目覚め
皆様、お久しぶりです。
前回の更新サボって申し訳ない、時間が無かったんだ……。あいも変わらず時間系列がごっちゃごちゃで分かりにくい感じになってますが、頭を空っぽにして読みましょう(()
「気持ちは汲んでやる、けど__」
水圧弾が放たれ、それを止まっていた戦闘の開始合図とするかのように男が反応し、避けて一足飛びに詰め寄り、持っていた短刀で斬り伏せる。
短刀が当たるかと言う寸前で間へ割り込んだのは、華懍が得意とする得物の刃であった。
「それを許すほどアタシは甘くないよ」
ギリギリ…と刃物同士が鍔迫り合いによって起こる耳障りな音を出しながら、華懍は男を見据えて口を開く。
「それに…人間嫌いな癖してあんた、随分と人間味が強いじゃないか。難儀なもんだね」
「…チッ」
周りには聞かせず、しかし相手の耳には確りと届くようにボソリと言葉を零す。
その言葉を聞いた男は露骨なくらいに嫌そうな表情を浮かべ、言葉の代わりとして舌打ちを一つ返した。
そして言いたいことを言い終えれば、華懍は持ち手に力を加え、思い切り男を向こうへと弾き飛ばした。
「人を、その力を、馬鹿に…するな!!」
華懍と男の鍔迫り合いが終わり、離れたのを確認すれば墨綴が力の籠もった声と共に筆を走らせ、一文字の漢字を書いていく。
【銃】や【砲】と書かれたその文字は、書いた主の「撃ぇ!!」という発破の声により、撃鉄の音が響き、続けざまに発砲音が辺りを占めていく。
彼女の霊力が尽きぬ限り、無限とも言える弾が発射され続ける圧倒的なその様は、弾幕と呼ぶに相応しい物量であった。
男は最初こそ人間とは思えぬ身の熟しと剣術で凌ぎ切っていたが、それも長くは続かずに徐々に飲まれていく。
それでも彼女は止めなかった。
彼女は攻撃の手を一切休めることなく、銃撃を続けて完封を狙う。
だがそれは、逆説的に考えると発射を続ける限り彼女の霊力が削られ続けるという意味でもある。
ジリジリと削られていく霊力に、薄く汗を浮かべ苦い顔を浮かべた。
しかしそれ以上にきつく睨みつけるかの様な目で男を見据えれば、はしたないと言われようが気にしない勢いで口を開き、男に叫びを上げた。
「ふざけんな、アンタは確かに地獄を見たのかも知れない…それを私が知る由はない…。でも! 自分の大切な人が居なくなるのは…絶対、嫌だ!! というか、アンタの勝手な自己都合で私の友達を巻き込んだのは許さないし、許す気もない!! だからアンタには負けない、負けられないの!!」
「__じゃあ、『僕以外』に負けるなら問題は無いね」
激しい弾幕のせいで巻き上がる粉塵、その向こうから聞こえないはずの、いや…聞こえてはならないはずの声が彼女の耳に届く。
その言葉が届くのが先か、それとも後か。
彼女の視界端に真横から飛んでくる赤黒く、大きく広がる『ナニカ』を捉えた。
それが悪魔の口であると認識した頃、彼女の視界は黒く塗り潰された__。
* * *
暗い。冥い。
それはどこまでも続く闇の中。上下左右すら分からず、方向感覚など全く役立たない。
…いや、闇と表現したが、それも生温く感じる…そう思わせるほどの黒。
闇を更に深く、濃く、全てを染め上げてしまうくらい…そんな黒く、暗く、深い底の底から意識がゆっくりと浮かび上がる感覚を覚える。
体中にへばり付く様な、纏わり付く様な気怠さを感じながら今の状態を確認する。
どうやら地面にうつ伏せの状態で転がっているらしく、前面が特に痛い。
「___」
どうにか体を起こそうとするが、その力すら碌に残っていないのか、思うように動いてくれなかった。
仕方なく体はそのままで現状を確認する。
コンクリート、紙…いや、木だろうか…?何か、そして死体…それらが焼ける臭いと、嫌に鼻につく鉄臭さ。
