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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青
第3章

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第40話 教会

 女性騎士に手をつながれたまま案内された部屋に入ると、フリードリヒと部下の騎士が待っていた。


「やあ、おはようオーレリア殿。お疲れのところすまないな」


 とても眠そうなオーレリアに苦笑いを浮かべ、椅子に座るように手で示す。女性騎士はそのままオーレリアについていてくれるみたいだ。ちなみに女性騎士はクロエと名乗った。部下の騎士はトーマスと言って書記係のようだ。


 オーレリアは、ぼんやりした頭をしゃっきりさせるために、目覚めのハーブティーを入れることにした。フリードリヒに許可をとり、空間収納から茶葉とティーセットを取り出し、全員分のお茶を入れた。


「ふ~、やっと目が覚めてきた」

「それはよかった。早速だが、あの森の拠点のことについて、見たことや気が付いたことがあれば教えてほしい」


 オーレリアはあの日のことを思い出しながら答えていった。途中、ノルとネロとえっちゃんに確認を取りながら見たままを話す。


「なるほどな。では、あの隷属の首輪だが、どのようにして外したのだろうか?あれは専用の鍵が必要のはずなのだが、あの場所からは見つかっていない」

「あの魔道具、服従の魔法陣と、無理に外そうとしたときに発動する呪いの魔法陣だけの簡単な造りだったんだよ。だから服従の方は解除して、呪いの方は術者に返るように反転して破壊した」

「簡単な造り?イヤイヤ、隷属の首輪は簡単な魔道具ではないと思うが」

「そんなに出来のいい魔道具じゃなかったよ。あれを作った人は、大した魔道具師じゃないと思うけど」

「そ、それは……こういうところでオーレリア殿がハイエルフだということを思い出すな」

「え?普段は思い出さないの?」

「この部屋に入ってきたときは、ライラと変わらないエルフの小さな子供にしか見えなかったよ」


 うっ。さっきは眠たかったから仕方ないのだ。エルフと外見的な特徴は一緒なのでそれはいいのだが、小さな子供は言いすぎだと思う。


 オーレリアの不満が伝わり、慌てて謝るフリードリヒ。


「いや、済まない。だが、あの魔道具を簡単だと言える者は、少なくともこの国にはいないのだ。子供ではなくとも、あれを着けられてしまったらどうしようもない」

「そうかぁ。呪い返しの魔法とか、服従の魔法を破る魔道具とかはないの?」

「あるにはあるが、非常に高額なのだ。貴族なら持っているだろうが、庶民には手が届かないな。そういった魔道具が手軽に手に入るようになればいいのだが……。そういえば、最近では帝国も魔道具の作成に力を入れているというが……」


 そんな感じでしばらく聴取を受けて、オーレリアは解放された。帰るときは、クロエが保護した子供たちを教会まで送るというので、一緒に行くことにした。子供たちと会う約束をしていたし、教会ってもしかして、あの女神様が祀られてるのかなと興味を持ったからだ。

 

 クロエと一緒にエントランスまで行くと、昨日別れたエルフのライラと、兎獣人の姉妹、ルルンとララン、羊獣人の男の子メルウとディゴが待っていた。

 子供たちはオーレリアの姿を見つけると走り寄ってきた。


「リア様!会いたかったです!」

「えっちゃんも!」

「ノルちゃんとネロちゃんも!」


 なんと、えっちゃんは子供たちにはえっちゃんと呼ぶことを許していた。特に兎獣人の妹の方、ラランはまだ4歳なので、エルディオールなんて名前は発音できなかった。それで仕方なくえっちゃんと呼ぶことを許したのだ。


 みんなにひとしきり抱きつかれたりモフられたりしたのち、教会へ向かう馬車に乗り込んだ。教会は町の中心部にあるのだという。騎士団本部からもそう距離があるわけではないが、念のための護送なのだそうだ。


 教会には孤児院とは別に、孤児や弱者を一時的に保護する施設があるそうだ。ライラたちは、今日から暫くここにお世話になる。騎士団の宿舎よりも目が行き届くし、シスターたちも子供には慣れているから安心して預けられるのだとか。もちろん、護衛の騎士はつく。


