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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青


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第3話 女神様

「忘れ物はないか?」

「うん。大丈夫!」


 そんなこんなで出発の日を迎えたオーレリアは、師匠と共にゼフィの家に来ていた。


「まずは、女神様のところに挨拶に行こう。その後ミッドラント大陸の『魔の森』まで送ってやる」

「わかった」

『にゃ〜ん』

『にゃ〜ん』


 ゼフィの家の最上階にある大きな部屋には、転移の魔法陣があり、その魔法陣に魔力を流すと、女神様のいる神界に転移できる。


「それじゃあ、行こうか。みんな中央に集まってくれ。魔力を流すぞ」


 師匠と共に魔法陣の中央にいるゼフィの周りに集まる。ノルはオーレリアの肩にしがみつき、ネロはしっかりと胸の前で抱っこされている。


 ゼフィの魔力を感じた次の瞬間、少しの浮遊感ののち、真っ白でもやもやとした、雲の上のような不思議な空間に立っていた。


「おかえりなさ~い、愛し子たち。さぁさぁ、こちらへいらっしゃい!」


 声がした方を見ると、彫刻のように美しい、女神ディオーネの姿があった。

 真っ白な羽衣を羽織り、膝下まである金色の長い髪は美しくキラキラと輝いていて、透き通る青い瞳は暖かく慈愛に満ちている。


「こんにちは!女神様。今日はオーレリアを連れてきましたよ」

「ごきげんよう!女神様」


 ゼフィとイゾルデに続き、オーレリアも女神様の前へ歩み寄り、挨拶をする。


「こんにちは、女神様。お久しぶりです」

「もうっ、みんな!ディオーネって呼んでよ!!ゼフィ、イゾルデ、それからオーレリア、ごきげんよう!あぁ、子猫ちゃんたちも一緒ね」


『にゃん!』

『にゃ~ん!』


「オーレリア、大きくなったわね。100年ぶり?ぐらいかしら。あなたに名前を与えた日のことは昨日のことのように覚えているわ」


「・・・・・・ソウデスネ」

「ん?オーレリア、何かあったのか?」


 師匠が不思議そうな顔で聞いてくる。


 実は、ハイエルフは一般的な生き物とは違い、女神様に身体と名前を与えられて地上にやってくる。神界でふよふよとしている魂の中から、なんか惹かれるなぁと思った魂が選ばれる。女神様の直感みたいなもので決まるし、頻度も女神様次第。そのため、ハイエルフは数がとても少ないのだ。


(あのときは大変だったなぁ・・・・・・)


と、オーレリアは生まれた日のことを思い出す。



***



 その日、いつものように神界をふよふよと漂っていたオーレリアの魂は、なんだか呼ばれたような気がするなぁ、と思いながらそっちの方向に行ってみることにした。

 ポカポカと温かく、とても心地よい気分になっできたところで、


「えいっ!」


と、何かに捕まった。


『!!!』


 びっくりしたオーレリアの魂は、逃げようとジタバタしてみたが、誘拐犯の両手にがっちり捕まえられていて逃げられそうにない。


「怖がらなくて大丈夫よ?心配いらないわ。いい子ね!さぁこちらに行きましょうね~」


 とても機嫌が良さそうな誘拐犯にそんなことを言われて、余計に怖くなったオーレリアの魂だったが、無情にも連れられて行く。


 そしてたどり着いた場所は、白い神殿の中庭にある美しい泉だった。水面に浮かぶ花が風に吹かれて小さく揺れている。

 誘拐犯は泉の側にある、これまた美しい白いベンチに腰を下ろす。


「さぁ改めまして、私は女神ディオーネよ。初めまして!」

『・・・・・・女神様?』


 誘拐犯は女神ディオーネだった。がっちりと捕まえられていた両手から解放されたオーレリアの魂は、びくびくしながら様子をうかがう。


「ごめんなさいね。怖がらせてしまって。久しぶりに心が惹かれる魂に出会ったから、ついガッチリと捕まえてしまったのよ」

『心が惹かれる魂?』

「そうよ!あなたも、なんだかそんな感じがしたでしょう?」

『・・・・・・怖かったから忘れた』

「ごめ〜ん!許して?それでね、あなたに提案なんだけど、私が管理する世界に行ってみない?」

『女神様が管理する世界?』

「そう、あなたは今は魂となって神界にいるけれど、前世とか前前前世とかで人として地上に下りて魂の修業をしていたでしょう?今までとはちょっと違う形にはなってしまうけれど、また地上に行ってみない?」

