閑話 お米で何をつくろうか
オーレリアは悩んでいた。
ヘルガにもらったお米で何をつくろう。久しぶりのお米ともなると悩んでしまう。
リビングの床でゴロンとしているえっちゃんモフりながら考える。ノルはテーブルの下で、ネロは少し高い場所にある木の洞に入り込み眠っていた。
お米は、エルフの里で作られることが多い。ハイエルフの里でも作っている人はいるのだが、その人はどちらかというと品種改良などの研究をするのが目的で、あまりたくさんは作っていなかった。
ではどうしていたかというと、普通にエルフの里に買いに行っていた。毎年新米の季節になると、エルフの里から風の精霊がお知らせにやってくる。それを聞いて、転移魔法で買いに行くのだ。オーレリアも何度か、師匠やアルシアと一緒に行ったことがあった。
エルフの里は森の中にあるのだが、里の大半を占める田んぼのおかげで、明るい陽が差し込み、美しい田園風景が広がっていた。
エルフの里ではお米作りだけではなく、米からできる酒や甘味も作られていて、いろいろな甘味を食べ歩くのが楽しみの一つだった。
米のお酒はまだ子供だったから飲めなかったけれど、甘味はいろいろと食べ歩いた。オーレリアは特に、苺大福がお気に入りだった。
「はっ!苺大福食べたい!」
思い出していたら無性に食べたくなって、つい声に出してしまった。そんなに大きな声を出したつもりはなかったのだが、みんなが目を覚ましてしまった。
『苺大福ってなんだ?』
『んー?いちごだいふく?』
『ふわぁ~。あの、もちもちのやつ?』
「そうだよネロ。中にあんこと苺が入ってて、お餅で包まれてるやつ!」
『あんこ!あまいやつだ!』
『そうだ!おれは、どらやきがすき!』
「そうだったね!ノルいっぱい食べてたもんね」
『えー!俺だけ知らない!ずるい!』
「冬に里帰りしたときに、えっちゃんも一緒に行こう!」
『やったー!約束だぞ!』
さてと、話を元に戻して、お米で何を作るか。オーレリアは、アルシアからもらったレシピ集をパラパラとめくっていた。
「まずはやっぱりおにぎりだよね!それから、炊き込みご飯に、オムライスとかカレーも食べたいな」
『かれー!おれ、かれーがいい!』
『ぼく、おむらいす!いつ?きょう?』
ノルとネロが興奮してオーレリアの元にやって来た。アルシアに作ってもらったカレーやオムライスはこの子たちの大好物なのだ。
「そうだね、今日は何にしようかな」
『かれー!ぜったい、かれー!』
『おむらいす!ぜったい、おむらいす!』
二匹はオーレリアにしがみついて訴えてくる。魔の森にきてからお米料理を食べてなかったからノルとネロも必死だ。
「わかったよ。じゃあどっちを先にするか決めてね!ケンカはダメだよ!」
『え~どうやってきめる?』
『えっちゃんは、どっちがいい?』
『俺はどっちも食べたことないから、どっちでもいいぞ!』
『じゃあ!きょう、かれー!あした、おむらいす!』
『ちがう!きょう、おむらいす!あした、かれー!』
結局、取っ組み合いを始めそうになったので、オーレリアがノルとネロの首根っこを掴んで止めた。いつもは仲良しなのに、お米の力おそるべし!
