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魔の森でモフモフたちと暮らすことになりました  作者: 一色青


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第10話 ミルクをもらいに

 翌朝、オーレリアたちはグラスブルがいる山へとやってきた。

 その山は、オーレリアの住む聖域の山の北西に位置している。木々はまばらで、岩肌のあいだから草原が広がっていた。


 その草原に、30頭ほどのグラスブルの群れが、のんびりと草を食んでいた。


 オーレリアたちは離れた場所から様子をうかがっていた。


「えっちゃんがいたら、警戒してみんな逃げちゃうから、ここで待ってて。ノルとネロは・・・・・・大丈夫かな?わたしの肩に乗っててね。フードの中で寝ててもいいよ」

『奴らが変な動きをしたら、すぐにやっつけに行くからな』

「やっつけちゃダメだよ。グラスブルはそんなに強くないから、暴れても私一人で大丈夫。それにわたしは、これから交渉に行くんだからね。平和的に」


 そう言って、オーレリアはグラスブルの群れに向かって歩き出す。柔らかい風が吹き、草原が波のように揺れた。


 ある程度近づくと、グラスブルたちがオーレリアに気付き始める。ピクリと耳を動かし顔をあげ、群れに緊張が走ったのが分かった。


 オーレリアはそこで立ち止まり、グラスブルの群れに話しかける。


「こんにちは!ねぇ、誰か話ができる子いない?」


 オーレリアは、妖精や神獣以外にも、動物や魔物と意思の疎通ができることがある。動物とは割と簡単に、魔物とはごく稀に。特に気性の穏やかな魔物だと話が通じやすい。ハイエルフには出来る人が多いが、そもそも、魔物に話しかけようと思う人は少ない。


 魔の森では今のところ、話ができた魔物はいなかったが、グラスブルならいけるんじゃないかと、オーレリアは思っていた。


『な・・・・・・なんだい、あんた!』


 一頭のグラスブルが応えた。やったー!


「わたしはオーレリア。あっちの女神様の聖域の山に住んでるの。ちょっとお話があるんだけど、あなたの近くに行ってもいい?」


 怖がらせないように、ゆっくりと話す。


『は、話ってなんだい!?なんであんた、あたしの言葉が分かるんだい!?』


「なんでか分からないけど、たまに話せる子がいるんだよ。それでね、わたしの用事なんだけど・・・・・・、ミルクを分けてもらえないかな?」


『ミルクだって?なんだってあんた、一体全体、そんなもん欲しがるんだい?赤ちゃんでもいるのかい?あんたが赤ちゃんみたいに見えるけど・・・・・・』


「わたしはもう大人だよ!牛のミルクはね、栄養がたっぷりで赤ちゃんだけじゃなくて、大人も大好きなんだよ。それに、この子達も大好きで」


『にゃ~ん』

『にゃ~ん』


『おや!珍しいね、猫の妖精かい?・・・・・・う〜ん、あんたからは、悪い感じはしないねぇ。猫の妖精がなついてるようだし大丈夫なのかねぇ・・・・・・』

『おれはノル!りあはこわくないよ』

『ぼくはネロ!りあはやさしいよ』

『そうなのかい?う〜ん、じゃあ、ちょっとまっておくれよ。今仲間と相談するから!そこから動くんじゃないよ?』

「わかったよ」


 グラスブルのおばちゃんは、何度か振り返りながら仲間の方に歩いて行った。ブモォブモォと何か相談しているようだ。


「ふふっ。ちょっと面白い子に出会えたね。まだめちゃくちゃ警戒してるけど」

『あのうしさん、いっぱいしゃべるね』

『はやくちで、おもしろいね』


 しばらく待っていると、先ほどのグラスブルのおばちゃんがこちらにやってきた。


『あんたたちに、ミルクをやるのはかまわない!ただし、あたしたちに少しでも危害を加えたら、その時点で二度とミルクはやらないよ!それと、タダでやるわけにはいかない。ミルクが欲しけりゃ何か美味いもんでも持ってきな!』

「あぁ、それなんだけど、これでどうかな?」


 オーレリアは、森で採取してきた岩塩の塊を、空間収納から取り出した。


『あ、あんた!そりゃあ、塩の塊かい!?』

「そう、昨日魔の森で見つけたんだよ。どう?」

『それだけの大きさがあれば、みんなにいきわたるね。正直、塩は助かるよ。最近、塩場近くに蛇の魔物が出るんだよ。それに、乳の張った子たちは動きが鈍くなるからね。小さい子のいる母親たちはなかなか行けないのさ』

