第55話 大食い大会
フェンリルたちと狩りをしたり、レミーと一緒にパンを焼いたり、ローラのところに乳しぼりに行ったりと、そんな感じで楽しく過ごしていたら、屋台料理の在庫がすっからかんになってしまった。
オーレリアは久しぶりにグレンハルトの町に来ていた。ノルとネロえっちゃんも、もちろん一緒だ。
人語のお勉強会はだいたい三日に一度お休みを入れる。そうしないと集中力が落ちて覚えられないそうだ。別に急ぐ必要はないから無理なくゆっくり覚えてほしい。
ちなみにノルとネロは、授業が始まると眠くなってしまうようで、ぜんぜん喋れそうにない。でもきっといつかは喋れるようになるはず。そう思って気長に待とうと思う。
「先に冒険者ギルドに行く?いらない魔物は売っちゃわないとマジックバッグがいっぱいでしょ?」
『そうだな、全部売り払ってバッグの中を屋台の食べ物でいっぱいにしよう!』
『それがいいね!』
『そうしよう!』
そういうわけで冒険者ギルドの入り口を入ると、いつものようにアニーがいた。
「あら?オーレリアさん、お久しぶりです!」
「こんにちは、アニー!久しぶりってほどでもないよ?」
「前回いらしてから二か月たっていますよ?冒険者は普通、もっと頻繁に来るものです」
「そうなの?でもまだ冒険者証の期限切れてないよ」
「それはそうなんですけど。まぁオーレリアさんですからね。今日はどうなさいましたか?」
「魔物を売りに来たの。屋台の食べ物をいっぱい買いたいから、バッグの中身をスッキリさせたいんだって」
「なるほど!では裏の解体所の方へどうぞ!ちなみにまた虫系ですか?」
「どうだろう。それもあると思うけど、フェンリルの里に行ったからそっちでとれた魔物もいると思う」
「フェンリルの里!それは素晴らしいです!ギルマスを呼んできますので待っていてください!」
アニーがギルマスを呼びに行ってしまった。別にいいのに。
ほどなくして、ギルマスのガイウスがドカドカとやって来た。
「よお!オーレリア!ひさしぶりじゃねぇか!フェンリルの里に行ったって聞いたが?」
「うん、行ってきたよ」
「どんな魔物が見られるか楽しみだぜ!」
ガイウスがウキウキしながら解体所へ向かう。ガイウスは魔物が好きだなぁ。
「ところで、みんな。今日も虫系の魔物持ってるの?」
『あるよー!』
『いっぱいつかまえたよねー!』
『フェンリルの里の近くにも虫の魔物はいるんだ!氷のようで綺麗なんだなんだぞ!せっかくだからリアにも見てほしかったんだけど……やっぱりいいや』
えっちゃんはおりこうさんだから考え直してくれたようだ。氷のように綺麗だと言われても……虫だし。
「じゃあ、わたしとアニーは壁の向こうで待ってるからガイウスと行ってきてね。終わったら呼んでね!」
『わかった』
ガイウスに付き添われ、解体所のカウンターに向かって行った三匹。先に聞いといてよかった。
「おお!フェンリル様じゃねーか!また魔の森の魔物を売ってくれるのかい?」
解体所のローデリックが出てきてえっちゃんたちに話しかけている。
「今日はフェンリルの里の近くで捕れた魔物を持ってきてくれたらしいぜ!」
「フェンリルの里だと?それは一体どこにあるんだ?」
「さぁ?わかんねぇが、そんなことよりも早く見せてもらおうぜ!」
「おお!じゃあ、ここに出しちゃってくれ!」
えっちゃんたちがそれぞれのマジックバッグから、魔物を取り出している音がする。オーレリアはアニーとともに遠くを見ていた。
「うわ!何だこれ!すげーな!」
「でっけぇ!こんなの図鑑でしか見たことないぞ!」
「うわぁ、触手が多いな!脚も長いしカチカチだ!」
「ちょっと!ギルマス!ローデリック!実況しないでください!」
アニーが我慢できずにギルマスたちに文句を言う。オーレリアは、耳をふさいで目をつぶっていた。なにも聞きたくないし、見たくもない。
「いやぁ、凄いものを見せてもらったぜ!」
