第41話 元気でね!
教会の保護施設の女の子部屋に集まり、子供たちとお話をした。
グレンハルト騎士団が、ユニ・ウィーリス獣人連邦のべリスの町に、子供たちを保護したと連絡をしたそうだ。べリスの町でも当然行方不明者の捜索をしており、グレンハルト騎士団はとても感謝されたらしい。
国境まで迎えに行くとの連絡がきたので、日程を調整次第、騎士団が国境まで送ってくれるそうだ。冒険者ギルドからも護衛がつく。オーレリアにはお馴染みのSランクパーティー、黄昏の獅子たちだ。
そんなことを子供たちは嬉しそうに話していた。
「リア様にも一緒に来てほしいです!」
兎獣人のお姉ちゃんの方、ルルンが言った。他の子もそう思っていたのか、うんうんと頷いている。
「ごめんね。わたしたちも、そろそろ家に帰らないといけないんだ。それに黄昏の獅子の人たちは、すごく面白くて優しいから大丈夫だよ!」
「そうですよね。無理言ってごめんなさい。リア様、いつかべリスの町へ遊びに来てくださいね!」
「そうだね。そのうち遊びに行くよ!」
今は聖域を離れられるのが約6日。べリスの町まで行けるのはいつになるだろうか。旅行、行きたいなぁ。
オーレリアがそろそろ帰ろうと席を立つと、みんなで教会のエントランスまでお見送りしてくれた。
道すがら、礼拝堂を覗いて女神様の像を見てみた。シスターによると、やっぱり創世の女神ディオーネ様を祀っているそうだけど、石像はそんなに似ていなかった。
「あんまり似てないね」
「エルフの教会の女神様とはお顔が違ったかしら?」
「エルフの教会?エルフの国って教会あるの?」
「あっ!リア様!えーっと、リア様はエルフの国出身ではないので……」
「あら、そうだったのね?国によってちょっとずつお顔が違っているようなのだけれど、だいたいはこのような雰囲気だだと聞いているわ」
ライラがシスターに慌てて言い訳している。なんでだろう?
「ライラ?わたしなんか変なこと言っちゃった?」
ちょっと小声で聞いてみた。
「いえ。でも、ハイエルフって説明しても信じてもらえるか分かりませんし、もし信じてもらえたら、それはそれで大変なことになります!」
「そうなの?」
「そうです!だってここは女神ディオーネ様の教会ですから、女神様の愛し子だと分かったら、崇め奉られてしまいます!私は当然そうされるべきと思いますが、リア様は早くお家に帰らなきゃいけないんですよね?」
「……なるほど。それは大変かも!ありがとう、ライラ!」
ライラにお礼を言って、シスターには適当に話を合わせて誤魔化した。崇め奉られるかはわからないが、どんな対応をされるか想像がつかないので、ここは無難にやり過ごすに限る。
それにしてもライラって、まだ小さいのにしっかりしてるなぁ。
礼拝堂を出てエントランスに着くと、何故だがいつかの見習い冒険者三人組、アルト・ピノ・セトが待っていた。
「あれ?見習い三人組だ。どうしたの?」
「よう!話は聞いたぜ!この子たちは俺らに任せろ!」
「俺たち、ギルマスに言われてここに来たんだ!」
「誘拐された子たちがここにいる間、俺たちが面倒をみるよ!」
「えっ?ほんと!ありがとう!」
オーレリアは見習い三人組の意外な申し出に、満面の笑みでお礼を言った。すると、
「ふぉ!!べ、別に、おま、お前のためじゃねーぞ!」
「そっ、そうだぞ!!」
「お、俺たち、依頼で来ただけだし!」
何故だか目を泳がせ可愛くないことを言う。なんか全然こっち見ないし、失礼な奴らだな!とオーレリアはジト目で睨みつけてやった。こんなのに任せて大丈夫だろうか。
「リア様?この人たちは?」
「りあさまの、おともだち?」
子供たちが気になったようで聞いてきた。
「この人たちは、わたしより一か月先輩の見習い冒険者だよ。出会ったときからずっと失礼な人たちだから、別に無視してもいいよ」
「あら?アルト、ピノ、セト!来てくれたのね?冒険者ギルドから連絡がきたから待っていたのよ?助かるわぁ!」
知り合いだったようで、シスターがにこやかに話しかける。三人組はシスターに対してはしっかりと受け答えしていた。なんか腹立つな。