「そうなんだ。それじゃあ、私たちでその魔物も倒してこようか?」

『あんたみたいな小さいお嬢ちゃんに魔物が倒せるのかい?』

「わたしはこれでも魔法使いなんだからね!それと、私の仲間がもう一匹いるんだけど、紹介してもいい?怖くないから!」

『怖くないって・・・・・・そう言われると、すごく怖いね。大丈夫なのかい?』

「大丈夫。ゆっくり来てもらうから。仲間の子たちにも伝えて、大丈夫だって」

『・・・・・・わかったよ。お嬢ちゃんを信じていいんだね?』


 グラスブルのおばちゃんは、仲間たちに危険はないと伝えてくれている。


 その間にオーレリアは、遠くで待機しているえっちゃんを呼び寄せる。


「えっちゃん!でてきてもいいよー!ゆっくりね!」


 えっちゃんが立ち上がると、グラスブルの群れに動揺が走った。えっちゃんはゆっくりとこちらに歩いてくる。


『あ、あんた、あれっ!フェンリル様じゃないかい?』

「そう、わたしの仲間で、えっちゃんて言うの。怖くないよ?」

『えっちゃんだって!?そんな可愛らしい風貌には見えないけれどね』

『おい!えっちゃんって言うな。俺の名前はエルディオールだ!』

『ひぃぃ』


 グラスブルのおばちゃんと群れが後ずさりしてしまう。


「こら、えっちゃん!怖がらせちゃダメでしょう?」

『むぅ、ごめん。お前たちに危害を加えるつもりはない。ただ、えっちゃんとは呼ぶなよ』

「ね、えっちゃんもいるし、魔物はわたしたちでやっつけてくるよ」


 えっちゃんをナデナデしながら、グラスブルのおばちゃんに声をかける。これで大丈夫って思ってくれたかな?


『わかったよ、お嬢ちゃん。フェンリル様、よろしくお願いします』

『俺たちに任せておけ』

『なんかえっちゃん、えらそう』

『えっちゃん、いばりんぼう』

『俺はフェンリルだぞ?神獣なんだぞ?』

「そうだね。じゃあ行って来ます」


 こうして、塩場の魔物をあっという間にやっつけてきたオーレリアたちは、無事、グラスブルの信頼を勝ち取って、ミルクを分けてもらえることになった。


 採取方法は、普通の乳しぼりだ。これはオーレリアにしかできない。

 ノルとネロは、警戒されていないので、仲良くなったグラスブルたちの背中をぴょんぴょん移動して遊んでいる。えっちゃんは、威圧感がでないように、丸くなって眠っている。


 そしてなぜか、グラスブルたちが行列を作っている。本来搾乳を必要とする種ではないはずなのに。それでも乳の張った子たちが、どこか落ち着かない様子で、むしろ絞ってほしそうにしていた。


「えぇ・・・・・・そんな・・・・・・」

『頼むよお嬢ちゃん!たくさん持っていきなっ!』


 それから日が暮れるまで、オーレリアの乳しぼりは続く。


「あぁ~~もう無理~~!」


 オーレリアは、草原に大の字に倒れこんだ。希望者全員の乳しぼりを終えて、すっかり手に力が入らない。


「手が震えてる・・・・・・。もうダメだ。今日は夜ご飯つくれない」

『えーーー!りあー!おれおなかすいたよーー!』

『ぼくもおなかすいたよー』


 くっ、ノルとネロは遊び疲れて、えっちゃんの毛に埋もれて寝ていたくせにっ!


『リア、大丈夫か?』

「だめ」

『おやおや、大丈夫かい?でもお嬢ちゃんたちのおかげで助かったよ!またいつでもおいで!』

「うん、おばちゃん、ありがとう!」

『その、おばちゃんってのはやめとくれよ!』

「名前なんていうの?」

『あたしらに名前なんてないよ。そんなの無くても分かるようになってんのさ』

「そうなの?じゃあ何て呼べばいいの?」

『お嬢ちゃんが、呼びやすいように名前を付けてくれてもいいよ。あたしに似合う可愛い名前にしておくれ?』

「そう?じゃあねぇ・・・・・・ローラ!」

『ローラかい。いいじゃないか!あたしにぴったりだね!みんなに自慢できるよ!』


 珍しくオーレリアの名付けが喜ばれた。仰向けに寝そべって、適当に口に出した方がいい名前が思いつくのだろうか。


 まぁ、喜んでくれて何よりだ。ミルクも確保できたし。これで、ノルとえっちゃんは、気兼ねなくミルクが飲めるね!


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