第54話 お魚パーティー
翌日、約束通りお魚パーティーを開催した。よっぽど楽しみだったのか、おじいちゃんたちが朝から湖にやって来たのだ。
魚はすべて『レミー』に下処理をしてもらっていた。昨日のうちにやっておいて良かった。
湖の魚は、30センチほどのアズールトラウトから、3メートル越えの伝説の巨大魚、ミラージュサーモンまでいろいろな種類の魚がそろっている。
アズールトラウトなどの小さな魚は串にさし焚火で炙る。これはすぐできるけど、フェンリルたちには小さいので、前菜っぽい扱いだった。量は多いので、レミーに次々と串にさして焼いてもらう。
60センチから80センチほどの魚は、セレスパイクやクリスタルパーチという種類のとても美味しい魚だ。レミーにぶつ切りにしてもらったので、用意した平べったいでっかい石の上で焼いていく。焼けたら塩を振ったり、ソースを付けて食べる。
ソースも昨日のうちにレミーと一緒に用意した。タルタルソースやピリッとするスパイシーソース、あとはシンプルに塩やレモンをかけてもいい。
一番人気はタルタルソースで、あっという間になくなってしまった。今まで貯めていたピピちゃんとポポちゃんの卵を全部使って作ったのに……。ノルが残念そうにしていた。
大人のフェンリルたちはスパイシーソースも気に入ってくれたし、ご婦人フェンリルたちは、塩やレモンでサッパリとしたものも気に入ってくれた。
オーレリアが平べったい石の隅っこで野菜を焼いて食べていたら、おばあちゃんが来て自分にも焼いて欲しいと言ってきた。野菜好きなフェンリルもいるんだって!他にも何匹か来たので、一緒に野菜焼きを楽しんだ。
今回のメインディッシュであるミラージュサーモンは、太い串で貫き、両側に立てたY字の枝に渡す。そして、焦げないように焚火の上で回転させながら焼いていく。
でっかい魚をそのまま焼くのはなかなかワイルドだった。ときどき焚火の上に脂がジュっと落ちては、食欲をそそるいい匂いをさせていた。
「いい感じに焼けてきたね!」
『いいにおい~!』
『くるくるまわしておもしろいね~!』
『でも三匹分しかいないからな。争奪戦だ!』
『えぇ!おれのぶんは!?』
『ぼくのぶん、のこしてくれる?』
『これだけの数のフェンリルが固唾をのんで見守っている。……無理だろうな」
『『えぇー!そんなー!』』
ノルとネロがすでに半泣き状態になってしまった。可哀想だけど、可愛い。
「ちょっとえっちゃん!そんなこと言わないで!」
『でも、皆の目をみてみなよ。釘付けだぞ?』
「大丈夫、ちゃんとレミーに私たちの分を取り分けてくれるように頼んであるから!」
『そうなのか?そんなことも出来るのか?』
「そりゃあ、お料理ゴーレムだからね。お料理の取り分けなんて朝飯前よ!」
『やったー!がんばれレミー!』
『まけるな!レミー!』
そうして魚が焼きあがった運命の瞬間。焚火から降ろされたミラージュサーモンは、レミーの手により串を抜かれ、大きな葉っぱの上に寝かされた。そしてハーブソルトで軽く味付けをしてフェンリルたちに振る舞われた。
その手にはいつの間に取り分けたのか、4つのお皿を持っていた。オーレリアたちの元にやってきてミラージュサーモンの乗ったお皿を手渡す。
「レミー、ありがとう!」
『レミー!レミーってすごいんだね!ありがとう!』
『ぼくのぶん、ちゃんとある!ありがとう、レミー!』
『いつの間に取り分けたんだ?レミーって凄いんだな!』
ノルとネロとえっちゃんが感動している。特にノルは尊敬のまなざしを向けている気がする。良かったね、ノル。
