第13話 町での噂
えっちゃんの背中の上から状況を確認する。冒険者と、騎士団なのかな?揃いの鎧の人達もいる。人数は・・・・・・なんか、けっこういる。倒れている人も多い。死んでないといいけど。
魔物の方は、よく見るグリムサーペントが5〜6匹ぐらい。珍しく群れているけど、よかった〜虫じゃなくて!
「えっちゃんはあっちをお願い」
『おう!』
少し距離がある方をえっちゃんに任せて、目の前にいる2匹をさっさと片付ける。
こんな奴、魔法でヒュンですよ。オーレリアは杖を取り出し、魔力を一点に極限まで圧縮して二発同時に打ち出す。
グリムサーペントの胴体に風穴が開き、地面に崩れ落ちる。無属性魔法、高圧縮魔力パンチだ。
えっちゃんが風魔法であっという間に3匹を狩って、残りのグリムサーペントは1匹。オーレリアが杖を構えたところで、ノルとネロがフードから飛び出してきた。
『ねちゃってたー!』
『まだのこってるー?』
『ふたりだけでずるいぞー!』
『もう!おこしてよー!』
と文句を言いながら、ネロが水魔法で、ノルは土魔法でグリムサーペントを切り裂き串刺しにした。
「ノルとネロは魔法が上手になったねぇ」
『『えへん!』』
胸を張っている二匹が可愛い。駆け戻ってきたノルとネロをナデナデする。
『でもこれじゃあ食べられないぞ。グリムサーペントは美味いのに』
えっちゃんが文句を言いながら戻ってきた。オーレリア達がいつものようにおしゃべりをしていると、後ろから声がかけられた。
「し、失礼、お嬢さん」
あ、そうだった。人がたくさんいるんだった。オーレリアは声のした方を振り向いた。
見上げた声の主は、お揃いの鎧をまとった騎士の一人で、がっしりとした真面目そうな男性だった。
「君のおかげで命拾いした。礼を言う。・・・・・・それで、さっそくで悪いが、ポーションを持っていないか?もし持っていたら譲ってくれないだろうか!もちろん金は払う!」
「回復魔法使える人はいないの?」
「いるにはいるが、とっくに魔力切れだ」
「よくここまで来れたね」
「まぁ、そうだな。君は回復魔法が使えるか?もし使えるなら・・・・・・」
「えーっと、ポーションなら持ってるよ。これ使って」
そう言ってオーレリアは空間収納からポーションをいくつか取り出した。ハイエルフの里の薬師イヴェットに持たされたものだ。
回復魔法を使っても良かったのだが、聖女伝説を読んだばかりのオーレリアは、なんとなく躊躇した。ペネロペ、大変そうだったし。
「これはっ!すまない、感謝する!」
そう言って、鎧の人は走って行った。
他にも倒れている人がいるので、ポーションを飲ませて回ることにする。
動ける人にもポーションを押し付けて、重症の人に飲ませてもらう。えっちゃんがオーレリアの後ろをピッタリと付いて歩くので、みんな怯えながらポーションを受け取るのだった。
だいたい全員に行き渡った頃、さっきの鎧の人が戻ってきた。もう一人、大きな剣を持った男性も一緒だ。
「本当にありがとう!全滅も覚悟したが、助かった。私はグレンハルト騎士団副団長
フリードリヒ・ハーゲンだ。この調査隊の指揮を執っている」
「俺は、Sランク冒険者『黄昏の獅子』のリーダー、グレインだ。仲間を助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。わたしはオーレリア。この子たちは私の従魔で、ノルとネロとえっちゃ――」
『おいリア!えっちゃんって紹介するな!俺の名前はエルディオールだぞ!』
鼻面を近づけて抗議してくる。
「わかったよ。近い・・・・・・。エルディオールです」
「そ、そうか。・・・・・・その、エルディオール・・・様はもしかして、神獣フェンリルなのでは?」
副団長の方が聞いてくる。名前?覚えられるわけないじゃん。
「そうだけど・・・・・・エルディオール様?」
