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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第5章

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第70話 里の夜

 森から戻った後は、またアルシアの家に戻る。なるべく人に会いたくなかったので、帰りはえっちゃんに乗って帰って来た。


「ただいまー!」

『『『ただいまー!』』』

「あ、帰ってきたわね!おかえり〜!リアちゃん!」

「わぁ、リア!凄い服ね!」


 そこにはすでにセリアンが来ていて、アルシアと談笑していた。


「リア!可愛いじゃない!とっても素敵よ?」

「……じゃあアルシアが着ればいいじゃん」

「私はダメよ。もう大人だもの」

「わたしだってもう大人だよ!」

「リアちゃん!あなたはこの里で一番若いのよ?そのサイズを着こなせるのはあなただけじゃない!」

「大人でもヒラヒラした服を着る人いるでしょう?アルシアとか師匠に着せればいいじゃん!」


 こうなったら道連れである。アルシアだってきっと似合う。


「アルシアならまだしも、イゾルデはダメよ。引きちぎられちゃうわ!」

「いくら師匠でもそんなこと……するの?」


 チラッとアルシアに確認する。


「まぁ、やりかねないわね」

「そうよ!あの人は昔から、私の着せ替え遊びには付き合ってくれないんだから!」

「わたしも付き合いたくないんだけどな……」

「リアちゃんは~、私に何か作ってほしいのよね?」

「うっ!そう。ちゃんと作ってよ?」

「もちろんよ!約束は守るわ!」


 くそぅ、仕方ないか。師匠はセリアンに頼みごとをするとき、どうしていたのだろう。明日会ったら聞いてみよう。


「それでリア!何が狩れた?」


 アルシアに聞かれて、ノルとネロとえっちゃんが、それぞれマジックバッグから獲物を取り出す。


「あら!マジックバッグを作ってもらったのね?」

『いいでしょ~!』

『かっこいいでしょ~!』

「それで、エルちゃん用のバッグが欲しいわけね?」

「そう。今のやつはちょっと小さいから、えっちゃんの体に合うように作ってほしいの。あと、ノルとネロの防寒着はフェンリルのデザインにして欲しい!」

「えっ!ヤダ!それ絶対可愛いじゃない!みんな後で採寸させてね!」


 よかった。これでちゃんと作ってもらえる。可愛いだろうなぁ、ノルとネロのフェンリルの着ぐるみ。今から楽しみだ。


「え〜っと、蒼茸(あおたけ)うさぎと蒼嘴鳥(そうしちょう)ね!それじゃあ蒼茸うさぎのパイ包みと蒼嘴鳥はローストにしようかな!」

『わーい!』

『おなかすいた!』

『美味しそう!』

「リア!手伝ってくれる?」

「うん!……着替えちゃ――」


 チラッとセリアンを伺うオーレリア。


「ダメよ!大丈夫、エプロンを持ってきたわ!」


 セリアンは、フリフリでヒラヒラの真っ白なエプロンを着けてくれた。


「……」

「抜かりないわよ!」


 食堂の中央には、大きな丸テーブルが置かれ、その周囲を囲むように椅子が並べられている。他には、厨房に面したカウンター席があった。今はセリアンがカウンター席からニコニコとオーレリアを眺め、なにやらスケッチを描いている。


 アルシアのお手伝いをしていると、食堂に次々と人がやって来た。

 ハイエルフは人数が少ないため、里の者はほとんど顔見知りだ。食堂に来れば自然と大きな丸テーブルに集まり、食事をしながら交流を楽しんでいる。

 オーレリアはアルシアとおしゃべりがしたいので、いつもカウンター席に座る。

 

「アルシア!今日の獲物、置いてくな!」

「ありがとう!夜ごはん、もうちょっと待っててね!」

「あぁ、酒もらってくぞ!」

「どうぞ!」


 狩人の一人が、いつものように捕ってきた獲物を貯蔵庫へ入れていく。


 ハイエルフの里には通貨制度はなく、それぞれが必要なものを持ち寄り、分け合うことで、里全体が自然に循環しているのだ。

 オーレリアも、森で薬草を摘んできたり、アルシアのお手伝いをしたり、ゴスロリ衣装を着たりして里に貢献していた。


 料理が出来上がり、アルシアが慣れた手つきで料理を配膳する。お皿が次々と空中を舞い、テーブルにスーッと落ち着いていく。みんながそれぞれ、ありがとうとかいただきますと言って食べ始めた。


