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闇系退魔師の受難  作者: 名無しの劣等者
職と敵と世界と
12/43

闇瀬の神威

 教官の後に続き、廊下をひた歩いて数分。

 今目の前には以前に訪れた訓練場が、木漏れ日を浴びながら静かに佇んでいた。


 そのまま横引きの扉を開けて中へと進めば、それ程月日は経っていないのに懐かしさを覚えてしまう光景が目に入る。


 電気は付けられてないので、窓から射し込む光のみで照らされる、道場を彷彿とさせる内装。

 どこか厳かな雰囲気が漂っており、自然と身が畏まる思いだ。


 靴を脱ぎ、上がり込めばその雰囲気はより強く感じられる。


 実は訓練場は幾つかあり、室内だけでなく屋外もちゃんとあり、見てきたがその中でなら私は此処が好きだった。


 戦うのは苦手だが、建物の放つこの雰囲気がどことなく日本らしさみたいなのを感じるからだろうか。


「何か感じ入るものでもあったか?目新しいものは何も置いてないはずなんだがな」


 初めて来た訳でもないのにきょろきょろと辺りを見回すこちらに、不思議なものを見るような目で教官は訪ねてきた。


「あぁ、いえ、お気になさらず。何も感じない、と言えば嘘にはなりますがね。此処では色々とありましたから」


 問いかけに対してハッとしてから相手を見つつ、少しだけ肩を竦めて答える。

 そう、色々あったのだ。初手で死にかけたりとか。


「あぁ、そう言えばそうだったな」


 教官はそれを思い出したのか、くつくつと笑う。

 全く、人が悪いものだ。


 教官はひとしきり笑った後、気を取り直して真面目な表情でこちらを見る。

 それに合わせ、闇瀬もまた姿勢を正した。


「では、霊力の見極めを始める。何、難しくも何もない、誰でも出来ることだ。今から俺に向かって()()()()()()()()


 ___ん?


 気のせいでも聞き間違いでもなければ、かの教官殿は今とち狂った事を要求してきた気がする。


 最初の手合せのときの条件でも近しいことを述べてたが、もしかするともしかしなくとも、この教官は高御門華懍と同じ人種か…?


「どうした、棒立ちをして。お前の表情は見て取れんが呆けた顔をしてそうだな。聞こえなかったらもう一度言うが、俺に対して全力で神威を放て。簡単なことだろう。それとも何か条件が整わなければ使えない特殊型か?」


 どうやら一言も発さず、ただ棒立ちを決め込んでいたこちらに対して不思議そうな顔をした後、勝手に解釈を進めていく。


 あぁ、もう…どうしてこう、戦いに身を投じる者はこうなんだ…。

 皆が皆とは言わないが、どうもそっちに似た傾向の者が多く感じられてならない。


 自分をもっと大事にしてやれ、体は資本だぞ。

 いのちをだいじに、これすごく大事。


「…失礼を承知で教官殿、私の神威は以前も申し上げた通り、防御寄りなのです。攻撃型ではありません」


「おかしな事を言うものだな、お前は。勿体振る必要などどこにもないだろう」


 いや、教官、私は一向に勿体振ってないです。真実しか申してません。


「……ふむ…では一つ問わせてもらうとしようか。闇瀬三級、本当にお前の神威は防御型なのだな?」


「え、えぇ…何度も申し上げているように__」


「ならば更に問うが、なぜ貴様はあの時()()()()()()()()()()()()


「っ__!」


 気付かれていた。

 手合わせの様子をずっと見ていたのだ、それもそうだろうと言わればそうなのだが…。


 それにこちらを呼ぶのが「お前」から「貴様」に変わっている。

 それなりに本気なのが伺えるものだ。相当に気になっているのだろう。


 闇瀬は教官の言葉にぴくりと反応を示し、そのまま押し黙ってしまう。

 どう答えるのが正解なのか考えているのだ。


 そんな様子を見た教官は図星だろうとでも思ったのだろうか。そのまま、憶測ながらも言葉を紡ぎ始める。


「あの時、神威の使用は許可していた。そして事前に貴様から神威は支援系で防御型だと聞かされていた。故に条件を多少変化させ、少しでも見極めようとした。だが結果はどうだ、貴様は一度も神威を使用せず、防御すらしなかった。それはつまり貴様の使う本来の神威は支援系防御型ではなく、()()()()()()、そこから出される結果として、()()()なのではないか?攻撃は最大の防御とも言うからな」



 *   *   *


 __……正直なところ、かなり驚かされている自分が居た。


 この教官は、あんな少ない情報だけでこちらの神威の型をほぼ当ててみせたのだ。


 そう、自身の使う神威は決して支援系ではない。

 しかして()()()()()()()()()()()()のだ。


 …いや、少し語弊はあるか。


 どういうことか理解しづらいだろうが、簡単に言うならば、私の使う神威は()()()()()()()()()()()()のだ。


 ふぅ…と少し長めの息を口から一つ吐けば、意を決して相手を見据える。


「お見事ですね、教官殿。えぇ、私の神威は支援系ではありません。ですが、またそのどちらでもありません」


「……どういうことだ?支援でも、攻撃でもないとは」


「どちらか片方に寄っているというわけでない、そういうことです。私の神威は攻守に優れた()()()なのですよ。…中途半端、器用貧乏と言われればそれまでですが」


 ちょっとだけ肩を竦め、冗談めかすようにして蛇足を付け足す。


 教官はこちらの言葉に対して何かを考えているのか、小さく唸るだけである。

 やがて出すべき答えが出たのか、徐ろに口を開く。


「つまり、使い方によってはどちらも出来るというわけか。それで、結局貴様の扱う神威は何なのだ」


 どういった用途の神威なのか、知ることは出来たが、肝心の中身が分からずじまいなのに痺れを切らしたのか急かすような形で問いかける。


 ここまで明かした以上、隠すものはもう無いだろうといった様子で闇瀬は口を開いて神威の正体を明かす。


「私の神威、それは___」

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