『う~ん』


 なんだろう、この女神様だからか・・・・・・なんか不安。


「私があなたに身体を与えるわ。そうするとね、ハイエルフという、とっても長命な種族になるの。あなたの他にも何人もいるわ。ハイエルフの里での生活はとっても穏やかで平和なものよ。何をするかはあなたの自由!そして、たま〜~に私のお手伝いをしてくれると嬉しいわ!」


 女神様の提案は思っていたよりも素敵なものだけれど、ちょっと今はやる事がある。


『・・・・・・ごめんなさい、女神様。わたし行けない。猫を探しているから』

「・・・・・・猫?」

『うん。前世で、ずっと一緒にいた子たちなの。とても大切な子たちだからまた会いたいんだ。その子たちの魂もたぶんこっちにいると思う。だから・・・・・・』


 そうなのだ。オーレリアの魂にとって何よりも大切なことは、前世で可愛がっていた猫達のことだ。その子たちとの邂逅を果たすまでは、どこにも行くつもりはない。


「・・・・・・なるほど、わかったわ。その猫たちの魂は、私が責任をもって探し出してあなたのもとに送るわ!それならいいでしょう?」

『ホントに?』

「本当よ!こう見えても私は一応神様なんだから、約束は必ず守るわ!」

『じゃあ、女神様の世界に行く!』


 ふぅ、よかった。猫たちの魂はすぐに見つかるだろうと思っていたのに、なかなか見つからず困っていたのだ。実は猫たちの方でも探していて、行き違っていただけなのだが。


「よかったわ!それではまず、あなたに身体を授けます。そうねぇ、女の子でいいわよね?髪色はやっぱりピンクかしら?せっかくだから、今流行りのショッキングピンクなんて――」

『えー!絶対ヤダ!もっと普通の色にしてよ!』

「え~、もっとこう、可愛い派手な色がいいんじゃないかしら?・・・・・・ダメ?仕方ないわねぇ。でも・・・・・・。じゃあ瞳はショッキングピンクにする?」

『ショッキングピンクは嫌だ!もしかして女神様の世界って派手な人しかいないの?』

「そんなことないのよ?むしろ普通っていうか。でもね、この前天界の会合があったときに他の神様に聞いたら、結構派手な色合いの人もいるって言ってたから、私もやってみたくって!ウフッ。今の流行りはとにかく『派手』なんですって!蛍光紫とか蛍光緑とか!」


 この女神様、ミーハーってやつか?


『そんな派手なのわたしは嫌だ。・・・・・・やっぱり、猫は自分で探します。さようなら』

「えぇ~それはダメよぅ。あなたは私の世界に行くって決めたんだから!もう、じゃあ髪色は今、異世界転生界隈で流行っている銀髪ね。白髪みたいにならないようにツヤツヤにしましょうね。目はどうする?ピンクが嫌なら、私と同じ色にする?」

『女神様と同じ?・・・・・・女神様の目はとっても綺麗な色だね』

「あらあら、やだわぁ、この子ったら!ウフフ、じゃあ私とお揃いにしましょうねぇ!ウフフッ」


 なんか女神様すごく嬉しそう。まぁご機嫌ならよかった。


「それでは、次は名前ね!あなたの名前は、アウレーリアグルゥークス──」

『待って待って!何それ?今呪文かなんか唱えてるの?』

「やだぁ、あなたの名前よ?今神界では長い名前が流行ってるのよね!」


 やっぱミーハーだこの人。


『流行ってるのよね!じゃないよ!無理!絶対に覚えられない!わたし前世では人の名前とか覚えるのすごい苦手だったのっ!今度は自分の名前も覚えられないじゃん!せめて紙に!紙に書いてくださいっ!!』

「はいはい。・・・・・・じゃあこれね、名前を書いたわよ!」

『・・・・・・うわ~~ん!こんな文字知らない!読めな~い!』

「仕方のない子ねぇ・・・・・・」


 そんなやり取りがしばらく続き、ようやく無難な名前に落ち着いたオーレリアは、すっかりクタクタになってから、ハイエルフとして地上へと降り立つのだった。


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