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闇系退魔師の受難  作者: 名無しの劣等者
Re:Remember
23/43

第一ターミナル

今回の話は登場する人物達が人物達なだけあって、視点が二転三転します…読みづらいかもしれないけれど、ご了承の程を…ホントに申し訳ない……。

 

 場所はうって代わり、第一ターミナル。


 時分としては第三ターミナル組が現場へ足を運び、突撃したくらいである。


 こちらもまた、事件解決のために深川神宮から赴いた退魔師達が足並みを揃え、結界内へと侵入をした。


 彼らの目にまず飛び込んだのはあちこちを飛び交う数多の悪魔、そしてその悪魔に無惨にも惨殺されたであろう一般人たちの(むくろ)が地面に転がる様であった。


「何とも惨たらしいものですね…」


「こりゃ酷いもんだな」


 目の当たりにする惨状に、其々の退魔師が口々に言葉を零す。


 侵入を果たした退魔師の隊のリーダー格と思わしき人物が幾つかグループに分け、指示を出して突撃させる。


 中へと侵入する指示を出された組はそのまま第一ターミナル内へ、悪魔を相手取る指示を出された組はその場に残り、戦闘を開始し始めた。


 最初は悪魔達が一般人を蹂躙することに熱中しており、退魔師達が先手を取っての戦闘だったので優勢だった。


 だが、悪魔達もただ一方的に殺られる訳でもなく、抵抗を見せ、徐々に盛り返しが起こり、そのまま互いに拮抗した状態で収まる。


 腕に覚えのある退魔師の一人は跳ね回る黒い球体の悪魔を、一人は貞子よろしく這い回る一つ目四つ脚の悪魔を、一人は…何かマイク・ワゾ○スキーっぽい悪魔を、残りは其々対処できる悪魔を相手取っていた。



 そしてこの状態はターミナル内でも同様であった。


 ターミナル内でもまた、暴れ回る悪魔や一般人を惨殺し続ける悪魔、果てには何もせず、ただ隠れてうまい汁を吸うだけの悪魔すらもそこに居た。


 そして退魔師達が扉を大きく開け放って突入を果たし、その光景を目の当たりにして怒りを覚え、戦闘を開始。


 外、内共に拮抗した状態であり、どちらも何か一つの切っ掛けがあれば途端に崩れ去るほどの脆さを控えており__。



「ふぅむ、漸く見つけたわい。骨の有りそうな奴をのぅ」



 それが訪れ、拮抗が崩れ去るのはそう長い時を要さなかった。


 ターミナルの五階で退魔師達は戦っていたが、唐突に天井は崩れ落ち、粉塵が舞う中で一つの影が見下ろすようにして出てくる。


 粉塵が晴れると同時にその姿は現れ、格好を見て取れた。


 身長は目測だけでも170㎝はあるだろう、一見平均的な体躯。

 黒で染め上げられた軽装着物を着ており、素顔は口元だけ露出した鬼の仮面で隠されていた。


 随分と(しゃが)れた男の声だが、佇まいと放つオーラにより、誰しもが明らかに只者でないと察するにはそう時間は要さなかった。


 その男はゆっくりと歩を進め、そのままひょいと飛び降り、大きな音と粉塵を巻き上げて着地を果たす。


 唐突な登場に、退魔師と並んで()()()()()()()()()


 どうやら敵方である悪魔達も予想外の者だったらしいその人物は、ゆっくりと品定めでもするかのように入り混じった退魔師と悪魔、魔人を見やり、そして一人の女性に目を付ける。


