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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第5章

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第89話 ローラへのお土産

 翌日、オーレリアたちはゼフィの家の前の広場に集まっていた。


「リア。これも持っておいき!」

「これも!あとこれも持っていきな!」

「わぁ!こんなにたくさん、ありがとう!」


 オーレリアが魔の森に出発するということで、集まった里の人たちが食べ物やら何やらを持たせてくれる。


「オーレリア!シャンプーとリンスに化粧水。こっちはハンドクリームね。それから、マナポーションを持っていきなさい。帰ったらすぐに飲むといいわ」

「イヴェット!ありがとう!」


 そうだ、魔の森は魔素が少ないからまた気絶しかねない。気をつけなきゃ。


「リア!私のご飯がなくなったらいつでも帰ってきなさい!」

「うん!そうする!」


 アルシアはオーレリアが持ち帰れるように、暇な時間にたくさん料理を作ってくれていた。こちらは昨日のうちに全て収納済みだ。

 同じレシピでつくっても、オーレリアとレミーでは、アルシアの味にはたどり着けないのだ。大切に食べよう。


「オーレリア!本当に送っていかなくて大丈夫か?また気絶するかもしれないぞ?」

「大丈夫だよ、ゼフィ。あっちにも大分慣れたはずだし、イヴェットがマナポーションをくれたし」

「そうか?無理するなよ?早めに魔法陣を作るといいぞ!」

「わかった。じゃあみんな、行こうか!」


 里の人たちと挨拶していたノルとネロとえっちゃんを呼び寄せる。


「ちょっと待って!リアちゃん!」

「セリアン?どうしたの?」

「今回はリアちゃんにたくさん私の服を着てもらったからね!お礼とお詫びに、冬用の洋服一式をプレゼントするわ!」

「え?フリルがたくさんついてる?」

「ついてないわよ!あなたがいつも着ているような服の、冬用って感じかしら」

「ありがとう!でも、いつものでも十分なのに」

「いくら魔法がかけられているからって、冬にペラペラの外套じゃ寒そうに見えるでしょう?町に行ったら変な目で見られるわよ?」

「なるほど!ありがとう、セリアン!」

「いいのよ!魔の森での生活、頑張りなさい!」

「うん!セリアンも王都で頑張ってね!」


「じゃあね、みんな!」

『ばいば~い!』

『またね~!』

『またなー!』


 オーレリアは転移魔法を発動する。眩い光につつまれて、ヒュンっと一瞬で魔の森に帰っていった。


「あっさりしたものだ」

「フフ。リアらしいわね!」

「さすが、イゾルデの弟子だわ!」



***



 一方、六日ぶりに魔の森に帰ってきたオーレリアはというと……


「ふぁぁぁあ゛!身体が重い!」


 帰ったとたん、庭先でがっくりと膝をついた。


『なんかズッシリくるな!』

『ちょっとだるいよね!』

『うん、ちょっとね!』

「あ゛あ゛あ゛〜」

『りあ!だいじょうぶ?』

『リア!気を確かに持つんだ!』

『りあ!はやく、まなぽーしょん!』


 オーレリアは先程イヴェットにもらったマナポーションを一気に飲み干した。


「ゴクゴク……ハァ、助かった!イヴェット!ありがとう!」


 フラフラしながら辺りを見渡すと、なんと雪が降っていた。


「わぁ!雪が降ってる!道理で風が冷たいと思ったよ」

『わ〜い!ゆきだ~!』

『ちょっと、つもってる~!』

『畑の野菜は大丈夫なのかな?』


 畑の野菜にも雪が積もっている。その周りにはノーグが歩き回った跡がうっすらと残り、降り続いた雪がその跡を少しずつ覆い始めていた。


 雪の中を走り回って遊ぶノルとネロ。えっちゃんはちょっと怠いのか、別に雪が珍しくないからか、オーレリアの側でその様子を眺めている。


「えっちゃん。ノルとネロは放っておいて、家に入ろう」

『そうだな。あいつら元気だなぁ』


 オーレリアはその後、三日間ほど家に引きこもった。初めてここに来たときは、気絶して二日間も寝ていたし、そのあと十日間ほど引きこもっていたことを考えれば、だいぶ成長したと言っていいはずだ。


「よし、もう大丈夫!とりあえず今日は、ローラのところに行かない?」

『いいね!ひさしぶり』

『ろーら!げんきかな?』

『ローラなら、雪の中でも元気そうだよな』


 オーレリアはさっそく、セリアンにもらった冬用の服に着替えてみた。今までのものより厚手の生地だし、タイツも裏起毛で温かい。ブーツも長めで、底も滑り止めがついていて雪の中でも安全に歩けそうだ。紺色のコートは冬仕様で温かく、いつもの外套のようにさまざまな保護魔法が付与されていた。


