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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青


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第6話 フェンリル

 翌日、再び森に出かけた。今度は湖とは反対に、山を登ってみようと思う。家の近くを流れる川に沿って、のんびりと歩いていく。ノルとネロもご機嫌で歩いている。


 ここはまだ女神様の聖域だから、魔物はいない。いるのは小動物と小さな精霊ぐらいだ。あの美しい湖と、オーレリアの家がある山、それとその隣の山ぐらいまでが聖域となっている。


 山裾に広がる森は聖域の外なので、たくさんの高ランクの魔物が巣くっている。そのため、この大陸の人々は魔の森に寄り付かない。しかし、オーレリアたちハイエルフにしてみれば、なんてことはないただの森だった。

 

 ただ、今は調子が万全ではないオーレリアには、聖域はありがたかった。なにしろ、ちょっと魔法を使っただけで、すぐに疲れてしまって眠くなるし、お腹も空くのだ。


「はぁ……魔法で飛んでいけば早いのになぁ」


 こればかりは、少しづつ慣らしていくしかないようだ。


『あ!きのこだ!』

『どんぐり、たくさんあるよ!』

「うーむ。そのきのこは食べられないね。どんぐりも」

『ちぇ。ざんねん』

『ざんねーん』

「里から持ってきた食料は、3か月分ぐらいはあるけど、ここで食料を調達できるようにしないとね。里まで転移魔法で帰るのは大変だし」

『ぜふぃも、ししょーも、てんいのまほうでかえったよ?』

『りあも、てんいのまほうできでるでしょ?』

「うん。できるけど、たぶん今やったら鼻血出すよ。下手したらまた気絶するかも」


 まだまだ未熟だということだ。師匠にも緊急時以外はやめておけと言われている。


『やだやだ〜!りあ!はなぢださないで!』


 ネロが泣きそうになりながらしがみついてくる。いちいち可愛い。


『りあ、だいじょうぶだぞ!おれがたくさんまもののにくを狩ってくるから!』


 ノルは頼もしい。二匹とも優しい子だなぁ。


「ありがとね。だから出来るだけ、ここで食べ物を探したいんだ。お肉は魔物を狩ればいいし、野菜は畑をつくるから、あとは森に果物とかあるといいと思わない?」

『いいね!おれは、いちごが食べたいなぁ』

『ぼくは、りんごがたべたいなぁ。シャリシャリしておいしいんだよ』

「わたしはももがいいなー!」


 そんな話をしながら山を登っていたら、けっこう上まで来ていた。オーレリアはすっかり息が上がっていた。


「ハァハァ……疲れた……」


 ノルはオーレリアの肩に姿勢よく座っている。ズルいぞっ!ネロにいたっては、オーレリアが着ている外套のフードの中でウトウトしていた。


「もう……ハァハァ。二人とも……ハァハァ。さっきまで、威勢のいいこと、言ってたくせに……」


 息を整えながら何とか登りきると、大きな岩のある開けた場所があった。そこからは森の奥まで見渡せる。

 眼下には、自分たちの樹の家と、その下に広がる青い湖。小さく見えるその景色に、オーレリアはほっと息をついた。


 ここで、休憩しようとしたその時、急に気配を感じてハッとなる。ノルとネロも

警戒態勢をとる。

 

 敵意はまったく感じないが、それにしても、こんなに近づくまで気配に気付かなかった。

 ここは女神様の聖域内だから危険はないはずだけれど……


 空間収納から魔法の杖を取り出して身構える。

 

 しばらく膠着状態が続いた後、遠く離れた岩の陰から大きな白い狼がゆっくりと姿をあらわした。じっとこちらを見ている。


「……」

『……』

『おおかみだ』

『しろいおおかみ』


(ここは女神様の聖域だし、魔物じゃないよね。ってことは……神獣?)


