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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第5章

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第88話 アルシアの鉄拳

 一方そのころ、ノルとネロとえっちゃんは、蒼森竜の狩りを楽しんでいた。


『ひゃっほーう!!』

『わーい!』

『いっくぞー!』


 蒼森竜は五十匹ほどの群れをつくっていた。かなりの数だ。その群れの中を、えっちゃんがもの凄い速さで駆け抜ける。


 竜というだけあって、今までの魔物よりは格段に強いのだが、豊富な魔素で身体が軽いえっちゃんは、ようやく思いっきり動き回れると張り切っていた。


 風魔法と斬撃で蒼森竜を狩っていくえっちゃんに負けじと、ノルとネロもその後に続く。たくさん蒼森竜を狩って、フェンリルの里へのお土産にするのだ。それに、オーレリアにも食べてもらいたい。今日はすっごく怒ってたから、美味しい食べ物を食べて機嫌を直してもらおう。


 蒼森竜の間をちょこまかと駆け回るノルとネロ。岩から岩へ、ときには蒼森竜の背中へ飛び乗り、縦横無尽に駆け回る。

 蒼森竜たちがむきになってノルとネロを追いかけ回すが、二匹は攻撃をヒラリとかわし、さらに挑発する。


『こっちだよ~!』

『おそいぞー!』


 蒼森竜たちはノルとネロを追いかけまわすうち、一部が群れから孤立した。そこへえっちゃんが岩陰から飛び出した。


 風の魔法で斬撃を飛ばし、一匹、二匹。その勢いのままえっちゃんは孤立した群れへ突っ込んでいく。


 そして爪で一閃。――さらに一閃。


 えっちゃんの爪が閃くたびに、蒼森竜は地面に崩れ落ちる。最後の一頭に向かって、風を纏ったえっちゃんの斬撃が襲い掛かり、蒼森竜は音もなく地面へ伏した。


『わーい!やったー!』

「上手くいったな!』

『さくせん、せいこう!』


 一度にたくさんの竜を相手にはできないので、ノルとネロによる陽動作戦を考えたのだが、とても上手くいった。


 その様子を見ていた狩人たちは、自分たちも負けていられないと気を引き締めたのだった。



 その日の狩りは大成功に終わり、みんなご機嫌で里に戻った。オーレリアからは、思ったより早く終わったので先に帰ると、風の精霊を通じて伝言が届いていた。


 先に里に戻っていたオーレリアは、すでにいつものシンプルなワンピース姿に着替えていた。髪の編み込みだけが、宮殿舞踏会コーデの面影を残している。


 えっちゃんたちと狩人たちがアルシアの食堂のドアを開けると、のんびりお茶をしていたオーレリアが出迎えてくれた。


「おかえり!ノル、ネロ、えっちゃん!」

『りあ!ただいまー!』

『ただいま!りあ!そうしんりゅう、たくさんかったよ!』

『ただいまー!狩り、楽しかったぞ!』


 ノルとネロはオーレリアにかけ登りスリスリと頬を寄せる。えっちゃんは尻尾をブンブン振ってオーレリアに寄り添った。


「そっかー!よかったねー!ブランフォード、ありがとう!」

「いや、彼らはなかなか良い狩りをする。俺たちもいい刺激になったよ!」

「オーレリアの機嫌が直っててよかったぜ!」


 ハルドールはどこかほっとした表情だ。


「うん!アルシアとゼフィがセリアンを叱ってくれたからね」



***



 オーレリアが世界樹の泉から帰ったとき、アルシアとゼフィがすぐにかけつけてくれた。オーレリアの衣装の噂を聞きつけて、心配してくれていたらしい。


「リア!まぁあなた、こんな格好で森に行くなんて危ないじゃない!」

「セリアンのせいだよ……」

「よくこんな格好で森の中を歩けたな?裾引きずってるぞ。魔物に狙われなかったか?」

「狙われたに決まってるじゃん!だから隠匿魔法かけて、飛んで帰ってきた」

「まったく、セリアンのやつ!」

「リアを危険にさらすなんて!ぶっ飛ばしてやるわ!」

「え!?ぶっ飛ばすの?」

「リアはちょっと待っていなさい!私がキッチリ絞めてきてあげるからね!」

「絞める?」

「そうだな。セリアンは家にいるようだ。リアも行くかい?」

「う、うん。行く……」


 ゼフィはヒョイッとオーレリアを抱き上げた。


「えぇ?なんでお姫様抱っこ?」

「なんかそんな雰囲気の衣装だしさ。それじゃあ歩きにくいだろう?」

