神威の素
教官の言葉を聞き、顎に手を添えて少しだけ押し黙り、思考する。
『霊力』__
それはこの世界に生きる人間なら誰しもが、大なり小なり持っている力である。言い方を変えるならば生命力、だろうか。
悪魔と戦うために必要な要素の一つ。
悪魔を傷付け、仕留めるには通常の兵器は役に立たない。最も効果を発揮するのは、多少だろうと霊力を帯びさせた攻撃、もしくは霊力そのもので攻撃することである。
「神威=霊力での攻撃」だと簡単に考えてもらって構わない。
生きている人間なら持っている力と述べたが、なら全人類が皆悪魔に対抗できるかと問われれば、それは違うと言わざるを得ない。
残念ながら多くの人間が持つ霊力は微々たるものでしかない。
稀に膨大な量を持って生まれる者も居るらしいが、それはあまりにも少数な例だ。参考になりやしない。
ならば微々たるものしか持たない人間はどうするのか、ここで登場するのが「神」である。
神は人間に対し、神威を授けるのと同時に幾ばくかの霊力を譲るのだ。
これによって人間は、人間離れした異能力とも言える神威を扱い、悪魔に抵抗するのだ。
神威を用いれば、用途によるが霊力を消費するのだが、消費した霊力はずっと減ったままというわけでもなく、時間が経てば自然回復していく。RPGとかのゲームでよくある徐々に回復してくような、あんな感じだ。
因みにこの霊力と対極するように存在するのが呪力である。
これは悪魔版の霊力みたいなものだと考えてもらったら良い。
身体能力も然ることながら、向こうも呪術と呼ばれる、呪力を媒体とした異能力を使ってくるのだ。
絶対数では勝っているとは言え、よく人間は今の今まで滅びずに済んでいるものだと強く思うばかりである。
さて、霊力と並びに呪力に関して思い巡らせた後に再び教官の方を見る。
「私の霊力を、ですか。構いませんが…しかし、簡単に測れるようになったのですか?」
教官の言葉に対し、思う部分があって問い掛ける。
それは、霊力は他の物質などと違って数値化が出来ないのである。
つまり正確に測ることは出来ない。出来て、おおよそこれぐらいだろうと言った、漠然とした測り方しかないのだ。
それに対して、信用に足る情報かと言われれば疑問が出るものだが…まぁ、少なくとも目安にはなるだろうか。
こちらの問いに、教官もまたそれを踏まえた上でのものだったらしく、うむと頭を縦に振って頷く。
「おおよその目処は立てておかんとな、今後に関わるものだ。本来であれば、あの試合にて一人ひとり見極めるつもりだったが、お前の対戦相手だった高御門が火柱を立てて視認ができなかったからな」
あぁ、言われればそうだ。
感知系の神威を持っているか、元から霊力や呪力を感じ取るような六感が強くない限り、推し測るのは無理があると言える。
あの時、止めずに静観し続けていたのにも漸く納得した。
こちらとしては、出来るならば全力を持ってして止めてほしかったのだが…。
「分かりました、応じさせて頂きます。しかし、何処でどのように測るので?」
何にせよ了承せねば話は一向に進まないので、二つ返事をしつつ場所と方法を問い掛ける。
また手合わせとかだったら全力で逃げ出したいところだが…。
「うむ、助かる。場所は以前の訓練場だ、方法は着いてから説明するとしよう。その方が何かと早く理解もしやすいだろう」
腕を組み、満足げに頷いてからろくに説明をすることもなく背を向けて歩き出す。
試合の時と同様、何か嫌な予感がしなくもないが、了承した手前、踵を返して離れるわけにもいかず、荒事とか起こらぬよう願いながら教官の後を着いて足を動かした。