「もしかして、フェンリル?」

『……そうだ。お前は、女神の愛し子か?』

「女神の愛し子?……う~ん、わかんないけど、女神様のお仕事で、ここに来たんだよ」

『やっぱり愛し子か。あの大きな樹に住み始めた時から、何故だかずっと気になってたんだ』

「気になる?何が?」

『何ていうか、懐かしいような気がしたんだ。もしよかったら、俺と従魔契約しないか?』

「従魔契約?……別にいいけど」

『ありがとう!それじゃあ、魔力を少し分けてくれ』

「わかった。……これでいい?」


 オーレリアが魔力を渡すと、フェンリルが青白い光に包まれた。


 光が収まった時、オーレリアは何かとても懐かしい感じがした。何か、ノルとネロに感じたものに似ている。

 もしかしたら、このフェンリルの魂とは前世のどこかで出会っているのかもしれない。


「俺の名前はエルディオール。これからは俺が守るからな、心配いらないぞ!』

「ありがとう!わたしはオーレリア。リアでいいよ。よろしくね!」


 手をさしだすと頭を下げてくれた。ふわふわで温かい。 


『おれはノル、よろしく!』

『ぼくはネロだよ。よろしくね!えっと〜、えどぅでーる?』

『ネロ、ちがうよ、えれにーる?だよね?』

「二人とも違うよ!エルデネーロだよね?」

『……エルディオールだ』


 ジト目で見られてしまった。大丈夫、間違えたのはわたしだけじゃない。


「……あはは。おっけー!それじゃあ、お昼にしようか!なんか疲れちゃったし」

『おひるごはんっ!!』

『おなかすいたー!』

「今日は、お弁当持ってきたんだよ!たまごサンドと、ハムレタスサンド。飲み物は温かい紅茶かオレンジジュースだよ。エレン……ん?エルモ?……えっちゃんって普段何食べてるの?」


『えっちゃん!?』


「好きな食べ物とか」

『いや、ちょっと待って!えっちゃんてなんだよ?俺はエルディオールだぞ!かっこいい名前なんだぞ!そんなに難しいかな?』

「いやぁ……ちょっと難しいかな……ねぇ?」

『えっちゃんなら、おぼえられる』

『えっちゃんにしようよー』

「しばらく名札とかつけてくれれば、覚えられると思う」

『えぇ〜!!……うーん、仕方ないのか?もう!お前たちだけだからなっ!……えっちゃんなんて……ブツブツ』


「『『やったー!!!』』」


 よかった〜。怒られるかと思ったけど、えっちゃんは優しい子みたい。


 えっちゃんは150歳ぐらいだそうで、フェンリルとしては大人になったばかり。身体は大きいがまだまだ子供っぽい。


 それにしても、神獣だからすでに名前を持っていてラッキーだった。急に名前をくれとか言われるのは、正直とっても困る。オーレリアはネーミングセンスもないのだ。

 ノルとネロの名前は、ハイエルフの里の皆さんが案を出してくれたおかげで助かった。


「はい、これえっちゃんの分ね。ノルとネロはこれね」

「『『『いただきまーす』』』」

『ばくばく……もぐもぐ……ング』

『うまいうまい……うまいうまい……』

「ゆっくりたべてよ?ノル大丈夫?えっちゃんには足りないねぇ」

『うまいっ!量は気にしなくていいぞ。自分の食べるものは自分で狩るから大丈夫。でも、リアの作った料理はすごく美味いな!』

「ありがとう!パンにハム挟んだだけなんだけどね。そういえば、この森で狩れる魔物って美味しいの?」

『うん!魔の森の固有種にはグリムって名前が付けられるんだけど、それはどれも美味しいんだ。グリムバイソンが特におすすめだよ!リアたちは狩には行かないのか?』

「まだ行ってない。わたし、この大陸の環境にまだ慣れてなくって、魔法が思うように使えないんだ」

『なんだ、なかなか家から出てこないと思ったら、そういうことだったのか。だったら俺がどこへでも乗せてってやるし、魔物ならいくらでも狩ってきてやるぞ!』

『かり?おれもいきたい!なんとかバイソンたべてみたい!』

『ぼくもかりいく!りあにたくさんとってきてあげる!』

「ありがとう!えっちゃんが一緒なら行動範囲が広がるね。明日は聖域の外の森に行ってみようか!」

『わーい!おにくだー!』

『わーい』

「お肉は毎日食べてるじゃん!ノルは食いしん坊なんだから!」

『えへへ〜』

「あ、そうだ!えっちゃん、果物がなってる木知らない?ナッツとかでもいいんだけど」

『あぁ、知ってるぞ!この山にもいくつかあるから、後で寄っていく?』

「うん!やったー!楽しみ!」


 どんな果物かな〜とウキウキのオーレリア。ノルのことを食いしん坊だと言っているけど、オーレリアだって負けていないのである。


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