11.自覚
あはは、ごめんなさい!確かにいきなりアクセル踏みすぎちゃいましたね。
レイガルの独占欲が急上昇して、一気に「夜のバルコニー」まで飛ばしすぎました。
もう少し時間を巻き戻して、「カインを保護した直後の城」の空気感から、じわじわとレイガルの心境がざわついていく様子を丁寧に書き直しますね。
第14話:招かれざる黄金と、静かなる波紋
カインを連れ帰ったルミナスの城は、これまでになく賑やか……というより、妙な緊張感に包まれていた。
「さあ、カイン。ここが君の部屋だよ。気に入ってくれるといいんだけど」
ルミナスが案内したのは、一番陽当たりの良い、柔らかな光が差し込む一室。カインは、さっきまで断頭台にいた自分と、今目の前にあるふかふかのベッドを交互に見て、震える声で呟いた。
「……夢、じゃないんですよね。僕、本当に……ここにいていいんですか?」
「もちろん。君が望むなら、ずっといていいんだよ」
ルミナスが優しく笑い、カインの頭に手を置こうとした――その時。
後ろに控えていたレイガルの鎧が、ガシャリと重い音を立てた。
「ルミナス様。……食事の準備が整っております。彼をこれ以上、甘やかすのはお体に障るかと」
レイガルの声は、いつも以上に低く、どこか刺々しい。
「あはは、レイガルは心配性だね。でもカインはひどい目に遭ってきたんだ、これくらい普通だよ」
ルミナスは気にせず、カインを食堂へと誘った。
食堂では、魔法で用意された温かいスープやパンが並んでいる。
カインは、ルミナスの隣という特等席に座らされ、恐縮しながらも必死に食事を口に運んでいた。
「……おいしい、です。こんなに温かいスープ、生まれて初めて食べました」
ポロポロと涙をこぼしながら食べるカイン。ルミナスは「そっかそっか」と、自分のハンカチでカインの頬を拭いてあげる。
「ほら、鼻が赤くなってるよ。可愛い顔が台無しだ」
「っ……あ、……ありがとうございます……!」
カインの顔がボッと赤くなる。その初々しい反応を、ルミナスは楽しそうに見つめていた。
だが、その光景を「給仕」のポジションでじっと見つめるレイガルにとっては、地獄のような光景だった。
(……あんな子供に、ルミナス様が触れている)
(あんな小僧のために、ルミナス様が微笑んでいる)
レイガルが持つトレイが、彼の膂力によって、わずかに歪み始める。
これまで自分だけが受けていた特別な慈愛が、新入りの、しかも自分よりずっと弱々しく「守ってあげたくなる」ような少年へと向けられている。
「…………」
レイガルは一言も発さない。だが、彼の背後からは、隠しきれない重苦しいプレッシャーが漂っていた。
「……レイガル? スープ、おかわりあるかな?」
ルミナスが振り返って尋ねる。レイガルは一瞬の沈黙の後、恭しく、けれどどこか強引な動作でボウルを取り上げた。
「……承知いたしました。ですがルミナス様、これ以上は消化に良くありません。食事の後は、彼をすぐに休ませるべきかと。……貴方と二人で、お話ししたいこともございますので」
最後の一言に、拒絶を許さないような重みが籠もる。
ルミナスは、いつもは忠実なレイガルが見せた微かな「刺」に気づき、面白そうに目を細めた。
「ふーん。わかったよ、レイガル。じゃあ、カインを寝かせたら、ゆっくり二人で話そうか」
カインは二人の間に流れる奇妙な空気――ルミナスの余裕と、レイガルの底知れない威圧感――に挟まれ、ただただ顔を真っ赤にして縮こまるしかなかった。




