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闇系退魔師の受難  作者: 名無しの劣等者
闇に蠢くモノ達
20/43

報告

「……それで、()()を彼女が討伐したと?」


「えぇ、先程からそう言ってますよ。これで三回目でしょうかね」


「一々数えんでいい…」


 教官の質問に臆面もなく、淡々と答える闇瀬。

 その様子に、教官は頭が痛いと言わんばかりに手を頭に当てて横に振ってから、視線を自身の前に置かれた物へとやる。


 教官の机の上には()()()()()()()()が乗っていた。

 彼_闇瀬が、任務完了報告の証として持ってきたものだ。


 彼は華懍の任務の同伴者として朝頃に着いて行かせ、帰ってきたのは夕刻であるつい先程。

 随分と早い帰還に、失敗したか、或いは帰還せざるを得ない要因が出たのかと心配したが、それは無く安堵した。

 だが、今この目の前の問題に、その安堵は瞬く間に消え去ったのは語るに難しくない。


「それで、彼女は今何処に居るんだ」


「それも先に言った通り、此処へ向かう前に医務室へと向かわせましたよ。疲労が強く見えましたのでね。"補佐"の私は比較的に元気な方なので、代わりとして報告をしに来ただけですよ」


 ()()だ、一番腑に落ち無いのはこれである。


 彼女の実力が高いことは誰しもが知っていることだ。

 彼女と共に任務へと向かった者は、行きは侮りが見えたりするが、帰りにはその侮りを反省する態度や雰囲気を感じさせる。それ程までに彼女の戦闘におけるポテンシャルは高いのだ。


 だが、それを考慮したとしても、彼女が大大鬼を殺れるかと問われれば否だろう。

 これにはそれだけの力があるのだ。


 となれば必然と闇瀬が手を貸したのは必然だ。

 何よりもこいつ自身が彼女よりも圧倒的な力を持っているのは知っている、この身で実証済みだ。


 しかしコイツはあくまでも手を貸した、補助をしたのみの一点張りで、手を下してない事を強く前に出す。


 本来であれば両手を挙げて喜び、戦果を誇るものだが、こいつ自身はそれを望まず、固辞し続ける。


 一体何がこいつをここまで頑固にさせ続けているんだ…?と、思慮しているとき、扉を控えめにノックする音が耳に入った。


「入れ」


「失礼します」


 ガチャリと音を立てて入ってきたのは、闇瀬と共に任務へと赴いた華懍であった。


 そして、闇瀬は彼女の姿を視界に入れたと思えばスッと静かに立ち上がる。


「では私はこれにて。報告も終えましたし、休ませて頂きますね」


 言いたいことを一方的に告げた彼は、そのままスタスタと歩いて部屋を出ていったのだった。


「……何かあいつと喧嘩か問題でも起こしたか?」


「いや、そんな事はしてないよ。大方、本来の報告者が来たからお役御免と見て出てったんだろうね。食えない奴だよ」


 そんな事を言いながら、彼女は闇瀬が座っていたソファーにドカッと、とても女性とは思えない乱雑な形で座れば、足を組んだ。


「食えない奴、というのには同感だな。では報告を聞くとしようか、華懍()()


 軽い談笑の気持ちで話していた華懍は、階級と共に名を呼ばれれば肩を小さく竦めた。


「未だに慣れないねぇ、それ。あたいの表の階級は一つ下だろう?」


「あぁ。だが、お前の昇級は既に決まっている。実力、実績共に申し分無しだからな」


「やれやれ、あたいの知らないとこで話が進んでるのは気持ちが良いもんじゃないね…それに今回のだって、あんたの頼みじゃなかったら受けてなかったんだからね」


「クックッ、それに関しては感謝しよう。その口ぶりの割には快諾してくれたがな」


「そりゃ、あいつが一緒となればね。あたいを負かした奴だし、日もそれなりに経ってたから、どれ程成長しているものかと思ったけど…ありゃ一生変わらんね、性格の面は」


 彼女はこちらの抱いている思いと同じものを持っているようで、やれやれと言いたげな様子で少々呆れ気味に肩を竦めてみせる。


 そんな態度を見せたが、「けど…」と言葉を付け足し、視線を机の上にある悪魔の頭部へと向ければ、顔付きは険しいものへと変わった。


「あれの強さは本物だよ。全く、嫌になるね、あたいと戦ったときは全力じゃなかったのかと思わされるくらいだったよ。今回の任務では、あいつは援護として来てたけど、逆にあたいがそうなんじゃないかと勘違いを起こしそうだったもんだ。多分あいつはこれが()()()()()()()()()()()()()()とあたいは予測するよ」


「……それ程か」


「少なくとも、あたいの感覚ではね。けど、そんな強さを感じると同時に、()()()も覚えた」


「危うさ? 強過ぎるが故にと言うやつか?」


「それもあるけど、大部分としてはあいつは何でも一人で熟そうとするきらいが見えた。それとプラスとして、神威を使ってるとき、生気を感じられなかった。何かあるよ、あいつには」


「俺としては、それを少しでも探ってほしかったところはあるがな」


「勘弁してくんなよ、あたいには確実に荷が重過ぎるんだ、それは」


 ハァー…とこれでもかと言えるくらい盛大な溜め息を付いて背もたれに深く身を預ける。


「悪魔達にも少々きな臭い動きが見られ、内部ではこれか…悩みのタネはいつでも尽きんな」


「全くだよ、ホントに」


 話題の中心となっている闇瀬の預かり知らぬ場所で、華懍と教官の二人は苦労垣間見える溜め息を共につき、その日忙しい一日は幕を閉じたのであった。

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