6.住み込みの部屋は安宿以上
商会で働くことを決めるとウェルズから商会の部屋に住まないかと提案を受けた。
奴隷の教育のためには商会にいてもらった方が都合がいいことが多いらしく今までの教育係もそうしてきていたらしい。
菜々華から支援を受けたとはいえ宿を取り続けるほど持ってる金は多くない俺はこの提案を受け入れた。
商会には維持するための使用人数人も住んでおり彼らとの顔合わせをした後にウェルズに部屋まで案内してもらった。
「この部屋をお使いください。実際のお仕事は明日以降にご説明いたしマス。ではワタシは商談がありマスのでこれで失礼いたしマス」
「ああ、わかった。ありがとう」
礼を言うとウェルズは少し意外そうな顔をした。
「驚きました。アズマサマはワタシのことを信用するまで心を開いていただけないと思っておりました」
「行くあてもないところを助けられたんだ。礼くらい言うさ。信用したわけじゃないけどな」
「それは残念デス。では信用していただけるように頑張るとしまショウ」
そう言ってさっきまでのニヤけ面に戻った。
「信用したいのは山々だけどな。そのニヤけ面のおかげでなかなか難しそうだ」
「それは困りました。なにせワタシは基本こんな顔で過ごしておりマスので」
なにがおもしろいのかわからないがウェルズは笑みを深くしていた。不気味だからやめてほしい。
「ではワタシはこれで。また明日にお会いしまショウ」
ウェルズを見送ってから部屋に入る。
部屋はなかなか広かった。でかい商館だ、ウェルズは胡散臭いがかなり儲かっているのだろう。
豪華さはないが普通に快適に過ごせる部屋に思える。
「安宿で凌ぐつもりがこんないい部屋に住むことになるとはな」
掃除も行き届いており清潔感がある部屋だった。
試しにベッドに横になってみた。
日本のマットレスのような弾力はないがフカフカの布団が体を受け止める。
今朝まで拠点にしていた宿とは大違いの快適さだった。
「これはいいな…眠くなる。けど荷物の整理とかしないと…」
パーティを追い出されたのが今日の昼前。そして胡散臭い商人の話を警戒しながら聴いたことで精神的疲労が大きかったのだろう。
重くなるまぶたに対抗できずそのまま眠りに落ちた。
****
「やべ、寝ちまった」
目を覚ますと部屋はすっかり暗くなっていた。
そして腹が盛大に抗議の声を上げる。
「そういや今日昼からなにも食ってないな…腹減った…」
暗闇に目が慣れてから部屋のランタンに灯りを灯す。
視覚を確保してから荷物をあけて食料を探そうとした。
「ってそうゆうのは全部あいつらのとこに置いてきたんだった…」
保存食もないことを忘れていた。
「そういや商館を案内された時に自由に使っていいって食堂があった気がするな。そこでなんかあるかな…」
場所をしっかりと覚えていないため迷う気がする。だが空腹すぎてそのまままた眠るのは難しそうだ。
「背に腹は変えられん。食堂探索だ」
空腹を紛らわすためにすこし気合を入れて食堂を探すために部屋を出た。




