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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青


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第12話 調査隊

 今朝はしとしとと、細かな雨が降っている。


 雨の日はいつも元気なノルとネロも大人しい。えっちゃんのお腹の毛にうもれてスヤスヤと眠っていた。

 

 オーレリアも、えっちゃんの背中に寄りかかり本を読んでいる。こんな日は本を読むに限る。何しろオーレリアには読みたい本がたくさんあるのだ。

 

 今は、里長ゼフィのお手伝いをしている、ペネロペの『聖女物語』を読んでいる。

 

 最初に師匠の『聖女物語』を読んだのだが、なかなか酷いものだった。聖女物語ではなく、魔王物語なのではと思い始めたところで、若き日の師匠は国外へ追放となってしまった。

 

 その師匠の尻拭いをしたのが、しっかり者のペネロペだったのだ。この二冊は上下巻にした方がいいのではないだろうか。ちゃんと買っておいてよかった。


 そんな静かな午前中を過ごし、お昼ご飯を食べ、ウトウトしていたところで、えっちゃんが体を起こし耳をピクピク動かした。


「どうしたの?」

『魔の森の外側に、人が集まっている』

「へぇ、なんだろうね」

『近くの町の人間が、エンシェントドラゴンの痕跡でも調べに来たんじゃないか?』

「えぇ、そんなのいないのに」

『りあだもんね』

『りあが、えんしぇんとどらごん』

「誰がエンシェントドラゴンじゃい」

『まぁ、そのうち帰るだろう。そもそも、人間たちはあの焼け跡までたどり着けるのかな?』

「う〜ん、どうだろうね?今まで森の奥へは来たことないもんね」


 魔の森は資源が豊富なので、腕に覚えのある冒険者などは、森の浅いところまではよくやってくる。しかし、女神様の聖域は森の奥深くにあるので、人に出会ったことはない。

 オーレリアが燃やした場所は、いつも冒険者たちがくる場所よりも少し奥にあった。


 まぁ、焼け跡まで来たところで別にいいか、とオーレリアは特に気にしていなかった。


 数日後、食料調達のため森に出かけたえっちゃんが、人間たちの様子を見てきたようだ。


『人間たちは焼け跡にたどり着いた様だぞ。リアが暴れてあの辺の魔物はみんな逃げちゃったから、比較的簡単に行けたんだろうな』

「暴れたっていうな!まぁ女神様の聖域には入って来られないから、ここは大丈夫だよ」

『入って来られないって?』

「ここは今、精霊を増やすために女神様が守っている場所だから、見つけられないような魔法がかかってると思う」

『俺は普通に入ったけど?』

「えっちゃんは神獣だから」

『そうか!』

『ねぇりあ、ローラはだいじょうぶかな?』

『にんげんが、ローラたちをやっつけたら、ミルクがのめなくなる!』

「あっちは、もっと奥だから大丈夫だとは思うけど・・・・・・」

『様子を見に行ってみるか?』



 翌日、オーレリア達はローラのいる山に来た。この山の上の草原地帯は、涼やかな風が吹き、とても気持ちのいい場所だ。


 グラスブル達はどこか気が立っている様子だったが、ローラは割と落ち着いていた。


『おや。お嬢ちゃんたち、もうミルクを飲んじまったのかい?』

「いや、ミルクはまだあるよ。あんなにたくさん貰ったんだから」

『じゃあどうしたんだい?』

「うーん、人間が森に入って来たから、ちょっと心配で」

『そうなのかい?でもあたしは今まで人間は見たことがないねぇ!魔物以外は、お嬢ちゃんたちが初めてだよ』

『俺も山では人間に出会ったことはないよ。さすがにここまでは来れないと思う』


 ローラはいつの間にか、えっちゃんとも普通に話が出来るようになっていた。他のグラスブルたちはまだ怖がっているんだけど、さすがローラだ。


『それよりもさ、ちょいとお嬢ちゃんに聞きたいことがあるんだよ!』

「なに?」

『ちょっと前にさ、森で火柱が何本も上がっただろ?とんでもなく恐ろしい魔物が来たってみんなで話しててさ、こっちに来ないか、ずっと警戒してんだよ』


 まさか、ローラたちにまで影響があるとは。


