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5.雇われ勇者

「単純なお話しデス。アズマサマ、ワタシの商会に雇われませんか?」


「は?」


何を言い出すんだ?


「アナタの持つユニークスキルを見た瞬間に我が商会にぜひとも入っていただきたいと思いましてネ」


隷属化と隷属支援のことか。

確かに奴隷商人が欲しがりそうな名前のスキルだけど。


「このユニークスキルがどうかしたのか。これ使えないスキルだぞ」


「なので先程もお話ししたのデス。アナタはスキルの使い方を理解していないと。そのスキルは魔物や人を隷属化させるもの。まぁ魔物だとテイムとも言いマスネ。そして隷属支援は配下にいるものを強化するスキルだと思われマス。なので支援魔法に補正がかかるものではないのデスよ」


もしかしたらとは思っていた。スキルの名前が隷属だし。

今まで一緒に行動していた勇者に補正が掛からなかったのは俺に隷属しているわけではないからだろう。むしろ俺が隷属してたんじゃないだろうか。

魔物のテイムは試したことがなかったな。

夜須が悪即斬よろしくエンカウントしては倒していたから試すこともなかった。人に対してなんて使おうと思ったこともない。


「つまり俺は自分で戦うよりは魔物をテイムして育てるテイマーってことか?」


「その認識で大丈夫かと。魔物に限らず人間も含みマスが」


「奴隷を作る趣味はない」


さっき馬車で見ただけでも気分が悪かったんだ。奴隷にするなんて俺の選択肢にはない。


「なにも新しく作る必要はないでショウ。ここにたくさんおりマスので」


「断る。というか俺になにをさせる気だったんだ。奴隷の量産なんて絶対しないからな」


「そんなことをさせるつもりはございませんヨ。アズマサマは当商会が奴隷だけ扱ってるとお思いでしたか?」


「違うのか?」


「アズマサマのお話しを酒場での取引中に聞いたとお話ししたので気づいておられると思ってマシタ。うちはなんでも手広く取り扱っておりマスよ。食品はやっておりませんがネ」


人を小馬鹿にしたように笑う。

実際馬鹿にされているのだろう。俺も酒場の話は夜須のことしか覚えていなかった。


「…そうだったな。だがユニークスキルを見て決めたと言っていただろう。ならば俺にやらせるのは奴隷関係だろ」


「いかにも!御明察でごさいマス」


腹立つなぁ。


「アズマサマにしていただきたいのは奴隷の教育デス。当商会は奴隷を扱っておりますがそのまま売るわけではございません。奴隷のもつ能力に合わせて教育し、より高額で買ってもらえるようにしているのデス。アナタにはその教育係をお願いしたいのデス」


「それになんの意味があるんだよ。奴隷って使い潰されて終わりとかじゃないのか」


「確かにそういった目的で購入される方もたくさんおりマス。そうデスね。当商会は奴隷を売るというよりは労働力を売ると言った方が正しいかもしれません。例えば戦争で傭兵としての奴隷。娼館で働くための奴隷。料理人として雇うための奴隷。などの目的に合わせた奴隷を売っているのデス」


「そして販売方法も他とは違いマス。だいたいは奴隷本人を確認して購入を決めて頂きマスがうちは先にお客サマの要望をお聞きしマス。そして要望に合わせた奴隷を選び教育したのちにお客サマへとお売りするのデス」


…たしかに俺の思ってる奴隷とは全然違うな。というかむしろ人材派遣会社みたいだ。


「なるほど。で、それが俺のユニークスキルとなんの関係があるんだ」


「主に隷属支援の方になりマスがその効果に期待しているのデスよ。教育にかかる時間が短縮できそうなので」


どうなんだろうか。

俺自身このスキルを使ったことがないからウェルズの求める結果を得られるかはわからない。


「お前の思惑通りに行くとは限らないぞ。それでもいいのか?」


「大丈夫デス!物は試しと言いマスしやってダメなら他の方法を考えてみればいいんデス」


「そうか。俺の利になるってのは雇われて金を稼げるってことか」


「概ねその通りデスよ。もちろん当商会にもメリットはございマスので気に病む必要もございません」


俺が気に病んでいるのはお前に騙されていないかどうかの一点なんだがな。


「わかった。どうせ行くアテもない。今後の身の振り方を考える金と時間を稼ぐまではこの商会で働かせてもらう」


「そう言って貰えると思っておりましたヨ。よろしくお願いしマスネ」


そう言って手を差し出してきた。

俺も手を出し握手をする。

けどコイツのニヤけ面だけはやっぱり信用できなかった。

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