第26話 お手伝いゴーレム②
太陽の光が差し込み、気持ちのいい朝を迎えた。
みんなで朝食を食べて、庭に出る。季節はそろそろ夏を迎えようとしていた。
ここに来たときはまだ春で、雨が降る日もあったが過ごしやすい陽気だった。
「夏はどれくらい暑くなるのかな?」
お庭のお手伝いゴーレムと一緒に畑に水を撒きながらつぶやく。畑の野菜はすくすくと順調に育っている。精霊たちも家や畑の周りをふわふわと漂い、初夏の光の中でキラキラと煌めいていた。
ノルとネロは、コロコロと動くお手伝いゴーレムの後をついて歩き、えっちゃんは浅い川にザブザブ入って遊んでいる。
『りあ、おてつだいこーれむ、つくる?』
『おりょうりのごーれむ、つくる?』
ノルとネロはゴーレムが気になるようだ。オーレリアも早く欲しかったし、早速作ることにした。
オーレリアは魔法の杖を取り出し、前回と同じように地面に向けて魔力を込める。
地面に光る魔法陣からゴーレムが出来上がる様子に、ノルとネロとえっちゃんは興味津々だ。
『おお〜!』
『すごいね〜!』
『地面からゴーレムが生えてきた!』
今回のゴーレムはお庭のゴーレムより少し大きめサイズ。四角い胴体部分がロティサリーオーブンのようになっていて、肉を焼くことに特化している。お肉をカットし、お腹のオーブンで焼いて、焼き上がったものをお皿に乗せる。
とりあえず、それだけの機能で作ることにする。ゴーレム本体にその機能を刻み込み、魔石を埋め込んだら完成だ。
『できたー!』
『すごーい!』
『カッコイイな!』
「ふ~、ちょっと休憩」
できればお肉焼き特化型だけではなく、万能型も作りたいが、少し疲れた。すっかりこちらには慣れた気でいたが、集中した後はまだ体が怠く感じる。
とりあえずお昼寝しよう。まだお昼前だけど。そしてお昼ご飯は、さっそくこのゴーレムに作ってもらおう!
そう思って、オーレリアはリビングのソファーで眠ることにした。
なぜかみんなもついてきたので、モフモフに包まれてすぐに眠ってしまった。
目が覚めたらお昼を少し過ぎていた。みんなも起きたので、庭に置きっぱなしにしていたお肉焼きゴーレムのところへ行く。
「天気もいいし、たまにはお庭で食べようか」
オーレリアは空間収納から、木製のテーブルと椅子を取り出した。焼け跡の廃材で作ったものだ。それを家の横の広く開いているスペースに置く。
そして、グリムバードの大きな塊肉を出し、お手伝いゴーレムに命じる。
「このお肉を焼いてくれる?」
お手伝いゴーレムはオーレリアの声をきくと、胸に埋め込まれた魔石がほんのりと光り、頭部分の球体がくるりと回り動き出した。
巨大なグリムバードの肉をカットし、お腹のグリルに次々と入れていく。お肉はグリルにセットされている串にさし、回転させながら焼いていく仕組みだ。これで一度にたくさんのお肉が焼ける。
『おー!おにくがまわってる!』
『わー!すごいすごい!』
『へー!面白いな!』
三匹はとても喜んでくれている。焼くだけじゃなく、燻製や乾燥肉も作れるように、機能を増やしてもいいかもしれない。
ゴーレムは焼きあがったお肉をお皿に移していった。いい色に焼けたお肉を、さっそくみんなで食べてみることにする。
「じゃあ、食べてみよう!いただきまーす!」
『『『いただきまーす!!!』』』
パクっと一口食べると、外側の皮はパリッと香ばしく、中のお肉はジューシーに焼けていた。焼きムラもないし、すごくいい感じだ!
