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闇系退魔師の受難  作者: 名無しの劣等者
闇に蠢くモノ達
18/43

大大鬼

 障害となりそうなそこらの壁や、盛り上がった地面を乗り越え飛び越え、目についた小鬼を片っ端から槍の切っ先で切り捨てていく。


「グギャッ!」


「ゲギッ…!」


 風のような速さで駆け抜けながら槍を振るっているので、下の下とも言える小物達はこちらを捉える前には胴体、もしくは頭と体を泣き別れさせていく。


「ッ…!ゲギャギャ!ギギャァア!!」


 少し遠い位置で異変に気付いた小鬼は攻撃されていると察知するや否や、耳障りな声を叫び散らし、周囲に居た仲間に危険を知らせて警戒を促す。


 他の小鬼もそれを聞けばぞろぞろと何処から湧いて出たのか、脇から屋内から姿を表していく。


「やれやれ、これのどこが「数は多くない」のやら。短期間で繁殖でもしたのかい、傍迷惑な話だよ」


 予想していたよりもずっと多くの小鬼が出てくるのを見れば、げんなりとした様子でため息をつき、槍を肩に担ぐ。


 数はざっと見ただけでも30は下らないだろう。

 これ以下の数であっても、このような小さな村が壊滅するのには納得である。

 範囲型で薙ぎ払えば確かに楽ではあるが、霊力の消耗もそれに合わせて大きい。


 雑魚相手に使うのもねぇ…。


 そうは思うが、流石に肉弾戦のみを続けても体力を無駄に消耗するだけなのも確かだ。

 棍棒やら何処から取ってきたのか包丁やらを片手に、単純な突撃や飛び掛かりで襲い掛かってくる悪魔から、軽くあしらうようにひょいひょいと避けながら考える。


「無駄になるよりは良いか…。よし」


 結局神威を使うと決めれば、鬱陶しげに槍を横に薙いで小鬼を前方へと吹き飛ばせば霊力を込めて槍を地面へと突き刺す。


「『彼岸花』」


 その言葉を発した瞬間、吹き飛ばされて蹌踉めいていた小鬼達の足元がフッと明るく光り、次には空高々と炎の柱が立ち上っていた。


 まるで間欠泉を掘り当てたかのように下から炎が吹き出し続け、上の方では花開くように火の粉が周囲に飛び散っていた。

 その(さま)は、まさしく技名の通り『彼岸花』に見えるものだ。


「さて、こんなもの__っと」


 轟々と立ち上る炎の柱を、目の上に手を当てて眺め、飽き__いや、全滅したのを確認出来たので移動しようとした時、飛んできた矢を顔を逸して避ける。


 矢が飛んでいった方とは逆の方へと視線をやれば、そこにはボウガンのような物を持ち、こちらに構えを取っていた小鬼の姿を見つける。


「まだ生き残りが居たのかい。いや、それ以上に危惧すべきは…」


 そんな姿を見ればやれやれと言いたげに肩を竦めて、地面に突き刺していた槍を引き抜き、構えを取るが、内心では普段以上に警戒度を高める。


 相手が飛び道具持ちだからではない。()()()()()()()()()()()()だ。


 さっきまでの奴等は確かに武器を持っていたが、それを持って振るうだけ。技術など要らない。

 何なら飛び掛かってきた奴も居たくらいだ。


 だがコイツは違う。コイツは武器を扱っている。

 つまり、それが意味することはただ一つしかない。

 コイツは少なからず()()()()()()()()


 厄介なものである。

 言語も介さない、攻撃も原始的、知性すら感じられない力のみで事を成そうとする悪魔が、知性を有したらどうなるか?