「じゃあ、今日はオムライスにします!明日は、湖でカレーを作ります!」
『やったー!きょう、おむらいす!』
『えー!りあ?どうして?』
ネロは喜びで拳(?)を突き上げ、ノルはがっくりとうなだれてしまった。
『どうして湖なんだ?』
「カレーはね、外で食べると三割増しで美味しくなるんだよ」
ノルを慰めながら、なんとなく思っていたことを言ってみた。
『そうなの?かれー、おいしくなるの?』
『何で外で食べると美味しくなるんだ?』
『うふふ、おむらいす』
「なんでか分からないけど、そんな気がするの!だからカレーは明日ね!』
そういうわけで、今日はオムライスだ。え~っと、卵は何個あるかな〜と言いながらキッチンに向かうオーレリアだった。
何よりもまずは、お米を炊いてみよう。お米はエルフ製の炊飯器のような魔道具で簡単に炊ける。適当な量のお米をその魔道具に入れるだけで、適量の水が自動で注入され、10分ほどで炊きあがる。
10分後、ピッと音が鳴り、お米が炊き上がったことを告げる。ふたを開けると、湯気とともにお米の甘い香りがキッチン中に広がった。
「よし!いい感じに炊けてる!」
『わぁ~!おいしそー!』
『まっしろで、きれいだねー!』
『へー!これがご飯かー!』
久しぶりのご飯は、ツヤツヤでふわふわに炊けていて食欲をそそる。
「ちょっとだけ……味見してみる?」
『『『する!』』』
オーレリアはおにぎりを作った。具材は聖域の湖にいるアズールトラウトで作った鮭マヨ。オーレリアとノルとネロ用のは小さめのおにぎり、えっちゃんのはそこそこの大きさに握った。海苔を巻いてみんなのお皿に置いていく。
「試食だからね?いただきまーす!」
『『『いただきまーす!』』』
みんなでパクッと一口。
「ん〜!美味しいー!」
『うまうま!モグモグ……』
『モグモグ……おいしー!』
『おー!ホクホクで美味しい!これ、いっぱい食べたい!』
やっぱりお米は美味しかった。
『『『おかわりー!』』』
「ダメ!オムライス食べるんでしょ?」
『『『たべるー!』』』
試食を終えて、オムライスを作る。アルシアのレシピ通りにしてるんだけど、卵で包むのはどうも苦手だ。今回もやっぱり破れたけど……まぁいいか、ケチャップで誤魔化そう。
ノルとネロはオーレリアにしがみついて作業を覗き込み、えっちゃんはオーレリアの横で今か今かと出来上がりを待っていた。
「さぁ、出来たよ~」
『やったー!』
『おむらいすだー!』
『いい匂いだ!』
テーブルの上にオムライスのお皿を並べる。他には、作り置きのコンソメスープに、野菜サラダでとても豪華な食卓になったが、実はまだニックに肉を焼いてもらっている。えっちゃんには絶対足りないからね。
『『『「いただきまーす!」』』』
久しぶりのオムライスは美味しかった。ノルとネロとえっちゃんは夢中で食べていて、口の周りがケチャップ色に染まっている。特にネロは好物だけあって、とても嬉しそうに食べていた。みんな大満足の夕食だった。
やっぱりお米は美味しいなぁ。明日はカレーだ。一番大きい鍋で作ろう。
翌日、朝ごはんを食べた後すぐに湖に来た。早朝からノルに起こされ、急かされ、早く早くと連れられてきたのだ。そして、家から徒歩10分の湖に着いたとたん、さぁ、カレーを作れと言う始末。
いったいどれだけ楽しみにしていたのだろうか。ちゃんと眠れたのかな?
「ノル、さすがに朝ごはん食べたばかりだから、もうちょっと待とうよ」
『おれは、きのうからずっと、まってるよ!』
「そうかもしれないけど、お腹空いてた方が美味しく食べられるでしょ?」
『う~ん、そうかも?』
「お昼に作ってあげるから、それまでは湖で遊ぼうよ!」
『わかった!おなかすくように、たくさんはしる!』
ふぅ。まったくノルは筋金入りの食いしん坊だな。
お昼近くまでみんなと遊び、そろそろノルの圧が強くなってきたところで、カレー作りに移る。たまに湖でキャンプをするので、簡易の竈はすでにある。
火を熾したら、大きな鍋でグリムバイソンのお肉と野菜を炒めて水を入れ、ぐつぐつ煮込む。野菜が柔らかくなったところでアルシアにもらったカレールーを投入。すると、辺りはカレーの香りに包まれた。
ご飯は炊けたばかりの炊飯器ごと空間収納に入れてきた。
『やったー!かれーだ!わーい!』
『いいにおいがするー!』
『ほんとだな!美味そうな匂いだ!』
「よし、そろそろいいかなー」
出来上がったら、お皿によそってみんなに渡していく。
「熱いから気をつけてね!じゃあ食べようか」
「『『『いただきまーす!」』』』
『ふがふが……もぐもぐ……ん!おいひー!おかわり!』
「ノル、慌てないで!いっぱいあるから、全部食べたらおかわりあげるよ」
『もぐもぐ……んん!りあ!すごくおいしいねー!』
「美味しいね~!」
『バクバク……美味い!これは……飲み物か?』
「食べ物だよ。よく噛んでね」
美しい湖を眺めながら食べるカレーは、思った通りいつもより美味しく感じた。それに、こんなに喜んで食べてくれるなら、また作ってあげようと思う。
パンも大好きなんだけど、やっぱりお米は美味しいなぁ。
いつでも食べられるように、おにぎりをたくさん作って、空間収納に忍ばせておこう。
次は何をつくろうかな。




