自分の足でどこまでも歩いて、自分の好きなものを選んで。
そんな、当たり前で、最高に贅沢な自由を。
最期の吐息とともに、僕は願った。
僕の名前――×××という存在が、この世から消えてなくなるその瞬間に。
「…………っ」
次にまぶたを叩いたのは、暴力の痛みではなく、突き抜けるような青空の眩しさだった。