「確かに歩きにくいんだけどさ、普通に抱っこしてよ」

「そうか?」


 そしてゼフィに担がれたオーレリアは、ずんずん歩くアルシアと共にセリアンの家に向かった。


 セリアンの家に到着すると、アルシアはセリアンを捕まえてお説教を始めた。


「あなたねぇ!森に行く子に何て服着せてるのよ!」

「えぇ?!何よ!私は最後の日はこれを着せるって決めてたんだから!」

「あんたのせいで、リアは魔物の標的になったのよ?それに、無駄に肩なんか出してるから虫に刺されちゃってるじゃない!どう落とし前を付ける気?」

「肩?あ、ほんどだ」


 気付かなかったのに、そういわれたらなんだか痒い気がしてきた。ポリポリ。


「落とし前って……。でも大丈夫だったんでしょう?狩人たちもいたし、リアちゃんはこの辺の魔物はなんの問題もないって、イゾルデが――」

「だとしても!この子を危険にさらしたことに変わりないでしょーが!リアが大人しいからって好き勝手なことしてると許さないわよ!歯ァ食いしばれ!」

「ひぃ!!」


 アルシアが右の拳を振り上げる。左手ではセリアンの胸倉をつかんでいて凄くかっこいい!オーレリアは息をのんでその様子を見ていた。心の中では、


「(わたしも「歯ァ食いしばれ!」って言ってみたい!)」


 とか思っていたのだが、


「はいはい、そこまで!」


 ゼフィがのんびりとした声で止めに入ってしまった。アルシアの鉄拳制裁が見れると思ったのに……チッ。


「アルシア、その辺にしておいてくれ。オーレリアが真似するぞ」

「……もうっ!仕方ないわね!」


 アルシアはオーレリアの方をチラッとみると、振り上げた拳を下ろしてしまった。オーレリアがワクワクしていたのがバレてしまったらしい。


「セリアン、君がオーレリアを可愛くしたい気持ちは分かる。だけど、森は舞踏会の会場ではないぞ?いくらオーレリアが優秀な魔法使いでも、森では何があるか分からないんだから」

「それは……確かにそうね……」

「もし何かあって、イゾルデが乗り込んできたら怖いぞ?」

「そ、それは……!私が悪かったわ!ごめんなさい、リアちゃん!」

「えっ?う、うん」


 急に謝られて戸惑ってしまうオーレリア。


「もうっ!リアったら!あら、掻いたらダメよ?赤くなっちゃったじゃない。そんな服早く脱いで燃やしてしまいましょう!」

「!!アルシア!ちょっと待ちなさい!何で燃やすのよ!」

「魔物に狙われるような危険な服はいらないわ!」

「悪かったってば!だから燃やすのはやめて!」


 ぶち切れてしまったアルシアと、必死に止めようとするセリアン。おかげでオーレリアの怒りはどこかに吹き飛んでしまった。


 オーレリアはアルシアに手伝ってもらって、宮殿舞踏会ドレスを脱いだ。ついでに、今まで着てきた数々の衣装もセリアンのアトリエに返した。


「あ〜終わったぁ!いつもの服、落ち着く!」

「リア?セリアンになんか言ってやったら?」

「もういいよ。アルシアがセリアンを叱ってくれたから、スッキリした!」


 自分以上にアルシアが怒ってくれたおかげで、オーレリアの怒りはすっかり収まってしまったのだ。


「もう、リアは甘いわね。私はイゾルデ直伝の鉄拳をお見舞いしてやりたかったのに!」

「えっ?師匠直伝なの?わたし、教わってない!」

「あれは確か、私が聖女をやってたとき、変な輩から身を守るためにって教えてもらったのよね。ほら、魔法だと逆にやりすぎちゃうから!」

「はぁ……そうなんだ」

「リアもそのうち教えてもらえるわよ!」



***



「こんな感じのことがあったの。だからもう怒ってないよ!」

「へ〜!アルシアの鉄拳制裁かぁ。ちょっと見てみたかったなぁ!」

「イゾルデ直伝か……。きっと、確実にダメージを入れる工夫がされているんだろうな。ゼフィが一緒でよかったかもしれない」

「え?そんな工夫されてるの?」

「さぁ?どうかしらね!」


 ウフフと笑うアルシア。なんだか笑顔が怖い。


「そんなことより、狩りの成果は?蒼森竜はたくさん狩れたのかしら?」


 そうだった。今日は里で食べる最後の夜ごはん。明日は魔の森に帰る日なので、今夜は贅沢に蒼森竜のステーキが食べたいな。


 オーレリアはアルシアと一緒に蒼森竜の肉で料理を作り、ノルとネロとえっちゃん、それに里の人たちと最終日の夜ごはんを大いに楽しんだのだった。


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