「リアも食べよう!こっちにおいで」


 アルシアに呼ばれて、オーレリアもカウンター席に着く。ノルとネロとえっちゃんには、すでに料理が配られ、食べていいかとこちらを見つめていた。


「ごめんね、お待たせ!いただきまーす!」

『『『いただきまーす!』』』

『あっつい!ふーふー!』

「あら、みんなにはちょっと熱すぎたかしら?冷ましてあげるね」


 アルシアは、ノルとネロとえっちゃんのシチューを、魔法でちょうどいい温度に冷ましてくれた。


『あるしあ、ありがとう!』

「どういたしまして!」

『パグパク!ウマイウマイウマイウマイ!』

『ちょうどいい温かさだ!美味~い!』


 美味しそうに食べる三匹を眺め、オーレリアも食べ始める。

 サクサクのパイをスプーンで割ると、中から蒼茸うさぎのお肉とキノコがたっぷり入ったクリームシチューが湯気とともに顔を覗かせた。火傷しないようにフーフーと息を吹きかけてから口に運べば、優しいミルクの甘みと素材の旨味が口いっぱいに広がっていく。なんだか心まで温まるようだった。

 蒼嘴鳥のローストも香ばしく焼けており、ナイフを入れると透明な肉汁があふれた。表面はパリッパリで中は肉汁たっぷり。蒼の森の果実ソースがよく合った。


「すごく美味しい!やっぱりアルシアが作ると全然違う!」

「あら、ありがとう!リアにもレシピあげたじゃない。あれと同じよ?」

「レシピ通りに作っても、こんなに美味しくならないよ!なんでだろう?」

「アルシアの料理は真似できない美味しさなの!だからみんなここに食べに来るのよ!」

「やぁねぇ!リアもセリアンも!そんなに褒めたって何もでないわよ!」


 そんな風に楽しく食事をしている間にも、里の人たちが次々と食堂へやって来ては、食べ終えた人から帰っていく。

 焼き立てのパンを大量に運んでくる人、食後のデザートを差し入れる人、酒樽を抱えて現れる人までいて実に様々だ。


 ちなみに、みんなオーレリアのゴスロリ姿を見てギョッとするのだが、セリアンを見つけて納得し、可愛いよとか似合っているよなどの言葉を絞り出して、そそくさと席に着くのだった。


 やがて、里長のゼフィやその補佐をしているペネロペ、先ほど会ったイヴェットも姿を見せ、食堂はさらに賑やかになっていく。

 温かなオレンジ色の灯りに照らされた店内は、穏やかで幸せな空気に満ち溢れていた。


『あ~!おれ、おなかいっぱい!』

『ぼくも!もうたべられない!』

『美味かった〜!幸せだ!』

「うん!わたしも幸せ~」


 いつものご飯も美味しいけれど、やっぱりアルシアのご飯は一味違う。オーレリアも、ノルとネロとえっちゃんも大満足の夜ごはんだった。


「それじゃあ、そろそろお家に帰ろうか」


 みんなで後片付けをして家に帰る。


「リアちゃん!明日は朝ごはんを食べたら、すぐに私のところに来てちょうだいね!明日はどんなお洋服にしようかしら!楽しみだわ!」

「あ、うん……わかった……」

「それじゃあね、リアちゃん、アルシア!おやすみなさい!」

「おやすみ!セリアン」

「おやすみ……」


 あんまり派手な服じゃありませんように。合掌。


「フフッ!リア、今日はお疲れさま!ゆっくり休んでね、おやすみ!」

「おやすみ、アルシア」

『『『おやすみ~!』』』


 オーレリアの家はアルシアの家の隣なので、あっという間に到着する。さらに隣は師匠の家だが、今はまだ灯りが消えたままだ。


 ドアを開けると、あたたかな魔法灯の光が灯る。久しぶりに帰って来た我が家は、魔の森とよく似た造りをしている。大きな樹をそのまま住居へ変えたような、丸みを帯びた壁と木肌の天井。窓の位置や棚の配置も、どこか似通っている。


 けれど、この家にはオーレリアの暮らしがしみ込んでいた。長い年月をかけて磨かれた床や手すりは柔らかな艶を帯び、何度も触られてきた木肌は滑らかに馴染んでいる。ノルとネロが付けた小さな傷跡も数知れず。


 魔の森の家とは違う、故郷の匂いがした。そんなに長い間留守にしていたわけではないのに、不思議と懐かしさを覚える。


 ドアを大きく開け、ノルとネロとえっちゃんを中へ入れる。入り口の玄関マットを踏みしめ、そのまま家の中に入っていく三匹。最後にオーレリアが中へ入り、静かにドアを閉めた。


「ただいま!」


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