しばらくして、買取が終わったらしい。ガイウスが満足そうにしている。えっちゃんたちが終わったと呼びに来てくれたので、オーレリアも貯まった素材を売り払う。魔の森の魔物は丸ごと売ることにした。お肉はえっちゃんたちが十分に狩ってくれているし、最近ではフェンリルのパパたちがお土産にいろいろくれるのだ。冬に狩りが出来なくても十分食べていけるだろう。
「魔の森の魔物はいい値段で売れるからな、助かるぜ!」
「最近はお前さんたちのおかげで、町が潤ってるんだぜ!」
「そうなの?」
「虫系の魔物は武器や防具の素材に最適だからな、しかも魔の森産は丈夫だから引く手あまただ。特に最近では、噂を聞き付けたドワーフたちが買い付けにやってくるんだぜ!」
「肉も売ってくれるとなりゃ、王都からも買い付けにくるんじゃないか?」
「そうだろうな!美食家たちが黙ってないだろうからな!」
そうなんだ、それはなにより。でも今はグリムサーペントは品切れなんだよね。ご婦人フェンリルたちが気に入っちゃったからさ。
売却が終わって、それぞれお金も受け取った。なんかもう数えるのも面倒くさい。もしかしたら、虫の魔物をたくさん売り払ったえっちゃんたちの方がいっぱい稼いでいるのかもしれない。
屋台に向かうべくギルドをでようとしたら、アニーに呼び止められた。
「オーレリアさん、広場へ行くんですよね?ちょうど今収穫祭のお祭りをやっていて、いつもより混雑していますので気をつけてくださいね。いろいろイベントもやっているので楽しんできてください!」
「ありがとう!」
広場に着くとアニーの言っていた通り、いつもより人が多い。はぐれないようにえっちゃんに掴まりながら歩く。
いつもの屋台がたくさんの広場は、音楽を演奏したり、踊ったりしている人々や、テーブル席で食事をしている人々、収穫コンテストでかぼちゃの大きさを競っている人たちで賑わっていた。
「あ、大食い大会だって!」
『何!大食い大会?俺もやりたい!』
『おおぐいたいかいってなにー?』
『なにー?』
「たくさん食べ物を食べた人が勝つ競技だよ!」
『え!おれもやりたい!』
『ぼくもやるー!』
「従魔も参加できるかきいてみよう!」
大食い大会の関係者に従魔の参加が可能か聞いてみたら、意外なことに従魔の部もあるらしい。出たいなら申し込みをしてくれと言われたので、三匹分申し込んだ。
午後一番に開始されるので、それまで買い食いを我慢して大会に挑んだ。
結果
『くそー!!負けたー!くやしー!』
「仕方ないよ、えっちゃん。スライムは消化することに特化しちゃってるから……」
『すらいむ、すごかったねぇ』
『たべものが、きえていったね』
食べるものはホットドッグ。参加した従魔は、ノルとネロ・えっちゃん・角ウサギ・サンダーバード・マンドラゴラ・スライム。
パッと見た感じ一番大きいえっちゃんが勝ちそうなものだが、スライムは凄かった。咀嚼も必要なく、スルスルと体に吸収されていくホットドッグ。開始30秒でスライムの勝利は決まっていたが、えっちゃんはそれでもあきらめずに頑張った!偉かった!
一方ノルは普通にがっついて食べていた。知らない人からしたら頑張って食べてるように見えたかもしれないが、お腹が空いたノルのいつもの食事風景だった。
そしてネロもいつもの食事だった。大食い大会なのに、いつも通りの速度でホットドッグを3つだけ食べて、ごちそうさまをしていた。本当にただの食事だった。
順位は、1位スライム、2位えっちゃん、3位サンダーバード、4位ノル、5位角ウサギ、6位ネロ、7位マンドラゴラという、まぁ順当な結果だった。
「みんな頑張ったね!ノルも美味しそうに食べてたし、ネロも……ほら、6位だって!凄いねー!」
『ほっとどっぐ、おいしかった!たくさんかっていこう!』
『ぼく、すごい?えへへ~!』
『悔しいから端から端まで屋台料理を買って帰ろう!』
そういうわけで三匹は、大量の屋台料理をそれぞれのマジックバッグに詰め込んでいくのだった。