さっそく食べてみたら、皮はパリッと香ばしく、身は驚くほどフワッフワで柔らかい。旨味とほのかな甘みが口の中に広がった。
「う〜ん!美味しい、さすが伝説の魚!」
『うまうま!……うまうま!』
『おいしーねー!モグモグ!』
『うん!美味い!でも足りない!今度は俺たちだけでやろうね!』
「アハハ!そうだね!」
フェンリルたちも、あっという間に食べ終わってしまったけど、とても美味しかったのか、満足してくれたようだ。
『オーレリア、お魚パーティーは実に楽しかったぞ!』
『えぇ、どのお料理もとっても美味しかったわ!』
おじいちゃんとおばあちゃんも満足してくれたようで良かった。
『オーレリアちゃん。お魚とっても美味しかったわー!』
『わかる~!』
『たまにはお魚もいいわねー!』
『わかる~!』
『今度、里の近くの川で魚獲って持ってくるわね!』
『そうね!また焼いてもらいたいわ!』
『オーレリアちゃんが里に遊びに来てくれてもいいのよ?』
「うん、また遊びに行くよ!」
ご婦人フェンリルたちも楽しんでくれたようだ。
『リア!リアの料理ってすごいわね!お魚ってあんまり食べなかったけど、すっごく美味しかったわ!他にもいろんな料理が出来るんでしょ?また誘ってね!』
『ライリエルだけズルいぞ!そのときはパパもね』
『あら、抜け駆けはダメよ?ママも一緒にね!』
『『リアー!』』
ドーン!
「あ~!」
湖の回りを走り回って遊んでいたシャノンとヴァイゼルが、オーレリアに突っ込んできた。
外套の物理耐性と反射的にかけた防御魔法のおかげで怪我はないのだが、けっこう吹っ飛んだ。ビックリするからやめてほしい。
『『キャハハハハハ!』』
ノルとネロはなぜ笑っているのだろうか?失礼しちゃう!
『こら!お前たち!リアになんてことするんだ!もう遊びに来させないぞ!』
えっちゃんが、元気な妹と弟を叱ってくれる。そしてライがオーレリアを咥えて立たせてくれた。
「ふー、ライありがとう。まったく、困った子たちだね!」
『ごめんね、元気がありあまっててさ。小さいうちは皆そうなのよ』
「そうなんだ、それなら仕方ないけど」
まだ子供なんだけど、体はけっこう大きいんだよね……。
『リア、大丈夫か?』
『ごめんね、リア』
『リア大丈夫?ごめんね』
えっちゃんと、えっちゃんに怒られたシャノンとヴァイゼルが謝りに来てくれた。
「大丈夫だよ。ねぇ、えっちゃんてシャノンたちぐらいに小さくなれるじゃない?シャノンたちは小さくなれないの?」
『なれるよ!みてて!』
そう言って、シャノンとヴァイゼルは小型犬ぐらいの大きさまでシュルシュルと小さくなっていった。
「おお!これは凄い!可愛いー!」
オーレリアは小さくなって駆け寄って来たシャノンとヴァイゼルを抱きしめた!ふわふわモフモフで可愛すぎる!
シャノンとヴァイゼルもたくさん撫でてもらって嬉しそう。尻尾がちぎれそうなほどパタパタと振られている。
『しゃのん、ちいさくなった!』
『ばいぜるも、ちいさくなった!』
『『すごーい!』』
驚いたノルとネロが駆け寄ると、4匹で遊び始めた。小さいモフモフが遊んでいる!可愛いんですけど!
それからしばらく小さくて可愛い子たちを眺め、みんなでのんびりとくつろいだ。
季節は秋、空が高い。
遊び疲れた小さなシャノンとヴァイゼルを背中に乗せて、フェンリル一行は転移魔法陣から帰って行った。オーレリアとえっちゃんも、疲れて眠ってしまったノルとネロを連れて家へと向かう。
今回のお魚パーティーは大盛況だった。楽しかったねーとえっちゃんと話していたのだが、はて?何か忘れているような……。
「あ、大変!レミーを忘れてきた!」
あわてて湖に引き返すオーレリアだった。




