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3.奴隷商人怪しすぎ

「…人違いじゃないか?勇者がこんなとこにいるわけないだろ」


反応してしまった手前、無視すると肯定しているみたいだったため苦し紛れに誤魔化してみた。


「この世界において勇者サマを知らない人は少ないですヨ。その黒髪と黒目と顔立ち。何よりワタシが見紛うことはアリエマセン」


やはりダメだった。

この世界は異世界だけあって日本人は格段に目立つ。日本にいるアジア系以外の外人が目を引くのと同じでこの世界で日本人のような顔立ちは少ないのだ。


「…何の用だ」


誤魔化しても無駄だったため単刀直入に要件を聞いた。わざわざ声をかけてきたということはなにかしらの思惑があるのだろうと予測したからだ。


「そんなに警戒しなくてもアナタに危害を加えようだとか騙そうなんてしてませんヨ。とりあえず中でお茶でもいかがデスか?」


怪しさ満点だった。

なにより奴隷を扱うような人間だ。初見で信用しろというのは無理がある。


「パーティから弾かれてこれからどうしようかと思っているアナタにも利があるお話をしますヨ?」


「っ!?」


夜須たちと別れてまだ半日しか経っていない。

ここは剣と魔法の異世界だ。科学なんて発展しておらずSNSのような情報がすぐにわかるツールもない。

魔道具で遠距離でも連絡を取れるものがあるがかなり高価で持っているのは王族や王国騎士団、中心貴族など限られている。

それなのになぜこの男がその情報知っているのか。


「おや?この話で警戒を解いてもらおうと思ったのデスけど逆効果だったみたいデスね?」


ニヤけた顔をさらに笑みで歪めてこちらの様子を伺う。


「あたりまえだ。いくらなんでも情報が早すぎる」


「そこは当商会の極秘事項デスので『今は』お話しできかねマス。なので支援の勇者サマにはワタシの誘いに乗って下さると嬉しいのデスが」


表情はニヤけた顔のままだ。

こちらのことはほとんど把握されているような不気味さがある。


「話を聞いて俺に利があると言ったな。それはなんだ。俺にどんな得がある」


「それはここではお話しできかねマス。デスが必ず支援の勇者サマのお力になれるようなことだとお約束しましょう」


「………」


「この先のアテもないんでしょう?とりあえずお話しだけでもいかがデスか?」


怪しい…が、やはりこちらのことはほとんど知られているようだ。

実際にアテもない。

仮にも勇者として召喚された身だ。何かあっても倒すことはできなくても逃げることくらいはできるだろう。


「わかった。招待を受けよう」


「ありがとうございマス。ではこちらへドウゾ」


促されるまま俺は奴隷の運び込まれた商館へと向かった。

馬車はいつの間にか荷下ろしを終えて道の向こうへ消えていた。

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