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闇系退魔師の受難  作者: 名無しの劣等者
Re:Remember
22/43

強行突破

急ぎ気味に書いたのと、色々なキャラやら場面やら視点を書いたから文とか簡略化されてるとこが多々見られる…

 空港内のとある部屋。


 暗がりが占める視界の悪い中で、彼女は早く此処から出ようと身動ぎをしていた。


「…っ、脱出、しなきゃ…!」


 縄で手首を縛られて、挙げ句に結界内に囚えられる厳重っぷりで拘束されていたのは民間退魔師であり、救出対象の一人である『墨綴 栄』。


 連盟ではなく、民間が管理を行っている『天誠神社』の退魔師であり、今回のテロの被害者とも言える彼女は、縄から抜け出そうと必死でいた。


 彼女が拐われた理由は拍子抜けするほど実に簡単なもので、友人が人質に取られていたのが要因だった。


 高校の友人はかけがえの無い者…そんな友人を彼女は見捨てられなかった。


 それ故に、彼女は敢えて友人の代わりとなり、逃がす代償として捕らえられ、人質になる事になったのだ。


 あの呪術師、絶対にぶっ飛ばしてやる…と内心では怒りを滾らせる思いを持ちつつ、しかし霊力が上手く体に伝わらず、もぞもぞともどかしそうに動くことしか出来なかった。


「ねぇ、些細盛天…アレは大丈夫なの…? 皆様の協力、得られてるのなら…張れる筈だけど」


 そこには誰も居ないはずだが、彼女は見えないナニかを相手にするようにして話し掛ける。


 彼女が話し掛けている相手、それは人が神様と崇めるモノであった。


 何故彼女が神様達の協力を仰げるのか、その理由は彼女のスカウティングと呼ぶ力を応用したものである。

 まぁ、簡単に不思議な力をどうにかこうにか応用する術すら持った少女だとでも認識すれば早いだろう。


 彼女一人だけならば望みは薄いが、神達の力を借りることが出来れば、襲われているであろう一般人や、事件解決のためにやって来た退魔師達の手助けになるだろう。


 それを願い、心の中で祈りつつも、それで全ての焦りが拭えるわけではない。


 気持ちが先走ってしまっているからか、必死に藻掻(もが)いてしまい、手首の皮が縄で徐々に擦れていく。


 それでも少女は気に留めず、神だけに任せるのではなく己の力でも、現状をどうにか打破しようと藻掻き続けるのだった。



 *   *  *



 時間は幾分か遡り、場所は空港周辺に張り巡らされた結界の境界部分。


 闇瀬は先に突入して行った者達の後に続くように、しかし慎重に慎重を重ね、ゆっくりと結界に近付く。


 結界へと手を伸ばし、中へと腕を突っ込めば、とぷん、とまるで水の中に入れたような感覚が伝わる。


 そのまま結界の中へ足を踏み入れれば、太陽の光が遮断され薄暗い羽田空港の全容が見える。


 其処には広い滑走路と、既に見えている第三ターミナルが目と鼻の先に。そして外を彷徨くのは数々の悪魔達。


 それでも最初よりかは数が減ったのだろう、現場に到着した退魔師の手__特に、『特級』と言う、通常の枠組みには収まらない位に付く『伊藤 剛一』という男の手によって着々と人とは別の生き物だった肉塊が量産されていた。


 あれなら特段こちらが動かずとも殲滅、並びに制圧という面ではどうにかなるだろう。


 だが、突撃する前から既に蹂躙は始まっていたのか、一般と思わしき人の、死体のようなものがぽつぽつと転がっており、外だというのに血と肉の焼ける不快な臭いが鼻を突く。


 そう、彼の行動はあくまでもその二つであり、()()()()()()()()()()()()()()()