「この保護魔法はルカが付けてくれたのかな?軽いしいい感じ!」


 さらに手袋とニットの帽子もセットで付けてくれていたので、それらもしっかりと被って外に出た。


「あれ?なんか、引きこもってた間にだいぶ雪積もったね?」

『うん!きのうは、すごくいっぱいふってたよ』

『ちょっとはなれたら、みえなくなっちゃうの!』

『昨日はかなり吹雪いてたんだぞ!ノルとネロはすぐに埋まっちゃうから、遊ぶのも大変だったんだ!』

「そんな日は家の中で遊びなよ!」


 ハイエルフの里から帰って来た日から、さらに雪は降り積もったようだ。少し雪をかぶっているだけだった畑の野菜も、今では一面雪に覆われ、どこになにが植えてあるのか分からないほどになっていた。

 山の木々も空も白く染まり、いつもの森はすっかり雪景色へと様変わりしていた。


「なんだか綺麗だね!じゃあえっちゃん、お願いね!」

『おう!』


 えっちゃんに乗って、ローラたちグラスブルがいる山を目指す。


 途中で通った聖域の湖にも雪が降り積もっていた。それでも雪の下からは、絵の具を溶かしたような淡い水色がぼんやりと透けて見える。まるで雪のヴェールを纏っているようで、とても美しかった。


 山に到着すると、いつものように草原で雪をかき分け草を食んでいるローラたちを見つけた。


「ローラ!久しぶりー!」

『おや?お嬢ちゃんじゃないかい!久しぶりだねぇ!』

『わーい!ろーら!あれ?』

『ろーら、おおきくなった?』

『毛がモコモコになってる!?』


 ローラは全体的にモコモコの毛並みになっているが、肩や首周りの毛が特にクリンクリンに膨らんでいて、以前会ったときより一回りは大きく見える。


『そりゃあ、冬なんだから当り前さね!』

「冬毛なんだ!モコモコで可愛いね!」

『バッ!お嬢ちゃんたら!可愛いだなんて照れるじゃないか!』

「相変わらず元気そうだねローラ。実はわたしたち、里帰りしてきたんだ。ローラたちにお土産があるんだよ!気に入ってくれるといいんだけど」

『お土産?なんだい?』


 オーレリアは空間収納から、大量の蒼の森の葉っぱを取り出した。蒼角牛(そうかくぎゅう)が好んで食べる葉っぱを、試しに持ち帰ってみたのだ。


『お嬢ちゃん!何だいこの葉っぱは?真っ青じゃないか!』

「これは蒼の森っていう、わたしの故郷の森に生えている葉っぱだよ。魔素がたっぷり含まれてて、蒼の森の牛たちもこの葉っぱが大好物なんだって!」

『へー。そうなのかい?一体全体、なんだってどうしたってこんなに青いんだろうね?』

「そういう森だからね。やめとく?いつもの岩塩もあるよ?」

『ちょいとお待ちよ!せっかくお嬢ちゃんからもらった土産を、ビビって食わねぇなんて女が廃るじゃないか!ちゃんと頂くよ!』

「う、うん。じゃあどうぞ!」

『……』

「……」

『……』

「……」

『……』

「……ビビってんじゃん」

『バッ!ビビってねーし!お嬢ちゃんはそこで黙ってみてな!!このあたしの生き様をよぉ!!!』


――ムシャムシャ


『う!』

「う?」

『うまーーーーい!』

「美味いんだ。ならよかった!」

『キャハハハハハ』

『ろーらおもしろーい!』

『美味いのかよ!ずいぶん大げさな気合を入れていたな!』


 たしかに、生き様がどうのこうの言ってたよね。まぁ、青い色の食べ物ってちょっと躊躇しちゃうよね。分かるよ。


『なんなんだい、この草は!味もいいが、身体がポカポカ温かくなるよ!』

「魔素をたっぷり含んでいるからね。元気が出るよ!」

『ちょいとみんなを呼んでくる!小さい子たちにも食わせてあげなきゃね!』

「うん。たくさんあるから、この辺に置いとくね。皆で食べて!」

『ありがとうよ!お嬢ちゃん!』


 ローラは大きな声で仲間たちを集め、ムシャムシャと青い葉っぱを食べている。みんな気に入ってくれたようで最後の一枚まで綺麗に食べ切った。


 その様子を、のんびりお茶を飲みながら眺めていたのだが、


『さぁ!お嬢ちゃん!今日も好きなだけミルクを持っていきな!』


 ローラがそういうと、搾乳希望の牛たちがずらりと並んだ。


「あ、こんなにたくさん?」

『なーに、遠慮することはないさ!こんなに美味しい葉っぱをもらっちまって、タダで帰せるわきゃないだろうが!』

「いや、お土産だから気にしなくていいよ?」

『何言ってんだい!グラスブルってぇのは、そんなしみったれじゃないよ!』

「いや、でも……」

『りあ、がんばれー!』

『おれたち、あそんでまってるから!』

『夜ごはんのことは気にしなくて大丈夫だぞ!アルシアにもらったのがいっぱいあるからな!』


 今日はお土産を渡すだけのつもりだったのに……。搾乳の魔道具ってないのかな?いや、なくても作らなくては!ルカに相談してみよう。


「…………ハァ」


 こんな時こそローラを見習って気合を入れたいところだが、カッコいい言葉が思いつかなかったので、黙って乳搾りに向かうオーレリアだった。


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