こんな失礼な人たちは放っておいて、最後にみんなとギューッとハグをする。えっちゃんとノルとネロともハグをして別れを惜しんだ。
「それじゃあみんな、気をつけて帰ってね!」
「りあさま、またね!」
「ノルちゃん、ネロちゃん、えっちゃんもありがとう!」
「ぼくたち、ぜったいりあ様たちのこと忘れない!」
「ありがとうございました!」
「リア様は命の恩人です!」
「みんな大げさだよ!元気でね!」
『きをつけてかえれよ!』
『またねー!』
『もう誘拐されるなよ!』
ここのシスターたちはとても感じのいい人ばかりだったから、子供たちも安心したようで、泣いたりせずに笑顔で別れることが出来た。無事に家まで帰ってほしい。
オーレリアが教会の敷地から去ったあと。
「お兄ちゃんたち、大丈夫?」
子供たちが心配して見習い三人組を覗き込む。
「べ、別に何ともねーよ!」
「急だったから、ちょっとビックリしただけだ!」
「……初めて笑いかけられたな!」
ちょっとだけ顔が赤くなっていた見習い三人組。
「馬鹿だなぁ、お兄ちゃんたち!りあ様あきれてたぞ?」
「もっと普通にしたらいいのに!怒ったんじゃないかな?」
羊獣人のメルウとディゴが三人に注意する。
「そうよ!可愛いって素直に言えばいいのに!」
「いえばいいのに!」
兎獣人の姉妹、ルルンとラランもそんなことを言う。
「言うわけねーだろ!」
「今まで笑いかけられることなんかなかったから、耐性が無いんだよな」
「あんなに可愛かったっけ?」
小さな子供たちに注意される見習い三人組。今までオーレリアが彼らに笑いかけるなんてことはなかったし、見習いだけど一か月先輩というプライドで気付かないふりをしていたが、今日はお年頃の少年たちに、オーレリアの笑顔が真正面から突き刺さってしまったのだ。
「リア様!さすがです!」
と、なぜかライラだけは憧れの眼差しで、オーレリアが去った方を見つめるのだった。
オーレリアは家に帰る前に、馬車の中からみた大きな商会が立ち並ぶ方へ行ってみようと、そちらの方へ向かって歩いていた。
広場や市場のようながやがやした感じとは違い、落ち着いた雰囲気の店が立ち並ぶ。洋服店もあったが、今日は気分じゃないのでスルー。クロエが教えてくれたベール商会に入ってみた。
ベール商会は他の国からの交易品を多く扱っていて、服や装飾品、家具など種類は多岐にわたる。魔道具のコーナーもあったので、じっくりと観察してみた。
大きな冷蔵庫のようなものから、いろんな色で点灯するランプの魔道具、依頼の報酬でもらったマジックバッグも売っていたが、なかなか高級品のようだった。しかもそのほとんどが、帝国で作られた物のようだ。
特に、装飾品に付与された魔道具が多い。毒防止の指輪や呪い防止の腕輪などは、貴族に人気らしい。
ハイエルフの里にも魔道具はあるが、ここにあるようなものは、それぞれ自分の魔法でどうとでもできるので、初めて見るものが多かった。
「いろいろあるんだねー!」
『りあー!ここにはおいしそうなものないよ?ちがうところにいこうよ!』
『さわっちゃだめっていうから、つまらない!』
『食べ物は売ってないのかな?』
せっかくオーレリアが興味深く見ているのに、もう飽きてしまったらしい。はやく次のお店に行こうとせかしてくるので、仕方なく店を出た。
いろいろ回ってみたが、この辺りには三匹が喜びそうなお店はなかった。結局、いつもお馴染みの広場で屋台料理を食べ歩き、大量に補充した。
そのあと朝のことを思い出して、銀鹿亭のミレーネにお礼を言って帰ろうと寄ったとき、ミレーネがギルマスからの伝言を伝えてくれた。
「なんか、ちょっとお話したいって言っていたわよ」
「えーなんだろう、めんどくさいな」
「うふふ、ちょっとだけ顔を出してあげて!」
「わかった。じゃあミレーネさんありがとう!またね」
「ええ!また来てちょうだいね!」
何の用だろうと思いながら、オーレリアは冒険者ギルドへと向かうのだった。