 彼の率いる退魔師による殲滅の手から逃れたのか、それとも溢れてしまったのか、外を彷徨いていた赤子のような姿をした悪魔達は、血相を変えてこちらへと襲いかかって来た。


 相手が特級であろうと、三級であろうと、それを判断する知性は残念ながら一部を除いた彼ら下級の悪魔には無い。


 討ち漏らしは大雑把に数えて大体40体ほどだろうか。


「殺傷は好まないのですがね…」


 わらわらと群れを成し、襲い掛かってくる光景を前にしながら彼は悠長なことに溜め息をつき、肩を落としていた。


 やれやれと言いたげな様子で気怠げに、服の内に仕込むようにして忍ばせていたナイフを十本程出し、それらを上へと宙に放る。


 そしてパン!と手を打ち鳴らせば、まず一番近くて飛び掛かってきた悪魔の眉間に一ミリの誤差も無く、寸分違わずにナイフが突き刺さった。


 それに合わせるようにして徐々に近くから遠くへ、波紋が広がるようにして悪魔の死体が量産されていく。


 彼の近くに行けば行くほどにナイフが突き刺さっているが、逆に離れれば離れるほどにナイフは刺さっておらず、銃弾が貫通した様な風穴が空いていた。


「こんなところでしょうか…私の仕事は保護と尻拭いになりそうですかね…」


 ゆらゆらと辺りを揺らめく、血の滴る影の触手をシュッ、と風切り音を立てて消し去れば自身の主な仕事を勝手に立てて決め込む。


 別に怒る相手など居ないのだ、好き勝手やらせてもらうとしよう。

 主としてやる行動は後方支援だが、別に前に出れないわけではない。


 まぁ、戦うのは嫌いですがね。



「おるぁ! どうしたそんなもんかぁ!」


 首を斬り、腹を裂き、刀を刺してぶった斬る。


 ぎりぎり生き残ってる一般人に襲い掛かりそうなところを小さい火炎球で牽制、そしてぶった斬る。


 確実に急所を攻撃する。瀕死などでは無く確実に殺す。

 でないと中途半端に生き残った悪魔は他者を喰らい、回復した上で強くなる。


 二次災害どころの騒ぎではない。


 だから派手に暴れて悪魔達を食事処じゃなく自分の対処を優先させなくてはならない。


 手頃な悪魔を踏み台にして別の悪魔を斬る。踏み台にした悪魔には刀を射出し串刺しにして殺す。


 民間の保護は後続の奴らに任せて自分は出来るだけ悪魔の数を減らす。


 だが、このままでは一般人は閉じ込められたままだ。


 この結界を何とかするしかない。ついでに暴れた分だけ悪魔がこちらに注意を向けて何体か引き受けようとあえて大声で指示を出す事にした。


「聞こえてるか聞こえてないかは問わん! 聞いてるやつだけ聞け! 俺は今からこの結界張ってる奴のとこに向かう! 民間保護は任せた! ついてくるやつは勝手についてこい!」


 そう大声で周囲の戦ってる退魔師に言えば、伊藤は敵意、害意と勘を頼りに結界の元凶を探し始める。


 人間にとって悪魔が災害なら、悪魔にとって厄災であり、死神と言える男が、目の前に立ち塞がる敵を文字通り薙ぎ倒し、着実に前へと進み始めた。



 伊藤率いる一派が元凶を見つけようと第三ターミナルに向かった後、周辺に残っている退魔師は自販機を破壊したり、誰かと合流したりとしていた。


 …自販機を破壊しているのはきっと色々と溜まってるのだろう。鬱憤とかストレスとか。

 言及せずにそっとしておいてあげよう…。


 悪魔がひとしきり駆除され、漸く少しの落ち着きを取り戻し始めた滑走路。


 自身は神威を惜しみなく発動し、張られている結界の境界付近へと続く黒いトンネルを作成し、保護した一般人をそれに通して避難をさせていた。


 再び悪魔に襲われたとしても、このトンネルがあれば一般人は余計な被害を被ることがない。こちらとしても戦いに集中できるというものだ。


 それに結界外へ出すことは叶わずとも、比較的安全な場所へ送ることは可能だ。

 我ながら悪くない案である。


 自己評価を下し、うんうんと頷き、周りは粛々と避難を続けていたそんな中、霧をかき回したかの様な、模様が渦巻くどす黒い結界が張る空に突如として大きな口が一つ開いた。


 其処からまるで降臨するかの如く落ちてきたのは、四体の人の形を模した悪魔。


 そして悪魔の腕の中には、小さな子供や女が怯えた顔で襟ぐりを掴まれていた。


 悪魔達の手には刃物が握られている。首筋に突き付けたりしてないが、下手なことをすればいつでも切り裂けるといった様子だ。


 やっと落ち着きを取り戻したというのに、一瞬で緊張が走る状態に戻った周囲にいる退魔師に向けて悪魔は徐ろに口を開いた。


 その悪魔達の要求は実にシンプルで、分かりやすく、言葉も短いものであった。


「武器ヲ、捨テロ」、と。



 一方元凶を探し求めて突貫した伊藤特級。


 ターミナルに向かって走っていれば、一匹の烏が伊藤率いる退魔師達の頭上で羽ばたく。


 動物なのだが、そこまでのルートを完璧に把握しているのか、まるで道を案内するかのように数メートル先を飛んでいた。


 伊藤達はそれについて行けば、暫く歩き、やがて第三ターミナル内部の三階、出発ロビーへと辿り着く。


 其処には、謎の文字が書かれた白い布が全体に巻き付けられた大きな釘が地面に刺さっており、その周辺には手足を拘束された人間達がその釘に括り付けられていた。

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