 答えは明白だ、攻撃方法に多彩さが生まれ、被害はより大きくなっていく。


 先の事を考えれば、今ここで奴を逃すことなく滅するべき__なのだが。


「……冗談がキツいねぇ…」


 ボウガンを構えた小鬼の後ろにある暗がりから更に数匹程出てくる。

 どれも飛び道具持ちだ。


 視線をやりはしないが、多分左右と背後の死角にも同じように居るだろう。気配を感じられる。


 完全に囲まれており、どれも標準は自分に向いている。

 しかもたちが悪い事に、どれもこれも同士討ちを狙えそうな角度と射線ではない。


 統率された動きを見せる小鬼に対して冷や汗を一つ垂らせば、遂に小鬼の一匹が引き金を引き、他も合わせて射出してくる。


「ッ…! 小賢しい…!」


 発射タイミングを遅らせたのは避けにくくするためか、変に知識のある戦術に舌打ちをしながら槍を回して防御を取ろう__としたが、その行動は途中で止められた。



「__失礼、少々遅れてしまいましたね」



 何ともタイミングが良いのか、それとも狙ったのか、自分の周りを囲うようにして半透明の黒い壁が立っており、飛んできた矢を、まるで生き物のように全て飲み込んでいった。


 そして遅れるようにしたからヌッと出てくるのは支援として着いてきた黒い人物だった。


「…援護するのが遅いんだよ、全く……」


 やっと現れた相手に、ホッとしながらも悪態をつきながら胸にトスッと握りこぶしを当て、にへらと笑ってみせた。


「申し訳ない、少しやるべきことをしていましてね…。あぁ、そうだ。あなた方の持ち物でしたね、お返し致しますよ」


 こちらの言葉に頭に手を当てて申し訳無さそうな様子を見せた後、彼はふと周りの黒い壁の先に居る小鬼達へ視線を送る。


 彼につられて壁の向こうを見やれば、何故か小鬼達が小さな断末魔を上げて倒れてく。

 何をしたのか、と彼に問いかけようとしたが、ある一匹に目がいき、様子を見て理解をした。


 その小鬼には、()()()()()()()()()()()、奴等の()()()()()()()()()放たれて突き刺さっていたのだ。

 それも、どれも急所となる部分を()()()()()()()()、である。


「……やっぱり末恐ろしい奴だよ、あんたは…」


 ぞくりと寒気を覚える程の強さを感じて、思わず呟いた言葉に彼は特に何かを言うわけでもなく、小さく肩を竦めて周りの壁を消した。


「…さて、本番はこれからですよ。まだ体力も力も温存出来てますね?」


「あ?どういうこ__……何だい、ありゃ…?」


 意味深な問いかけをしてくる彼に、訝しげな表情を浮かべて言葉を投げ掛けるが、向かいの廃屋の影から出てきた巨躯が視界に写り、別の問いかけを彼に飛ばしながら冷や汗を垂らす。


「何って、まぁ…ゲームで例えるならボスでしょうね。此処の」


大大鬼(オーガ)型が出るなんて聞いちゃいないよ、あんた知ってたのかい?」


「あー…貴女が降りていった後くらいに、ちょっと遠めの所で見つけまして…」


「わざわざ連れてきたってのか? 正気を疑うよ!」


「いや、多分あれが此処に来たのはさっきの火柱のせいかと…」


 彼の言葉に思わず「うっ…」と言葉を詰まらせる。


 確かにあれは不必要に派手だったかもしれない。でも技ってのは華があってこそだろう。

 陰湿なのや、地味なのはお断りだ。そんなのは裏世界に生きるような奴等にでもぶん投げてしまえ。

 ……横のやつは、そんなのを手にしたら、こちらの手が負えないので例外として。


「何にせよ、やるしかありませんよ。完全にこちらを捉えてますからね…」


「はぁ?! それこそ正気かい!? ありゃ()()()()()()()()()()()()()()強さだよ! そこらに転がってる小鬼型と同じじゃないんだよ!」


 あまりにも突飛な有り得ない話に、愕然とした表情で彼に食い掛かる。


 名称を大大鬼(だいたいき)、通称を『オーガ』。

 こちらは小鬼とは違い、姿かたちに関しては日本に出てくる、結構大きめな鬼をそのまま浮かべてもらった方が早い。

 通常、小鬼の上位種には通称『オーク』と呼ばれる大鬼(たいき)が居るのだが、これはそれの更に()()()である。


 大きければ大きいほどに、強さは比例して上がっていき、最終的には通称とは違って、個体名すら付く奴も居るくらいである。

 中には知能すら手に入れて、人語を介する個体も確認されているくらいだ。


 そして今目の前に居るコイツは個体名を付けられるに匹敵するくらいの大きさを持っているように見える。

 別に個体名が無かろうと、こいつらは()()()()()()()()()()()()()


 悪魔は通常、体の内から滲み出る呪力が周囲に悪影響を与える。

 それの体面積が増えればどうだろうか?つまりはそういうことだ。


 デカいというだけでも厄介な上にこれだ、やってられないものである。


 そして本来、等級に見合わない敵が現れた場合、もしくは確認された時は速やかに撤退するのがセオリーだ。

 こうして対峙してる時点でおかしいのである。自殺志願者だと言われても反論は出来ない。


 だが、何故かこの横に居る男は、そんなことを気にする素振りも見せずに、何処から取り出したかも分からないナイフを一本取り出せばクルクルと回してから構え始めた。


「さ、腹を括りなさい。どうせ逃してはくれないんですから、死にたくなければ是が非でも戦って勝つしかありませんよ」


 そんな言葉を放つ彼には一切の恐怖が感じられなかった__。

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