第57話 ダンジョンへ行ってみよー!
『あしたは、はれるかなー?』
『はれるよ!おほしさまが、いっぱいだもん!』
『大丈夫だ!明日はいい天気だってばあちゃんが言ってた!』
明日はみんなでダンジョンに向かう日だ。ダンジョンに入ってしまえば天気なんて関係ないのに、ノルとネロとえっちゃんは、遠足前の子供のように窓から夜空を見上げていた。
ダンジョンを見つけた日、オーレリアはノルとネロとえっちゃんに、すぐにはそのことを教えなかった。言ったら人語のお勉強そっちのけで行こうとするだろうから、お休みの前の日まで内緒にしていたのだ。
そしてお休みの前日、朝食の席で「実はね……」と発表したら案の定すぐに行きたいと言い出した。
「明日はお勉強お休みの日でしょ?今日ちゃんと行って、おじいちゃんに明日からのお休みの許可をもらおうよ」
『むぅ、そうか。じいちゃんにはちゃんと言っておかないと怒られるな』
「そうでしょ?お勉強はこっちからお願いしたんだし、ちゃんと言っておかないとね。今日はわたしも一緒に行くからさ」
『わかった!』
『はやくいきたいなー!』
『みんなに、おみやげ、もってかえろうね!』
そんな感じでおりこうさんな三匹と一緒に、フェンリルの里に向かった。
転移魔法陣で降り立った先では、えっちゃんの姉弟のシャノンとヴァイゼルが待ち構えていて、オーレリアも一緒だったことに大喜びしてくれた。
『わーい!リアだー!』
『リアー!どーん!』
「ああ~!」
相変わらずの元気のよい突進と、千切れんばかりの尻尾の勢いに押され、新雪に埋まりかけたとき、えっちゃんのお姉ちゃんであるライリエルに救い出された。
『リア!今日は一緒なのね!シャノン!ヴァイゼル!どーん!ってしちゃダメでしょ!』
『こめんね!リア!今日は遊べるの?』
『ごめんね!リア!何して遊ぶ?』
「ライ、ありがとう!シャノン、ヴァイゼル、今日はちょっとおじいちゃんにお話があるから、遊ぶのはその後ね」
気を取り直しておじいちゃんたちのところへ向かう。おじいちゃんなんて呼んでいるが、このフェンリルの里の長だ。転移陣のある広場のちょっと上の方に長の巣穴があって、その前にみんなを集めて人語の授業をしているのだ。
「おじいちゃん、おばあちゃん、おはよう!」
『おぉ!オーレリアではないか!よく来たな』
『あらあら、いらっしゃい。今日はどうしたの?』
オーレリアは事の経緯を説明した。
『ふ~む、なるほど、ダンジョンか……それ、わしも行きたい!』
「えぇ!?」
『じいちゃん?』
『なになに?ダンジョンだって?それはパパも行ってみたいな!』
『父さんも?』
『私も行きたい!ダンジョンだなんて楽しそう!』
『ライリエル、お前もか!』
『何よ!エルディオールだけ楽しんでズルいじゃない!』
『エルディオール!ズルい!』
『俺も行きたいんだから!』
なんだかおじいちゃんだけじゃなく、パパにライリエル、シャノンとヴァイゼルも行きたいとか言っている。声には出さないが見た感じ、おばあちゃんとママも行く気だ。
「なんで?みんなそんなにダンジョン好きなの?」
すごく疑問に思ったので聞いてみる。
『見つかっているダンジョンのほとんどは、人間が管理しているからな。わしらは入れないんじゃ』
『そうそう。ダンジョンって珍しい魔物とかいるっていうし、美味しいものがとれるところもあるんだろう?』
『そんな楽しそうなところ、絶対に行ってみたいじゃない!』
『行きたい!行きたい!』
『人間ばっかズルい!』
ということらしい。なるほど……え?ダンジョンって遊園地かなにかなのだろうか。
「理由はわかった。でもこのダンジョンはどんな敵が出るか、どれほどの深さか分からないから、まずはわたしたちに先に行かせて!」
『みんなで一緒に行けばいいじゃない!』