『うおーーー!おいしーーー!』
『おいしー!このおにく、おいしー!』
『すごい!これは美味い!しかも、次々と焼いてくれる!』
そう、オーレリアたちが食べている間も、お手伝いゴーレムはお肉を焼き続けている。次々とお皿に焼けたお肉がのせられていくので、えっちゃんは大喜びだ。オーレリアもゆっくり食べられるので、これはとても助かる。
『パリパリ……モグモグ……ごっくん』
『なかのおにく、やわらかいね!』
『バクバク……美味い!バクバク……美味い!』
これはレモンを絞ったり合いそうなソースをかけたら、いくらでも食べられそうだ。試しに、アルシア特製ステーキソースをかけてみた。
「む!これはヤバい!美味しすぎる!」
『りあ!おれのおにくにもかけて!』
『ぼくも!ぼくも!』
『俺も!』
「うん!いろいろ試してみよう!あとはレモンもいいし、この間町で買ったピリッとする粉も美味しいかも!」
みんなでいろいろなソースを試し、食べまくってもうお腹いっぱいだ。あんなにたくさんあったグリムバードのお肉を、マルっと一匹分食べきってしまった。ほとんどえっちゃんが食べたんだけど。
「くるしー、食べすぎた」
クリーン魔法で片付けを終えて、お茶を飲んで一息つく。
『もう、うごけない』
『おなかが、ちぎれそう』
『あー満足!こんなにたくさん美味しい肉が食べられるなんて!』
「喜んでくれてよかったよ。作った甲斐がある」
『鶏肉だけじゃなくて、他の肉でも美味しく焼いてくれるんだよね?』
「そうだね、他のお肉でも美味しいと思うよ」
『じゃあ俺!たくさん狩ってくる!マジックバッグも貰ったし!』
『おれも!たくさんかってくるよ!』
『ぼくも!』
「あ、そういえばあのマジックバッグ、ノルとネロは使うの難しいよね。人間が使うサイズだからなぁ。えっちゃんにもそのままじゃちょっと小さいよね」
『首に掛けられないかな?』
「頭に引っ掛かるんじゃない?大型犬サイズなら大丈夫だろうけど、狩りのときはいつものサイズでしょ?」
『そうだね。せっかく貰ったのに、俺たち使えない?』
『おれも、つかってみたかった!』
『いっぱいおみやげ、もってかえりたいのに!』
「一個だけ分解させてもらって、作れるか試してみようか」
『分解?壊すのか?』
「うん。マジックバッグって、ハイエルフの里にはないものだから、どういう仕組みなのか分からないんだ。ハイエルフはみんな空間収納が使えるから、必要なかったんだよね」
『なるほど、そういうことか』
『でも、ぶんかいしてつくれなかったら、どうするの?』
『りあ、まどうぐしっぱいしたことあるよ』
「もう!ネロ、それは子供の頃の話でしょ?でも作れなかったらごめん。まぁ、どっちにしても今のままでは使えないんだからさ、試してみようよ」
とりあえず、家の中に戻ってマジックバッグをじっくり研究することにする。
「あ、お肉焼きゴーレムも家の中に入れなきゃね。こっちにおいで!」
ゴーレムは頭をくるりとまわし、オーレリアについて家の中に入った。キッチンの片隅に定位置を作る。
「みんながお腹空いたときに、この子にお肉を渡せば焼いてくれるからね。食べすぎに注意だよ!」
『やったー!おにくー!』
『いつでも頼んでいいのか?サイコー!』
『ねぇりあ、このこのなまえはなんていうの?』
「え?名前?……お料理ゴーレム1号だよ」
『それがなまえなの?』
「うん……変かな?」
『へん!』
「う゛っ!」
なんか急にネロがこだわりだした!
『もっとかわいいなまえ、つけてあげてよ!』
「えー可愛い名前?急に言われても思いつかないんだけどなぁ。ゴーレムに名前必要かなぁ?」
『だって、これからまいにち、おにくやいてもらうんだよ!』
『そうだね!まいにちよびかけるから、なまえひつようだね!』
『それもそうだ!お料理ゴーレム1号なんて呼びにくいぞ!』
ノルとえっちゃんも同調しだす……呼びにくいかな?
「えぇ?じゃあ…………ニック」
『にっく!よろしくね、にっく!』
『にっく!おにく、おいしかったぞ!』
『ニックか!これからよろしくな!』
ふぅ、ニックはオッケーなのか。怒られるかと思ったけど、良かった。
『りあ、じゃあおにわのごーれむの、おなまえは?』
「……」
ど、どうしよう。なにも思いつかない。お庭ゴーレム1号じゃダメなんだよね?……くっ!何とかひねり出せ!今日はなんだかネロが怖いぞ!
「(のうぐ……のーぐ)」
『え?』
「……ノーグだよ」
『のーぐ!』
ネロがにっこり笑った。
ふぅ、肉と農具なんてふざけてるって怒られるかと思ったけど、よかったぁー!