きっとこれは鉄筋じゃないもの、この職に就いてから特に嗅ぐようになった臭い…そう、血の臭い。
新しいものや、時間の経ったもの、それらが混ざり合って吐き気を催す臭い。
それらが嫌でも半分ほど微睡みがちな自身の意識を引き上げ、覚醒させた。
先程よりもはっきりとした意識で、再び周囲の状況を確認してみる。
より広く気配を気取り、整理してみればどうやら他に駆け付けた退魔師達の活躍により、悪魔の残党は退けられたらしい。
全く、我ながら不甲斐無く情けないったらありゃしない。
神威の使い過ぎと代償のせいとは言え、無様を晒し、戦地のど真ん中で意識を手放して居眠りとは。これではかの教官にどやされても何も言い返せやしないだろう。
はぁ…と小さく溜め息を吐けば、なけなしの力を振り絞り、ギリィと音が聞こえそうなほどに歯を強く食いしばれば上半身を何とか起こし、膝立ちの体制に。
__支援、感謝致します。
近くに居た一人の退魔師をチラリと一瞥し、心の中で礼を一つ述べる。
そして視線を空港へとやれば、目を閉じた。
無様は晒した、情けなくみっともない姿も他に見せた、もうこれ以上は無いだろうが、あってもそれを披露するのは御免である。
この体と残った力で果たして何が出来るかは分からない…だが向かわずにこのまま退場というのは許されない気がする。
…ホントなら今すぐにでも帰りたいところではあるが。
限界まで耳を澄まし、気取る気配の範囲を広げた。
__あった。一つ、二つ…複数の強い気配。場所は此処から程近い場所だろうか…?確かこの方向は……。
「第3ターミナル、でしたか…」
きっとそこで今回の騒動の中核的存在が居るのだろう、そうでなくとも戦闘は起こっていると見て間違いはない。
「……せめて頼まれた仕事くらいはしませんとね」
自身が作り上げたトンネルは作り上げた本人が離れることによって繋がっている霊力の通り道が途切れ、効力を失って強度が落ちていき、それに比例して徐々に崩壊していくが十分に課せられた役割を果たしただろう。
無くなりはするが、今すぐではない。
それに今すぐ無くなったとしても、此処に残った退魔師達が避難誘導と救護はする…してくれる、はずだ。
一抹の不安は抱えるも、第3ターミナルに比べれば些事だと判断を下せば神威を使い、トプン、と水の音を立てて自身の影に沈み込んだ。
そして右も左も、上も下も無い闇の世界へ入り込んだ闇瀬は黒い地面を強く踏み抜き、まるで水を得た魚の如く元の世界では有り得ない速度で第3ターミナルを目指して走り始めた。
この世界の便利なところは元の世界を見ることが出来ることだ、感覚としては水中から水上の景色を見るのが近いだろうか。
移動しながらだと文字通り景色が飛んでいくので、状況確認はかなり難しいものがあり、そこが玉に瑕なのだが…。
体感にして何秒程か、しかし世界からすれば刹那とも言える瞬間的な移動の速さで滑走路から第3ターミナルへと移動した闇瀬は元の世界の景色を見やる。
どうやら敵と思しき者が居るであろう場所に粉塵が立ち込めており、それに相対する形で得物を構える見知った者と、威勢の良い啖呵を敵に対して切る一人の女性が戦っているらしい。
他は…重傷者と死者が幾人か。
そして今まさに、重傷者が悪魔の手によって一人増えようとしている。
さて、ここはどうするか。
機を伺い、隙を見て奇襲を仕掛けるか。
__味方を犠牲にして?
では自身の役割を尊重し、後方支援に徹して全てを彼女らに任せるか。
__目の前で脱落者が出そうな状況下で?
ではどう出るか。
愚問だ。そんなもの、答えなんて当に決まっている__。
ちょっと長くなったんで一旦区切ります。
続きは近々出すか、来週の月曜日か…どちらになるか分かりませんが、楽しみにしていただければと思います。




