第14話 わたしがやりました
森の緩やかな高台に野営地はあった。いくつかテントが張られている。魔物の襲撃を受けたせいか、荷物が散乱していた。
一応魔物除けの魔道具が設置されてはいるが、その効果はこの魔の森ではちょっと心もとない。
「グリムサーペントの群れが見えたときに、ここから離れて開けた場所に誘導したんだ。拠点がやられるのは避けたいからな」
Sランクは最高ランクの冒険者らしい。この黄昏の獅子のリーダーのグレインも歴戦の猛者で、グレンハルトでは一番の冒険者パーティーだそうだ。
グレンハルト騎士団副団長のフリードリヒ・ハーゲンは、王都の騎士団に所属していたこともある、経験豊富な指揮官だった。
だからこそ、この場所まで来ることができたのだろう。
グリムサーペントに襲われても、死人は出ていなかった。かなり危ないところではあったが。
オーレリア達は、一番大きな天幕へ案内された。
そこに集まったのは、騎士団長と部下1名。後はそれぞれのパーティーのリーダーが4名。全部で6名のイカつい男達だった。
そして、オーレリアと、抱っこされたネロ。えっちゃんと、えっちゃんの頭に乗ったノルが、机を挟んで向かい合い、椅子というか、丸太を切ったものに座った。
息苦しい・・・・・・。
「副団長!ウチのパーティーの女性メンバーを呼んでもいいか?」
「ああ、そうだな、呼んでくれ!」
黄昏の獅子のリーダー、グレインが気を利かせてくれて、すぐに二人の女性がやってきた。
「うわっ!こんなむっさいオッサン共が、美少女捕まえて何やってんのさ」
「可哀想に。話なら私達が聞くわよ。何もこんな人数で囲まなくてもいいじゃない」
「いや、別に捕まえたわけでは・・・・・・」
「とにかく、こんな人数いらないだろっ!」
「わかった。では、黄昏の獅子だけ残ってくれ」
騎士団の部下と他のパーティーのリーダー達がゾロゾロと退出して行った。オーレリアたちが気になるらしく残念そうではあったが、女性二人に追い出されていった。
「あたしは、ジーナ!黄昏の獅子の槍使いだよ!よろしく!」
「私はソフィアよ!黄昏の獅子で魔法使いをしているの。よろしくね」
「わたしは、オーレリア。この子がネロ。こっちが、ノルとえっ・・・・・・エルディオール」
「オーレリアちゃんはエルフなのね!とっても可愛いものね!納得だわ!」
「ねえ!エルディオール様はフェンリルだって言ってたけど、ネロちゃんとノルちゃんは?猫・・・・・・じゃないよね?」
「この子達はケット・シーだよ」
「ケット・シー!!初めて見たよ!実在するんだねぇ!さわってもいいかい?」
ヴヴンと、フリードリヒが話しを遮る。
「すまないが、それは後にしてもらっていいかな?まずは、オーレリア殿と話しがしたい」
「ああ、悪いね。進めてくれ!」
「それではオーレリア殿、改めて危ないところをありがとう。おかげで誰も死なずに済んだ」
「ポーションもとんでもない効き目だったな。もうダメかと思った奴が全快したんだぜ!」
「あれは上級ポーションだな。1本金貨10枚はするだろう。それと、グリムサーペント討伐の謝礼も含めて計算しよう」
「ポーションはあげたんだよ。討伐の謝礼もいらないって言ってるのに」
正直、オーレリアは早く家に帰りたかった。お腹もすいたし、お風呂にも入りたい。お金なんてもらっても、使い道がないから興味はなかった。
「だめよ!そういうことはちゃんとしないと!信用に関わるんだから」
「そうだぞ!それに貰えるものはしっかり貰っとかないと!上級ポーションなんて、簡単に人にあげるもんじゃないんだからね!」
「そうなの?」
あのポーションは薬師イヴェットからの貰い物なんだけどな。それに、上級ポーションってなんだろう。あれ普通のポーションじゃないの?
