知を識る(2)
因みに度々出てるので気付いてるかもしれないが、敵である悪魔にも、こちらと同様に階級が存在する。こちらが勝手に区分しているだけだが。
三級〜特級があるが、悪魔における特級は強さが退魔師の階級に比べて一つ落ちる。
つまり特級の悪魔は、退魔師の階級で言えば一級に当たるのだ。勿論のことながら、十分脅威であることに変わりはない。
特級の悪魔に一つの街が潰されたなんて話も耳にするくらいである。
また、血液の摂取は呪力の増幅につながるとされており、積極的に血液を摂取する悪魔ほど強い。街を壊滅させた悪魔の狙いの多くはこれなのかもしれない。
なお、悪魔の本来の目的は人間を襲うことであり、血の摂取(呪力の増強)はその副産物に過ぎない事が報告として挙げられている。
さて…では、悪魔に退魔師で言う特級クラスは居ないのか、と問われれば、否と答えよう。
迷惑なことにちゃんと存在するのだ、悪魔側にも。
それが「天降り」。
神社を持たず、所属もせず、負の感情を受け続け、その果てに堕ちた元神である。
元々神も、一辺倒に人間側とは言えないのだ。
負の感情を受け続けたもの、元から悪神、邪神と呼ばれるもの。それらは悪魔側として捉えられ、討伐対象として見られる。
だが、幾ら悪魔と区分されているとはいえ、腐っても元は神だ。
そこらの退魔師との実力は天と地ほどの差がある。
いつぞやに悪魔は災害の一種だと述べたが、これに関しては天災の一つだろう。存在するだけで周囲に悪影響を及ぼすのだ。
軽く暴れただけで、天変地異でも起こるだろう。想像したくもないが。
そして敵、と一概に言っても悪魔だけではない。
私益の為に、もしくは欲を満たす為に神威を用いて犯罪を犯した退魔師もそうだ。
基本、その者らは退魔師としての免許を剥奪され、「呪術師」という烙印を押されて一生を追われる身として過ごす。
大抵、大きな神社や多くの退魔師と契約する神は、対象が呪術師へと堕ちたら、神威の契約はその時点で断たれる。
なので、退魔師と比べたら非力な犯罪者へと成り下がるだけである。
しかし、それ程多くの者に信仰されていない、もしくはひっそりとした山奥などに建つ神社に居る神などは契約を継続したり、新たに契約をしたりするので、一概に油断はできないのである。
そして、一度呪術師になった者が再び退魔師に戻ることは決して許されず、仮に捕まった場合は退魔師の掟に則り、退魔師が直接手を下して死刑にすることが決められている。
…因みに呪術師は何も一般の退魔師のみから出るとは限らない。
かの御三家からも出てはいると聞く。
良くない噂の一つである。
それと悪魔、呪術師と並んでもう一つ存在する。
それが「魔人」である。
魔人は人間の死体に悪魔が入り込むことで出来上がるものだ。
通常の悪魔と魔人の違いは以下の通りだ。
·悪魔は食事を必要せず、栄養を摂らなくても無限に生きることができるが、魔人は人間の体を元としているので肉体維持が必要であり、食事を摂らなければならなくなる。
·人型の個体は特徴を上手く隠しさえすれば、人社会に紛れ込むことが可能だが、魔人は人間と異なる特徴が現れる。例を挙げるならば角が生えている、体の何処かに模様が浮かび上がる、耳が尖る等。
通常でも身体的に勝る悪魔が何故人間の死体を乗っ取るのかは未だ謎が解明されていない。
逆に、悪魔と魔人の同じ点としては怪我をした際には生き物の血液を摂取することで高速で回復することができる事である。
悪魔、魔人、呪術師___これらが、今現在で退魔師と対立している敵たちである。
因みに退魔師の階級の説明で、ちょこちょこと出ていた連盟。
これは退魔師を束ねる組織であり、通称が日本退魔連盟。
正式名称は「公益社団法人日本退魔連盟」だが、長いので基本は通称の方で呼ばれている。
本部は京都にあり、支部が北海道、宮城、東京、愛知、広島、香川、福岡、沖縄に存在する。案外と幅広く展開されている。
職員は退魔師が半分、神威を持たない一般人が半分で構成されているとのこと。
主な仕事は退魔師免許の発行、退魔師の人事管理、呪術師の捜査、退魔師の昇級査定、三級退魔師の支援、悪魔の研究などがある。
半年に一度京都の本部で伝統亭号持ちと一級以上の退魔師が集まり、会議を開いている。
申請すれば二級以下の退魔師も参加することが出来る。
日本の退魔師を支える要の機関だが、権力争いや裏金などが横行してなかなかに腐敗しているのだとかなんだとか。
やはり退魔師の全てを束ねる組織と言っても、綺麗なままで維持し続けるというのは土台無理なのだろう。
不肖など昨今では珍しくもないものである。
本を読み進めながら、入ってくる知識を整理するためにあれやこれやと思考していたが、長くも行っていれば流石に疲れも出てくる。
ふぅと一息つき、パタンと音を立てて本を閉じれば、腕を上げて体を伸ばす。
事務作業で長時間座りっぱなしの姿勢には多少慣れたが、疲労ばかりは慣れることが出来ない。
椅子を引き、気分転換がてらに散歩するため読んでいた本を片手に立ち上がる。
* * *
「やれやれ、探したぞ、闇瀬三級」
本を片付けて建物内の廊下をふらふらと暫く歩いていれば、後ろから唐突に声を掛けられた。
聞き覚えのある声に、しかし誰だっただろうかと思い出そうとしながら振り返れば、その先に居たのは例の教官であった。
「おや、教官。どうされました、私を探していたとのことですが…?」
「うむ。件の試合後、確認をするのを忘れていたものがあってな」
私としたことが、と言いたげにやれやれと頭を振る教官。
どうやら試合の事後処理や、新人達の手続き等で追われて確認することが頭から飛んでしまっていたらしい。
「はて…確認、と言うと?」
ふーむ、何かあっただろうか…と思いつく限りを頭に浮かべてみるが、どれもこれも違う、もしくは既にやったことなので該当しそうなものが分からず、首を傾げて問い掛ける。
教官は今一度、うむと一つ唸るように漏らしてから言葉を続けた。
「お前の『霊力』の量を測りたい。共に来てもらうぞ」
次回はこの世界に溢れている不思議な力の素のお話となります。