「ふむ、お前さんにでもしよ__」



「おぉっと! 僕の妹が可愛いのはわかるっすけど、手を出すのはいただけないっすね! 僕が相手になるっすよ!!」



 目標を定め、ゆったりとした足取りで近付こうとした矢先、風を切る音が鳴り響き、小さな影が窓から飛び込んでくる。

 それは男の姿へと瞬時に変化し、言葉を遮るように勢いを乗せた蹴りを目標に向けて放っていた。


「おおっと!鷹……いや、その殺気。人が神威で化けた姿かいのう?」


「あれ、案外効いてなかったり? まぁ、良いっす、気にしない方向で! ちょっとお付き合い願うっすよ!」


 どうやら只の手練れでは無いらしい。


 着物の男は蹴りの角度に腕を挟み込み、その衝撃を見事に正面から受け切っていた。


 妹にちょっかいを出されそうになった兄である彼は、壁を蹴って空中へと身を投げ出し、再度鷹の姿へと体を変化させる。


 猛禽類らしい鋭い爪で着物の男の足を掴もうと飛び掛かるが、かなり強引と思える身体の捻じりで躱された。


 だが、それでも構わない。獲物を捉えた猛禽類らしい、凄まじいスピードで建物の一階まで降りれば、そのまま建物の中へと入り込んだ。



 着物の男もまた、窓側の方へ強引に体を捻り、唐突に現れた相手の攻撃を躱したのでそのまま外へと投げ出されるが、体操選手も驚きの見事な着地を果たす。


 しかし、無傷では無かったのか体を小さく震わせていた。


 周囲に居た退魔師は、何事かとその様子を静視するのみだったが、やがて男は小さく「カ、カ、カ……」仮面の奥から声を漏らし、声は次第に大きくなっていく。


「カカカカカカカカカ! ようやっと、ようやっと儂を楽しませてくれる相手がおいでなすったわいのう! カハハハハハハハハハハハ!」


 男は大きく哄笑をあげ、喜びを露にする。


 傍から見れば狂ったように写ることだろう、しかしその男の喜びは本物であり、至って正気であった。



 鷹の姿から元の人間の姿へと戻り、さて、これからどうするかなんて考えていれば、入り口付近に居た一人の男の子を見つけて声を掛けた。


「あっ、良いところにいたっす『雨月』くん。ちょっと僕と一緒に特級か天降りっぽい奴を討伐するっすよ~」


 拍子抜けしそうな、場に似つかわしくないあまりにも軽い調子で、全く軽くないことを言葉にしつつ、「えいえいおー!」なんて言えば彼の肩をぱしぱしと叩く。


「燈浬さん! ……特級か天降り、ですか。分かりました。では前衛はお願いしますよ?」


 落ち武者のような、首から上が無い悪魔を相手取っていた一人の青年…いや、少年と言っても良いくらいの見た目をした男の子は、やって来た男性_『堺 燈浬』の名を口にし、多くを聞かずに了承をする。


 うっすら笑みを浮かべ、「えいえいおー」と小さく返すちょっとした茶目っ気も出しながら。


 見た目だけで言うなら、一人の男性が当てにするのもおかしいものだが、この少年、常識の枠に当て嵌まらないとされる特級の階位を持っているのである。


 そんな彼から了承を得れた燈浬は、よろしくっすよ特級、なんてマスクの下で笑顔を浮かべつつ、奥から次々に沸いてくる落ち武者のような悪魔の一体に蹴りを打ち込んだ。



「……ほう、どうやらもう1人いるらしいが……構わん構わん。多対一は戦場で慣れておる。何人でもかかってくるが良い」


 瓦礫を踏み抜き、男の後を追って一階のターミナル内へと足を踏み入れた着物の男は、ニイと仮面の奥で笑みを浮かべる。


 だが、すぐには襲い掛かろうとせず、奥から湧き出てくる落ち武者に視線を向けたと思いきやポツリと小さく言葉を零した。


「貴様等は……少し邪魔だのう。少し、間引いておくか」


 男はそのままその場でスゥ、と大きく息を吸い、目いっぱいに胸を膨らませたかと思った瞬間。


「AAAAAALALALALALALAALALALALAAAAAAAAAAAAAAAAYYYYYYYYY!!!!!!」


 窓が、壁が、振動するレベルの大声を発した。


 その一喝、たった一つの喝だけで、奥から湧き出ていた落ち武者悪魔の大半が失神か腰が抜けて行動不能になってしまうだろう、そんな声であった。


「折角の上物相手じゃ。邪魔が入ってはいかんからのう?」



 どうやら彼の言っていた者がやって来たらしい。


 瓦礫を踏み抜く音が耳に入り、振り向いてみれば着物の男。


 一見すればただの一般人とも思えるが、纏う雰囲気はそんなのとは全く逆の、放置していれば人間に害を成すであろう、圧倒的な力を持った存在。


 また強い人を連れてきたものだと小さな少年__『高御門 雨月』は苦笑いを浮かべた。


 やれやれ…あちらも気に掛けながら、落ち武者の悪魔にも気を配らねばと思いつつ、燈浬が蹴った方向を見た、その瞬間__あまりにも荒々しい、瞬間にも耳を塞ぎたくなる様な、大きな大きな咆哮が響いた。


 哀れ、落武者悪魔。蹴って吼えられての大惨事。


 ここまでの惨事は、他の悪魔もそう食らってるものではないだろう。


 しかし、咆哮は敵と言える悪魔だけでなく、こちらにも影響があった。


 それもそうだろう、この咆哮はある種の無差別攻撃だ。狙って一点に絞ったものではない。


「……ッ、…これは、酷い………」


 膝が笑う、地べたに這いつくばらなかっただけ是非褒めて貰いたい。


 残念ながらこの少年、特級の階位を頂けるほどには強いのだが、代償によるものなのか、それとも元からなのか、如何せん肉体の耐久は一般人以下という貧弱さを持っていた。


 霊力により、肉体の持つ本来の強度よりも強化されている筈なのに、攻撃を貰ったら気絶してしまいそうな脆さを持っているのだ。


 産まれたての子鹿の様に足を震わせていたが、ゆったりと体勢を立て直し、「燈浬さん、前衛お願いします」ともう一度声を掛ける。


 戦闘が始まる前からこれだ、これから先は更に彼へ随分迷惑を掛けてしまいそうな気が若干していた。



 はてさて、着物の男が発した圧倒的と言える咆哮。


 確かに悪魔すら圧倒するそれは場の静寂と綺麗なグラウンドを………産み出し得なかった。


 戦闘の意思を見せるものは貞子に、落武者の数体に_____サムズアップしたマイク・ワゾ○スキがそこに転がっていた。可愛いね。


 彼等は、しかし知性無く襲い掛かる訳でもなく静観という名の様子見に徹していた。


 まず最初に動く輩は、どいつだろうか?と目を輝かせつつ、いつでも何が起ころうと対応出来るように構えながら。


 第三ターミナルに負けず劣らず、第一ターミナルにも緊張が走り、波乱が呼び起ころうとしていた。

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