「おおっ!本当にフェンリルなのかっ!」
「伝説の神獣フェンリルだとっ!」
「まさかっ!これは現実か?」
なんか周りの人たちもザワザワしてる。えっちゃん、ちょっと得意そうじゃん。
「・・・・・・それで、オーレリア殿、君は何者だ?なぜ君のような少女がこんな危険な森の奥にいる?」
「なぜって言われても・・・・・・この森の奥に住んでいるからだよ」
「この森に住んでいるだとっ!?君一人でか?」
「この子たちが一緒だから、一人ではないけど」
「副団長!信じられないような話だが、現に俺たちはオーレリアたちに助けられた。それが全てだ」
「いや、しかし・・・・・・」
副団長は何かブツブツ言っている。信じられないと言われても、実際に住んでいるんだからしょうがない。
「それで、調査隊って、何の調査をしているの?」
「あ、あぁ、そうだったな。数日前、この森で大きな火柱が何本も上がったという情報があってな。町ではエンシェントドラゴンがでたとか、森でスタンピードが発生して町が飲み込まれるなどといった噂が広まって、別の町に逃げ出す者も出てきた。そこで、私たち騎士団と高ランク冒険者パーティーで調査隊を組んだのだ」
エンシェントドラゴンと聞いてオーレリアはピクッと反応する。
「俺たちはSランクの冒険者だが、魔の森は危険だからな。他にもAランクのパーティーが3チーム参加して、騎士団含め総勢28名で森に入った。だがなぜか、いつもより魔物が少なくてな。火柱が立ったと思われる焼け焦げた場所までは、そんなに苦労することなくたどり着いたんだ。そこは確かに、ずいぶん広い範囲で木々が焼け焦げていた。爪痕こそなかったが・・・・・・まるで、ドラゴンが暴れた跡のようだったよ」
「ドラゴンが暴れた?」
そんな馬鹿な。オーレリアの表情が固まる。
「君は、この森に住んでいるのなら何か知らないか?あれは並みの魔物じゃない。町に危険が迫っているならば、正体を突き止めなければならないのだ!」
う〜む、なんだか大変なことになった。どうしよう。
表情にこそ出さないが、非常に焦っている。この人たちは、オーレリアが蜘蛛を消し炭にしたせいで、危険を冒してこんなところまで来たのだ。
つまり、オーレリアのせいである。
黙り込んでしまったオーレリアを気遣い、グレインが声をかける。
「とりあえず、場所を移動したい。野営地まで一緒に来てくれないか?」
「え?わたしも?なんで?」
「君には聞きたいことが山ほどあるんだ。頼む」
「改めて礼をしたい。ポーションの代金も支払わせてくれ」
「お礼はいいよ。わたし、そろそろ帰りたいし」
「いや、待ってくれ!頼むっ!話を聞かせてくれっ!!」
「私からも頼む!グレンハルトの騎士団として、きちんと礼をさせてほしい!それに、我々の調査に協力してくれないか?このままでは、町が危険に晒されたままだ!」
「えぇ〜?・・・・・・どうする?」
できればさっさと帰りたいのだが、調査隊の人たちも必死である。一応ノルとネロとえっちゃんに相談して決めることにした。
『まぁ、正直に話して帰ってもらったらいいんじゃないか?リアのせいで町が混乱しているんだから』
『りあがやったんだよって、いえばいいんだよ』
『えんしぇんとどらごんは、りあだよって、いえばいいんだよ』
「くっ、違うのに!」
えっちゃんはなんだか呆れているし、ノルとネロは面白がっている気がする。
「う~ん、仕方ない。じゃあ、行くよ・・・・・・」
そうしてオーレリアは、調査隊の野営地へ向かうことになった。これから取り調べを受ける容疑者のように、トボトボと隊長と冒険者リーダーのあとをついていく。
ゼフィの手紙を読んだときは、こんなに大事になっているとは思わなかった。
あぁ、グリムタランチュラめ!あいつらのせいで散々だ!次にあったら灰すら残さず消してやる!と心の中で物騒なことを考えているオーレリアだった。