「それと、あの焼け焦げた場所についてのことだが、知ってることがあったら教えてほしい」
本題がきた。・・・・・・ドキドキ。
「あ、あれは・・・・・・その、わたしがやりましたっ!・・・・・・ゴメンナサイ」
「「「「えっっっっ!!!!」」」」
「だから・・・・・・エンシェントドラゴンはいないの・・・・・・スタンピードも・・・・・・起きないと思うよ」
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
「えっと、そういうことだから、わたしはこれで・・・・・・」
さっさと退散しようと席を立つオーレリア。えっちゃんを促し天幕から出ようとするが・・・・・・
「「「「ちょっとまったっ!!!」」」」
ダメだった・・・・・・。
「オーレリアちゃん、もう少し詳しく聞かせてね?」
「そうそう、あたしの聞き間違いじゃないよね?オーレリアちゃんが何をやったって?」
ソフィアとジーナにガシッと腕を掴まれ、再び椅子に座らされる。逃げられそうにない。
「待ってくれ!じゃあ、あの火柱は、お嬢ちゃんの魔法だというのか?」
「まさか!こんな小さな子供が・・・・・・」
「・・・・・・子供じゃないよ」
「あぁ、ダメだわ!何から聞けばいいか分からない」
「・・・・・・帰っちゃダメ?」
「いや、ダメだ!詳しく聞かせてほしい。なぜ、そんな魔法を使ったんだ?」
副団長は真面目に聞いてくる。
「そんな、大した話じゃないんだけど・・・・・・。森を歩いていたら、木の上からグリムタランチュラがたくさん襲い掛かってきて・・・・・・わたし、虫が嫌いで・・・・・・思わず」
「思わず・・・・・・」
『あのときは大変だったなぁ』
『むしがきたら、おれがやっつけるんだ』
『りあ、うわ~ってなってたもんね』
あのときのことを思い出し、えっちゃんとノルとネロもつぶやく。
「そんなわけだから、ドラゴンはいないし、ここら辺の魔物は今は逃げちゃってて少ないけど、そのうち戻ってくると思うよ」
「はぁ、そういう事か。どおりで、こんなに森の奥なのに魔物が少なかったわけだ。そうじゃなきゃ、こんな簡単に来られなかったよな!」
「たしかにそうだ!いやでも、グリムタランチュラか〜。あれはでかいし、それが群れでとなると・・・・・・あたしたちだったら全滅だね」
「そうね。生きて帰れるとは思えないわ。それにしても、あの森の焼け跡が、オーレリアちゃんが暴れた跡だったとはね」
「暴れたわけじゃ・・・・・・」
『暴れてたよな?』
『あばれてた!』
『あばれてたー!』
みんな楽しんでいるようだけど、もしかしてあの時のこと怒ってる?
「できれば、証拠となるグリムタランチュラの素材でもあればいいのだが。なにか持っていないか?」
「そんなの、わたしが持ってるわけないじゃん。全部灰にしちゃったし」
「そうだろうな」
「あの焼け跡になら、何か残ってるかもしれないけど」
「どうかな、一応調べたんだが魔物の痕跡は見つからなかったな。ところで、謝礼金は町に戻らないと用意できないんだが、私たちと一緒に、町まで行く気はないか?」
「そうだな、ギルドにも報告しなきゃならんし、信じられないような話だから、本人がいれば助かる!」
「えぇ?もう謝ったのに~」
「オーレリアちゃんは何も悪くないのよ?ただ町のみんなを安心させたいの」
「そうそう、ちょっと町まで来て説明してくれれば、みんな安心するからさっ!そんで、謝礼金ガッポリ貰えばいいんだよ!」
「みんなが説明すればいいじゃん!」
「無理にとは言わない。言わないが!ただ、我々は命がけでここに来た。オーレリア殿が暴れなければ、町で怯えるものも、逃げ出す者もいなかったはずだ」
「ぐぅぅ・・・・・・」
「そうだなぁ。俺たち一応遺書とか書いてきたもんなぁ」
「遺書・・・・・・!」
「だよなぁ!さっきは実際やばかったし!」
「覚悟はしたわよねぇ」
「・・・・・・わかったよぉ。行くよぉ」
半泣きのオーレリアは追い詰められ、とうとう折れて町へ行くことになった。追い詰めた者たちは大人げないが、命がけでここへ来たのは事実である。
それに、あのグリムサーペントの群れは、かつてローラたちの塩場付近を縄張りにしていた。それが、オーレリアとえっちゃんに討ち払われ、命からがら逃げ延びた者だったりする。
けっこういろいろと、オーレリアのせいなのであった。




