4.鑑定スキルはレアスキル
「こちらにおかけくだサイ。ただいまお茶を用意しマスので」
怪しさ満点の奴隷商人に言われるがままソファに座る。
誘いに乗ったからと言って警戒を解いたわけではないが応接室で立ったままなのも落ち着かない。
俺が座ると奴隷商人は使用人に指示を出し俺の向かいに座った。
そんなに待つこともなく指示を受けた使用人がお茶を俺と奴隷商人の前に置き、一礼してから部屋から去っていった。
どこぞの貴族みたいなやりとりだ。
「さて、お誘いを受け入れていただきありがとうございマス。改めましてワタシはウェルズと申しマス。よろしくお願いしマスね、支援の勇者サマ」
そう言って笑みを深めて自己紹介をした。
「あぁ。俺のことは知ってるようだが改めて名乗らせてもらう。吾妻恭介だ。それと支援の勇者と呼ぶのはやめろ」
「そうでした。勇者サマは勇者サマじゃなくなられたのでしたネ」
カチンとくる物言いだったが間違っていないため何もいえない。不快感を隠すこともしないが。
「ではアズマサマと呼ばせていただきマス」
「頼む。それで?なんで俺が勇者パーティを抜けたと知っていた。さっきは今は話せないと言っていたが誘いに乗ったんだ。今なら話せるだろ」
「そうデスね。ではお話ししましょうか。単純な話デスよ。聖剣の勇者サマが酒場で大きな声で話していたのを聞いただけデス」
「…は?」
え、それだけ?
なんか特別なツテとか道具があったわけでもなく?
「王都の酒場で積荷の取引をしていたらきこえてきましてネ。かなり上機嫌でお仲間たちと飲んでおられましたし、酔いもあってかなりの声の大きさでした。あの場にいた者はほとんど知っていると思いマスヨ?」
「…マジかよ」
警戒していたのはなんのためだったのか忘れるほどのしょうもないオチだった。
というか夜須の奴、飲んでハイになるほど俺を切れたことが嬉しかったのか。
不思議と怒りは湧いてこなかった。ただただ情けない気持ちになっていく自分が嫌になる。
「そんなに落ち込まないで下サイ。アズマサマは戦闘に向いていなかったデスが支援には特化していたじゃないデスか。アナタはその使い方を理解しておられないだけデス」
「理解していないわけがないだろ。支援系のスキルで今まで勇者としてやってきて役立たずの烙印をいただいたんだ。力になりたくて必死に研究もしたんだ」
置いていかれたくなくて、少しでも役に立ちたくて必死になった日々を思い出す。しかしどれも身を結ぶことはほとんどなかった。魔法もろくに使えないのだ。支援魔法数回で魔力が切れてしまう。魔力の量は本人の素質に大きく左右される。俺には魔法の才能はなかった。
「いえいえ、理解されてまセン。アナタのスキルは支援魔法で真価を発揮するわけではないのデス」
「…どうゆうことだ。というか俺がなんのスキルを持っているのか知っている素振りだな」
「知っていますヨ?先程見させていただきましたから」
なんだと?
保有するスキルを確認できるのは本人か高レベルの鑑定魔道具かスキルのみだ。
この商人が持っているとはとても…
「鑑定スキルで」
持ってんのかい。しかもスキルが見えるほどの高レベル。
俺たち召喚勇者は全員持っていたがレベルはみんな1だった。
鑑定スキルは知識が多いものに稀に発現するらしい。しかし詳しい条件もわかっていないし基本持ってる人はほぼいない。鑑定スキルを持っていると嘘をつき詐欺が横行したため大っぴらに所持していることを明かすこともできない。
「なんで持ってるんだ。かなりのレアスキルで保有者はいないに等しいと聞いたぞ。それにそれを信じろと言うのか?」
「なんでと言われましても。持っているから持っていると言ったまでデスよ?なんならアズマサマのステータスなどのご説明をしましょうか?」
「…言ってみろ」
そういって俺は自分のステータスを表示させた。これが見えるのは本人かもしくは許可を出した者だけだ。当然今見えるのは俺だけである。
「ではご説明しまショウ」
ちなみに現在の俺のステータスはというと
レベル:13
職業:無し
HP:2000 MP:300
STR:25 DEX:40 VIT:18 AGI:30 INT:32
保有スキル
剣術Lv1 弓術Lv2 索敵Lv3
火属性魔法Lv1 風属性魔法Lv1 支援魔法Lv2
言語理解Lv5 鑑定Lv3
ユニークスキル
隷属化
隷属支援
こうなっている。
そしてウェルズが説明した内容もこれとまったく同じだった。
召喚時に王城の魔道具で鑑定を受けた時には周囲にも見えるように映し出されたからある程度知られていても不思議ではないがそれから数ヶ月経っている。その間にレベル上がっているのだ。完全に同じ説明は当時の情報だけでは不可能だろう。
つまりはウェルズの言葉に嘘はないということだ。
数ヶ月レベルを上げてこれしか上がっていないのだから勇者をクビにもなるよな…と軽く凹む。
「信じていただけましたか?ちなみにワタシがこれから話すことに嘘はないということも断言しまショウ」
「ああ、信じよう。じゃあ俺に利のある話とやらを聞かせてもらう」
本当に嘘を言う気はないのかもしれない。しかし相変わらずのニヤけた顔が信用できない理由に拍車をかけている。だが話を聞いてから判断することにした。




