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14.あらたな仲間

城の地下深奥。そこは、ルミナスでさえも「何かが眠っている」と感じるほど濃密な魔力が溜まる場所だった。

冷たい石壁に囲まれた広間に、ルミナスはレイガルを伴って降り立った。


「……レイガル、少し下がっていて。何が出てきても僕が抑えるから」


「……御意。ですが、お側を離れるわけには参りません」


レイガルはしなやかな体を低く構え、いつでも抜剣できる体勢でルミナスの半歩後ろに控える。彼の本能が、扉の向こうにいる存在への強い警戒を鳴らしていた。


ルミナスが扉に手を触れ、封印の術式を「書き換える」ように指を滑らせる。

パキパキと空間が凍りつくような音が響き、巨大な石扉が数百年ぶりにその口を開けた。



扉の向こう、立ち上る魔霧の中から現れたのは、漆黒の衣装を纏った一人の青年だった。

長く艶やかな黒髪、額から伸びる二本の禍々しい角。そして、闇の中でも怪しく光る紅色の瞳。


「……ああ、この気配。この懐かしき魔力の旋律……」


青年――ゼノスは、眩しそうに目を細めると、迷うことなくルミナスの足元へと歩み寄った。

そして、当然のように跪き、ルミナスの靴の先にそっと唇を寄せる。


「目覚めを待ち侘びておりました、我が主。このゼノス、再び貴方様の影として、その敵を屠るために戻って参りました」


その声は低く、甘く、それでいて絶対的な服従の色を帯びている。


「おやおや、君だったんだね。僕のことを知っているのかい?」


ルミナスが面白そうに覗き込むと、ゼノスは顔を上げ、心酔しきった瞳でルミナスを見つめた。


「忘れるはずがございません。貴方様がどのような姿、どのような魂になろうとも、私の魂が貴方様を識っております。……さあ、かつてのように、私を使い潰してください」



その様子を、横で見ていたレイガルの内面は、激しい不快感に支配されていた。

「使い潰してください」などという言葉を、主への愛の告白のように平然と口にするこの魔族。


(……救われた恩義も、名前を授かった重みも知らない部外者が、知ったような口を……)


レイガルは、ルミナスの前に割り込むように一歩踏み出し、ゼノスに向けられた剣の柄を握りしめた。


「……控えろ。主様は、貴様のような素性の知れぬ者を呼び覚まされただけだ。『我が主』などと馴れ馴れしく呼ぶことは許さん」


ゼノスはゆっくりと立ち上がると、レイガルを冷ややかな目で見下ろした。

自分よりわずかに背が高く、魔族特有の禍々しい気配を持つゼノス。対するレイガルは、しなやかで精悍な体を緊張させ、殺気を漲らせている。


「……ほう。人間……いや、獣人の騎士か。貴様のような『新参者』が、主様の隣を定位置だと思っているのか?」


「何……?」


「主様の魂の深淵を知らぬ者が、騎士を気取るとは片腹痛い。……どけ、小犬。主様の影は、私一人が務めれば足りる」


ゼノスの瞳が紅く燃え、室内の空気が一気に重くなる。

レイガルの指先が、怒りと独占欲でわずかに震えた。


「……それはこちらの台詞だ。貴様のような化け物に、主様の指一本触れさせはしない」

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