 教会までの道中、馬車の窓から町の様子を眺める。いつもの様子が分からないから比べようもないが、落ち着いているように見える。


「ねぇ、落ち着いて見えるけど、町では話題になっていないの?」


 クロエに尋ねてみた。


「いえ、誘拐犯の噂で持ちきりですよ。落ち着いて見えるのは、騎士団と冒険者ギルドが協力して動いているからでしょう。グレンハルトは騎士団も冒険者も、精鋭揃いで有名なんですよ」

「へー、そうなんだ」


 ここら辺には大きな商会が立ち並んでいる。屋台での食べ歩きと市場での爆買いしかしていないオーレリアには、馴染みのない場所だった。


「この辺は大きなお店が多いんだね。あ、あれ魔道具屋さんかな?」

「えぇ、貴族街が近いのでこの辺りは大きなお店が多いですね。魔道具がお好きなら、ベール商会が品数豊富でおすすめですよ。あの商会は交易品を多く取り扱っていますので」


 クロエがいろいろ教えてくれる。以前セリアンというハイエルフの里の服飾師に、こちらでの流行りを見てくるように言われていたけど、興味がないのですっかり忘れていた。屋台以外も見といた方がいいのかな。


「ベール商会なら私たちが住んでいるべリスの町にもありますよ!こんなに大きくはないですけど」


 ライラもグレンハルトは初めての町なので、珍しそうに外を眺めていたが、ベール商会は知っているようだった。


「へー。獣人の国にも支店があるなんて、ずいぶん大きな商会なんだね。珍しい魔道具が売ってそうだなぁ」



 教会に到着して馬車を降りると、建物の中からシスターが数名やって来た。クロエと書類を交わしサインをすると、中に案内される。

 クロエの任務はここまでだったので、お礼を言って別れた。

 シスターと手をつないで建物に入っていく子供たちを見ていたら、オーレリアもシスターにどうぞ、と笑顔で手を引かれてしまった。シスターの反対の手はライラと繋がれている。


「あ、わたしは付き添いで来ただけで、この子たちが落ち着いたら帰るから」

「あら、そうなのね?確かに書類には、エルフの少女は一人と書かれているものね。でも、もうすぐお昼だし、お昼ごはんを一緒にどう?」

「いや、わたしは(たくさん食べる子が一緒なので)屋台に――」

「リア様!一緒にお昼ごはんを食べましょう!私、もっとリア様と一緒にいたいです!」

「あのね、ライラ。えっちゃ――」

「リア様ー!一緒にお昼食べましょう!」

「りあ様!いっしょに、食べよ!」

「うふふ。リアちゃんっていうのね?大人気ね!さぁ、こっちよ!」

「あぁ……」


 押しに弱いオーレリア。けっきょく教会の食堂まで手を引かれて連れられてきた。

 なんか、今日はやたらと手を引かれるな。きっと疲れてるんだ。はやく家に帰って寝たいな、と考えていた。


 食堂で出された食事は、パンとスープと小さなりんごが一つ。質素だが野菜の甘みをそのまま引き出しような、優しい味わいのスープだった。

 ノルとネロとえっちゃんには当然もの足りないので、シスターに許可をもらい、屋台で買った肉をだして食べさせた。たくさんあるので、みんなにも食べてもらった。


 教会でご馳走になったお昼ごはんは無料だというので、ハイエルフの里の風習に従い、物々交換をすることにしたオーレリア。夜ごはんの足しにでもしてもらいたいと思い、グリムサーペントのお肉を渡すことにした。

 

 空間収納から解体済みのグリムサーペントの肉をいくつか取り出して渡すと、シスターたちは唖然としていた。こんなに貰えないといわれたが、まだたくさんあるし、この子たちにも孤児院の子たちにも、たくさん食べさせてあげてほしいと言ったら、ようやく受け取ってくれた。


 食事の後は、シスターが子供たちの部屋へ案内してくれた。羊獣人の男の子二人で一部屋。兎獣人の姉妹とライラの三人で一部屋になるようだ。広くはないが、手入れが行き届いていて居心地のいい部屋だった。


 これなら子供たちも安心して過ごせるだろう。もうしばらくの辛抱だ。


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