第7話 おうちに帰ろう
お昼ごはんを食べ終えたオーレリアたちは、さっそく、エルディオールこと、えっちゃんの背に乗せてもらうことにした。
えっちゃんが伏せてくれたので、オーレリアがその背にまたがる。
「うわぁ、ふわふわだぁ!」
ついニマニマしてしまうオーレリアである。ノルとネロも楽しそうにピョンと飛び乗る。
『いいか?』
「まって!どこ掴めばいいの?毛引っ張って痛くない?」
『全然痛くないから、落ちないようにしっかり掴まって!』
「わかった」
『じゃあいくぞ!』
えっちゃんがゆっくりと歩き出し、次第にスピードを上げていく。
ぐんぐんスピードが速くなるが、あまり揺れも感じないし、風もえっちゃんが魔法で防いでくれているようで、そよ風程度だ。そしてもふもふっ!
「うわー!速いねー!それにとっても快適!」
『はやいー!』
『えっちゃんすごいねー!』
ノルとネロも目を輝かせている。
オーレリアがヒィヒィ言いながら登って来た山を、ひとっ飛びで走り抜け、あっという間に隣の山に来ていた。
えっちゃんは、大きな紫色の実がなっている木の前で止まった。
『この木になっている実はルベリアの実と言って、とても甘くて美味しいんだ。あまり数がない珍しい木らしくて、人間たちは高値で取引しているって、じいちゃんが言ってた』
「へ〜、そうなんだ。一個食べてみよう」
オーレリアが魔法でビシッと果実を落とし、両手でキャッチする。ルベリアの実は濃い紫色をした新高梨のような大きさの実で、ずっしりとした重みがあった。
空間収納からナイフを取り出し、ルベリアの実を半分に切る。薄い皮の内側からショッキングピンクの果肉が現れる。
『うわぁ、すごいぴんく!』
『あまいにおいがする!』
「ショッキングピンク……」
食べやすい大きさにカットして、みんなで一口ずつ食べてみる。
「『『『ン!うまーーーい!!!』』』」
「うわぁ、これすっごく甘いねぇ!美味しい!」
『もっとちょうだい!りあ!』
『ぼくも、もっとたべるー!』
『うん。美味い!』
ルベリアの実の果肉はマンゴーのようなトロリとした食感で、甘みが強く、口に入れると果汁が口いっぱいに広がる。いくらでも食べられそうだ。
「よしっ!たくさん持って帰ろう!みんな手伝って!」
『まかせろー!』
『まかせろー!』
『任せろー!』
ぁぁ、みんな可愛い!
ノルとネロがルベリアの木に登り、上から実を落とす。オーレリアとえっちゃんが風の魔法で落ちてきた実を誘導し、袋の中に入れていく。
「もういいよー」
『はーい』
『はーい』
袋がいっぱいになったので、空間収納にしまう。今日のところはこのぐらいでいいだろう。なくなったらまた取りに来ればいい。
『それじゃあ、他の果物を探しに行く?』
「う~ん、ごめん。ちょっと疲れちゃった。今日は家に帰ろう。えっちゃんもこれから一緒に住むわけだし……その大きさだと、家に入れるかなぁ?」
えっちゃんの身体はかなり大きい。きっと、オーレリアが3人背中に乗っても余裕だろう。こんな巨体が家の玄関をくぐれるだろうか。
『俺は狼ぐらいのサイズにならなれるぞ。それに、家は一緒じゃなくてもいい。今まで通り森の中にいても、呼ばれたらすぐに駆けつけるぞ!』
「一緒じゃなきゃダメだよ!狼サイズになれるなら、尚更だよ!よかった~!」
ずっとえっちゃんのサイズ感が気がかりだったのだ。オーレリアの家は、そんなに大きくない。でも、普通の狼サイズということなら、大丈夫だろう。
「それじゃあ、おうちに帰ろうか。えっちゃん、よろしくね!」
そして、えっちゃんの背中に乗って、あっという間に家の前まで帰ってきた。
『不思議な家だな』
「そうかな?ハイエルフの家はみんなこんな感じだけど」
『そうなのか?』
『そうだよー!』
『そうだよー!』
「じゃあえっちゃん!小さくなって!」
『おう!』
えっちゃんがしゅるしゅると小さくなっていく。
「おぉ!大型犬って感じ!!」
『すごい!』
『すごーい!』
『ふふん!』
「じゃあ、中にどうぞ。あ、入るときはこの玄関マットを踏んでね。このマットにはクリーン魔法の魔法陣が仕込んであるから、泥んこで帰ってきても大丈夫だよ。」
