第16話 くしゃみ
「…少し、出かけてきます」
ルトは、そう言い残し、家から出て行った。
そのことを知ったのは、出て行った翌日の朝。7時。執事から聞いた。
「どこに行ったんだ!?なにも聞いてないのか?!」
俺が強く、執事に聞くと、彼も折れたようで話をしてくれる。
「魔術師様は、国からの依頼で、ダンジョンのモンスターを討伐に参りました。なにせ、新種で生徒が危ないからと……」
「は……?1人で行かせたのか!?」
「ええ…。時間も遅かったので」
「…ッチ!何時に家を出た?!」
「…。2時ほどです」
「おい!今すぐ車を出せ!!学校にも連絡しろ!」
「おやめください!響様!魔術師様も5時間で帰ってくると言っていました。もう帰ってくるはずです!」
「だが、!……」
俺は気づく。
「一度。外の空気を吸ってくる」
「雨が降っております。よろしいのですか?」
「構わない」
「…わかりました。ついていきましょうか?」
「大丈夫だ。逃げることなどしない」
俺は庭に向かって歩く。
言われた通り、外は雨が降っていた。
服が濡れる。髪の毛も濡れ、崩れる。
大きく息を吸い、吐く。
そして思う。
(なんで、何も言わずに行ったんだ…!俺が!俺が弱いからなのか!!!)
男だから泣かない。そんなことはない。
悲しい時は泣く。
辛い時は泣く。
苦しい時は泣く。
この場合は、ルトに対して悲しかったから泣いたのだろう。俺は、ルトに対して怒りにも近かったのだろう。
感情を抑え、屋敷の中に入る。
体がびしょびしょになった俺に、執事は風呂に入るよう促した。
まあ、断る理由もないし、入った。
風呂を上がると、ルトが帰ってきていた。
そのルトは、いつもと雰囲気が違うように見える。
なにが違うか。
彼女はの服装は、学校から支給された戦闘服ではなく、最初に会った時の服である、黒いローブを着ていた。
そして、ローブには血がついている。
最初に目についたのはそこだったが、彼女の目を見ると、違和感が。
俺から見て右。彼女の左目が青色から、水色?や白のような目になっていた。
「ルト!!!大丈夫か?あと、この目はなんだ!」
「響くん…。すみません、勝手に出て行って。先に少し、休ませて欲しいです。できれば自然が多い場所がいいです」
俺は最後の部分の意味がわからなかった。
なぜ、自然が多いところなのか。
でもルトがそう言うなら。と、俺は屋敷の別館。隣の菜園場に彼女を寝かした。
彼女を寝かして、俺は菜園場を出ようと、歩いていると。彼女が青く輝く。
それと同じように、育てている野菜達も緑色に輝く。
緑色に輝き、その粒。粒子がルトに向かって、吸収されていく。
おそらく、これが魔力の回復に手っ取り早いのだろう。
彼女を寝かして約3時間。
屋敷の居間で本を読んでいたところ、彼女が起きて、歩いてきた。
「おはようございます。響くん」
「…。おはよう。って!もう昼だぞ?」
「あはは…」
「ダンジョンでなにがあったかは、昼食の後聞かしてもう。だから、しっかり食え」
「はい。ありがとうございます」
昼食が取り終わり、俺の部屋で話を聞くことにした。
ソファに座り、彼女が話すのを待つ。
「…まず、勝手に出ていってすみませんでした。心配をかけたと思います」
「それはもう大丈夫だ。頭を上げてくれ」
彼女の下げた頭を上げさせ、次のことを聞く。
「まず、ダンジョンでなにをしてきたんだ?」
「政府から、階層の希少精鋭を倒して欲しい。と、依頼が入ったのです。それで、あのモンスターは危険で、響くんに怪我をさせたくなかったので、1人で」
「…。なるほどな。まあいい。それで、相手はどんな感じだった?」
「相手は、魔力を扱える敵でした。ダンジョンの構成が変わり、炎の魔術を使う敵になっていました」
「魔力を扱えるモンスターがいるのか?!」
「ええ。それでいて交戦的。20階のボスほどの強さでした」
「20階が、どれほどの強さかは分からないが、ルトでも時間がかかっているのなら、俺がいては足手まといか」
「……」
「なんか言ってくれよ!?」
「あはは…」
「笑って誤魔化すな?それが一番傷つく」
あまりこの場面で、こういうことはしてはいけないか?ダメだな。反省。
「まあ良い!あと、その目はどうしたんだ?」
「……」
「言い辛いなら大丈夫だ」
「いえ!ただ相手の攻撃が入って。それで……」
「それで?」
「治癒魔法使ってる途中にくしゃみしちゃって、途中で終わらしちゃったんです!それで、もう一回回復しようとしてもできなくて。それで今です……」
「え?!なにしてんの!?くしゃみって」
「しょうがないですよ?!生理現象ですから!」
「いや!タイミング!!!え?もう目治んないの?」
「そうですね。色だけ分からなくなりました」
「ほんとになにしてんの?!」
「片眼は無事なので…」
「んー。でもなぁ〜」
「私は大丈夫なので!安心してください!!!」
俺は彼女の圧に押され、まあ、大丈夫。という結論に至った。
彼女は右目が青、左目が水色という、目になってしまった。それ以外。特に目立つ怪我はしてないよう。
ローブに着いていた血は、返り血らしい。
恐ろしい。