「あぁ・・・・・・えーっと、ここまでくる途中に、それらしい魔物は・・・・・・いなかったよ・・・・・・ね?」

『うん、みてない』

『みてないよー』


 ノルとネロがブンブン首を振る。えっちゃんは遠いところを見る様に、顔を逸らした。


『そうかい?もう何日も経ってるし、大丈夫かねぇ?』

「ウン、ダイジョウブダヨ!」


 オーレリアの笑顔は硬かったが、ありがたいことにローラはそれに気づかず、安心してくれた。


「ふぅ。せっかくここまで来たんだし、ピクニックでもしようか」

『ぴくにっく!やったー!』

『ぴくにっく〜!』

『肉を焼くのか?』

「お肉焼は焼かないよ。今日はおやつにチョコチップマフィンと、ブルーベリーマフィンを持って来たからお茶を入れよう。みんなにはミルクね!」


 オーレリアは空間収納からブランケットを取り出し、お茶の準備をはじめた。


「ローラも食べる?」

『なんだいそれは?あんまり美味しそうじゃないね』

「じゃあ、これは?」


 オーレリアはリンゴを取り出した。森で見つけたりんごだった。大きさは普通のりんごより大きいが酸味が強く、そのままだとちょっと食べにくい。焼きりんごにでもしょうかと思い持って来たものだ。


『おや、これはいいね!ありがとうね、お嬢ちゃん』


 たくさん取り出したりんごを、他のグラスブルたちと一緒に食べ始めたローラ。酸っぱいのは平気みたいだ。


「それじゃあ、わたしたちも食べよう!お待たせノル」

『はやくはやく〜!』

「はいはい」


 ブランケットの上にマフィンののったお皿をだすと、ノルがものすごい勢いで食べ始める。喉に詰まらないようにミルクも用意する。


「うん、美味しい!」

『フガフガッ!』

『おいしいねー!』

『美味いな!俺はもっと大きいのが欲しいな』


 このマフィンは、ハイエルフの里から持ってきたものだった。お菓子づくりが好きなハイエルフがたくさん持たせてくれたのだが、この調子だとすぐに無くなってしまいそうだ。

 オーレリアはお菓子はあまり作ったことがないので、無くなったときのことがちょっと心配であった。

 

『あっ!ノル!それぼくの!』

『バクバク・・・・・・』

『かえせー!!』

『モグモグ・・・・・・』

『うわ〜ん』

「ケンカしないの!ネロ、まだあるから、大丈夫だよ。ノル、ネロのをとったらダメだよ!欲しかったらおかわりって言ってね」

『ごめんなさい、おかわり!』

「・・・・・・まだ食べるの?」


 なかなかゆっくりおやつを楽しむことが出来ない。ノルが満足するまでおやつを食べさせてから、ようやくゆっくりお茶を味わうことができた。


「ふ~。そういえば、えっちゃんってどこに住んでいたの?」

『今住んでいる女神様の聖域から、さらに山を二つ越えた先に、フェンリルの里があるんだ』

「へ~そうなんだ。家族はそこにいるの?」

『いるよ。姉弟もたくさんいるけど、俺はもう一人立ちしてるからな。自由なんだ』

「なるほど、里帰りとかしたくなったら言ってね。わたしも行きたい!」

『行ってもいいけど、別に何もないぞ?・・・・・・ん?人間たちがこっちに向かってきているな』

「そうだね、魔物に追いかけられているみたい」


 二人は魔力探知で人間たちの動向をみていた。


『どうする?』

「う~ん、ここまで来ちゃうかな?その前に止めたいな」


 仕方がない。こっちの方に来て欲しくはないし、町へ逃げるなら逆方向だから、助けに行かないとどのみち全滅するだろう。


「ローラ!わたしたちもう行くね」

『あぁ!りんごありがとうね!美味しかったよ。次はまた塩を持ってきておくれ!』

「わかった。またね」


 ローラたちと別れ、えっちゃんの背に乗り移動する。ノルとネロはお腹がいっぱいで、オーレリアの外套のフードの中でスヤスヤと眠ってしまった。



 えっちゃんがぐんぐん速度を上げて、人間たちのいる方向へ向かう。森の先から人と魔物が交戦している音が聞こえてきた。魔物の咆哮、金属の弾ける音、人々の怒号が重なる。


 崩れそうな戦線の前に、えっちゃんに乗ったオーレリアが静かに降り立った。


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