『わかった』
家の中に入ったえっちゃんは、珍しそうにキョロキョロと辺りをながめる。
『へぇ!樹の中はこんな風になっていたのか。かっこいいな』
『えへへ、かっこいいだろー』
『こうやって、きにのぼって、あそべるんだよー』
ノルとネロは嬉しいのか、えっちゃんにおすすめの場所を紹介している。
「それじゃあ、ごはんにはまだ早いし、お風呂に入ろうか!」
『『『なんでっ!?』』』
『玄関のマットを踏めば綺麗になるって言ったじゃないか!』
「だいたいの汚れは落ちるけど、ツヤツヤにはならないの。えっちゃんは、わたしの特製シャンプーとリンスで洗えば、もっとモフモフになると思うんだよね」
『別にモフモフにならなくていいよ!必要ない!』
「これはとっても必要なことなのっ!!ノルとネロも一緒に入ろうね」
『え〜』
『りあ、はいったらフルーツみるく、のむ?』
「うん、入ったら飲もうね!」
『じゃあ、はいる』
よし!さすがノル。
『ふるーつみるく……じゃあ、はいる』
「はい、決まり!行くよ、えっちゃん!」
『ムゥ〜、今日だけだぞ!』
こうして、お風呂で全身ピカピカに洗われたえっちゃんは、真っ白いふわふわの毛並みとフルーツミルクを手に入れた。……悪くなかった。
「はー、気持ちよかった!でもみんな、自分で乾かせるようになろうね」
『微調整が難しかった』
『そーっとかぜだすの、むずかしい』
『びゅーってなっちゃうの』
みんなは、オーレリアのように、温かい風をちょうど良い風量でだすのが難しいらしい。
えっちゃんも慣れないせいで、強い風を出してしまい、ノルとネロが吹き飛ばされて、大変だった。
『りあ〜お腹すいたー!』
「はいはい、お腹すいたね。今日はステーキにしよう」
『やったー!すてーき!』
『すてーき!すきー!』
焼くだけだから簡単だ。あとは、空間収納にしまってあるスープとパンを出せばいいだろう。
てきとうな塊肉をステーキサイズにカットして焼いていく。
えっちゃん用には大きな塊肉だ。表面に焼き色をつけていくと、ジュージューとした音と共に、肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。
アルシア特製のステーキソースをかけて、完成だ!
「『『『いただきまーす!』』』」
ノルとネロはいつものように、すごい勢いで食べ始める。ちゃんと嚙んでるか心配だ。
えっちゃんは、初めての料理なので、慎重に匂いを嗅いでいたが、一口食べてからは、あっという間に食べてしまった。
『なんだこの味は!すごい美味いな!こんなにうまい肉は初めて食べた!』
「えへへ、よかった!このステーキソースは、アルシアが作ってくれた特製ソースなんだよ。ノルとネロのお気に入りなんだ!」
『アルシア?』
「うん、わたしにお料理を教えてくれた人。ハイエルフの里で食堂をやってるんだよ。アルシアの料理は全部美味しいの。師匠やゼフィにも紹介したいし、そのうちえっちゃんもハイエルフの里に連れて行くね(当分無理だけど)」
『ハイエルフの里か!楽しみだな!』
食事も終わり、あとは寝るだけ。でも、オーレリアには最後に仕事が残っていた。
「このままじゃベッドが狭くてみんなで寝れないから、大きくしなきゃね。ちょっと離れていて」
オーレリアが魔法でベッドのサイズを大きくする。
これで、えっちゃんと一緒に寝ても、ベッドから落ちることはないだろう。
もともとそんなに広くなかった寝室が、ほぼベッドだけの部屋になった。本などの荷物はとりあえず、師匠が泊まっていた空き部屋に移す。
「あぁ~疲れた〜。今日はもう無理。寝る」
ボスンとベッドに倒れこむオーレリアの側に、ノルとネロがトコトコやってきて丸くなる。
「えっちゃんも……ここに……」
オーレリアが呼ぶと、えっちゃんは静かに歩み寄り、彼女の横に落ち着いた。
「もふもふ……あったかい、いい匂い。おやすみ……くぅ~」
『『『おやすみ』』』
今日は、いろんなことがあって、疲れてしまったオーレリアは、あっという間に眠ってしまうのだった。