「そんなことしたら難易度が下がっちゃうでしょ?つまらないじゃん」
『たしかにそうね。敵の争奪戦になっちゃうわね』
そうだよ、団体のフェンリルなんて、どのダンジョンのボス部屋にもいないでしょう?どうせ行くなら、オーレリアだって少しは楽しみたいのだ。
「だからさ、戻ったらどんな感じか報告に来るよ!」
『うむ、わかった!では、報告を楽しみに待っているぞい!』
その日はいつも通りの授業をして(オーレリアはシャノンとヴァイゼル、そしてノルとネロと遊んで)家に帰り、冒頭に戻るのである。
翌朝は快晴だった。オーレリアが目を覚ますと、ノルとネロとえっちゃんはすでにリュックを背負っていて、出かける準備は万端だった。
三匹に急かされながら服を着替え、朝食を作り、食べている間も早く早くと言われ、実に落ち着かない。
「もう、ごはんぐらいゆっくり食べさせてよ!」
『りあ、たべるのおそい!』
『はやくたべて!』
『まだか?俺が手伝ってやろうか?』
まったくせっかちな子たちだ。なんかもう、ゆっくりコーヒーを飲む時間なんてなさそうだし、さっさと食べて出かけよう。
朝食の片づけをして、忘れ物がないか確認する。
『りあ!きょうのおべんとうは?』
『ぼくのぶんも!』
『俺のも!今日のおかずは何かなー!』
「ふふふ。実はね、今日のお弁当はまだ作ってないよ!」
『えっ!なんで?』
『おべんとう、なしなの?』
『なんでだよ!作ってくれるって言ったじゃないか!』
ひどいよ、ひどいよと騒ぎ出す三匹。たしかにお弁当は作っていないんだけど、心配しないで欲しい。
「ダンジョンには、ニックとレミーも連れていくから大丈夫なの」
『え!そうなの?』
『にっくとれみー、いっしょにおでかけ?』
『ダンジョンの中で料理を作ってもらうのか!すごいな!』
「すごいでしょー!」
空間収納には生き物は入れられないのだけど、ニックとレミーはゴーレムだから問題ないのだ。お弁当だと何日分になるか分からないし、ニックとレミーがいればオーレリアが疲れていても作ってもらえる。これで食事問題は解決だ。
いつもの外套を羽織って外に出る。ノーグの魔石を満タンにして、ピピちゃんとポポちゃんに卵をもらい、餌をあげてから出発した。
えっちゃんに乗って森を走る。なんかいつもよりスピードが出ている気がする。ダンジョンがある場所は魔の森の中央付近で、そこまではあっという間にたどり着いてしまった。
『ここかぁ!こんなところがあったんだな』
『おおきないしが、おちてるね』
『あのいし、じがかいてあるよ?』
「あぁ、あれはしょーもない内容だったから無視でいいよ。あ、でも確か、ダンジョンの奥に至宝が眠るって書いてあったような……」
『しほうって?』
「すっごいお宝ってことだよ」
『へー!このダンジョンの一番奥にすっごいお宝があるのか!楽しみだ!』
「まぁ、そうなんだけどさ……。その碑文を彫ったの師匠だから、なんか怪しいんだよね」
『ししょーがほったの?あのいしに?』
『なんで?』
「さぁ、さっぱり分からない。ずいぶん昔にこっちに来たときに彫ったんだろうけど……」
『リアの師匠って不思議な人なんだな』
「そうなんだよ」
遠く離れた師匠に思いを馳せながら、ふざけた碑文を通り過ぎ奥へと進む。
そして、石造りの門の前までやって来た。
「ここがダンジョンの入り口だよ!」
『いりぐち?もんだけ?」
『だんじょんは?』
『ただの古い門にみえるけど……』
オーレリアが手を差し入れると、入れた手が消えたように見える。
『りあのてがなくなった!』
『りあ、だいじょうぶ?』
『この先は別の空間なんだな?』
「そう、ここをくぐればダンジョンだよ!」
『すごーい!』
『おもしろいねー!』
『ワクワクしてきた!』
「それじゃあ、行ってみよー!」
『『『おーー!!』』』
オーレリアたちは張り切って石門をくぐった。




