23.思春期は照れ隠しが多い
急いで追いつこうと走っていたが思っていたよりの近いところに2人はいた。
マオが頭を抱えてうずくまっていたせいだろう。
「もっと遠くにいると思ってた。マオはどうしたんだ?」
「あ、キョウスケ様。なんか急に変な声だしてまるまっちゃった」
「〜〜〜あああああ」
重症っぽい。原因はなんとなくわかるけど。
「マオ、いきなり自分語りを始めた上に俺のことを認めてるみたいな発言をしてしまって恥ずかしさとか後悔とかのやっちまった感満載な気持ちはわかるが道の真ん中で蹲るな。邪魔になる」
「そこまで察しがいいなら触れずに声かけてくんねえかぁ!?」
「ひゃ!?」
勢いよく立ち上がってせいで近くでなだめていたタマキが驚いて尻餅をついてしまった。
「大丈夫かタマキ?おい、マオ、小さい子をいじめるなよ」
「それは謝るけど!ちょっとそっとしといて!?」
タマキを助けおこしながらマオを少ししかる。ちゃんと謝りなさい。
「キョウスケ様、別にケガとかしたわけじゃないから大丈夫だよ」
優しい子だ。こんないい子が奴隷だなんて間違ってるよな。主人俺だけど。
「まぁなんだ。お前が俺がどう思っているのかなんとなくわかったけどそれは置いといて、だ。とりあえずありがとうと言っておく」
「ああああああああ!!!!」
俺が礼を言ったのに奇声とは失礼なやつだ。まぁ俺も恥ずかしくてマオをいじりながらじゃないと礼すら言えない状態なんだけど。
「とりあえずここは目立つし邪魔になるから移動しよう。そこの喫茶店にでも入って少し休もうか」
目についた店を指差しその店に移動する。
入ったのはメニューは見たことないものばかりだが雰囲気は俺のよく知る喫茶店と変わらなかった。
「お前ら、なんか飲むか?好きなの頼んでいいぞ」
「じゃあ、オレンのジュースがいいな」
「………甘いやつ」
「はいはい」
オレンってなんだろう。メニューから予想ができないのでタマキのもの以外は店員に適当に見繕ってもらった。飲み物だけってのも味気ないので適当につまめるお菓子を頼んだ。
飲み物とお菓子を受けとり席につく。タマキはすでにお菓子に釘付けだ。
「遠慮しないで食っていいぞ」
「ありがとう!」
タマキは輝く笑顔でお菓子を食べ始めた。マオはまだダメージから立ち直っていない。
「マオ、いい加減立ち直れよ」
「なんで俺はあんなことを……キョウスケなんてなんとも思ってない……思ってない……」
ダメなようだ。
「マオ、お前は藤堂に噛み付いたことを後悔してるみたいだけどな、俺はすごく嬉しかったよ」
すごく照れ臭かったが言い聞かせるようにマオに言うと呟くのをやめてこちらを見た。
「お前とは今日出会ったばかりでお互いに何も知らない。けどそんな俺に対して藤堂に対してああ言ってくれたのは本当に嬉しかったんだ」
さっきのことを思い出して恥ずかしくなったのか俺から視線をはずしてそっぽを向いてしまった。が、構わずに続ける。
「お前が言ったように俺はあいつらの言いなりになってたし言い返せずにいたんだ。多分お前の言うとおり俺は弱虫なんだろうよ」
お菓子に夢中だったタマキも俺の話に耳を傾けていた。お菓子が口元から溢れてるぞ。
「言われてみて俺も気づいたよ。お前たち奴隷がどういった境遇にいたのかわからない俺が言うのは間違っていると思うけど多分俺もあいつらの奴隷だったんだろう」
「お前が奴隷のなにを知ってるんだ」
「なにも知らないよ。お前たちに会うまで奴隷になった人たちと接したことがなかったからな。でもあいつらのことをお前も知らないだろう?そんなお前があいつらが俺のことを奴隷だと思ってるって感じたんだろう。なら俺は多分あいつらの奴隷だったんだよ」
「………」
「言われるまで気づかなかったよ。勇者としてあいつらの足を引っ張らないようにひたすらに勉強と訓練ばっかりしてきたからな。考える暇もなかった。そのことに気づかせてくれたのはマオ、お前だよ。そしてお前が俺のことを勇者だと言ってくれたことが本当に嬉しかったんだ。この世界に来てから勇者として認められたことは多分ないんだ俺。だからお前に勇者だと言われたことで救われた」
「キョウスケ様は勇者にふさわしい人だよ。あの人たちなんかよりずっと!」
「そ、そうだ!俺もそう思っただけだ!別にお前が勇者だなんて思ってない!」
「それでもいいんだ。マオの言葉に勝手に助けられただけだから。だからありがとうな」
気持ちを出し切って我に返るととてつもない恥ずかしさが襲ってきた。ごまかすように先ほど頼んだコーヒーもどきを一気飲みした。
苦味に顔をしかめる。そんな俺を見てタマキはクスリと笑った。
「キョウスケ様が今までどんなことをしてきたか私にはわからないけど私はキョウスケ様と出会えてよかったよ。助けてもらったと思ってるよ。マオくんもきっとそう思ったからさっきの勇者のお姉ちゃんにあんなこと言ったんだと思う。そうだよね?」
ね?とタマキに笑顔を向けられて言葉に詰まるマオ。
なんかタマキさん7歳の子に見えないくらい大人なこと言ってないか。
「そ、そうだよ。けど別に勇者だと思ってるわけじゃない!さっきはああ言ったけど俺はまだお前のことを認めたわけじゃないからな!」
「それでいいよ。今日出会ったばかりだからな、それが当たり前だ。俺はお前がさっき藤堂に言ってくれたような人間になれるように頑張ってみるだけだ」
マオはもうなにも言わなかった。照れたような怒っているような微妙な顔でジュースを一気飲みするとそっぽを向いて黙ってしまった。
「マオくんは照れ屋さん」
「ちっげーよ!」
タマキに茶化され顔を真っ赤にしている。
昨日と今日出会った2人だけど今まで一緒にいた勇者たちよりも一緒にいることが心地いい。これからの俺は今までの俺とは違う生き方をしようと思った。
こいつらが俺が主人でよかったと心から思ってくれるよう、決して裏切らないように。
「んじゃ2人とも。全部食べたらウェルズのとこに戻って明日の準備と軽い訓練でもしよう」
「ふん」
「はーい。マオくん変返事くらいちゃんとしなよ」
俺たちは喫茶店を出てウェルズの商館に向かった。




