21.いざ冒険者に
ギルドの説明は俺からすればよく知っているものだった。
ランクはSからF、ランクアップは基本Dランクまでは依頼の達成数で管理、Cランク以降は昇格試験でランクアップという仕組みらしい。
そのほか緊急依頼に参加や特別な功績によるランクアップもあるらしい。例えば戦争で敵将を討ち取るなどだ。
飛び級などもあるが基本的に実力以上の実績を求められるので現実的ではないようだ。
依頼は受注数に制限はないが、期間をすぎたり失敗することによるペナルティがあるようだ。
結局は元の世界でよく見る設定のギルドだった。
「なにか質問はありますか?」
「このまま依頼を受けて行っていいか?」
「構いませんよ。依頼板に張り出されている依頼からご自身にあった依頼を選んでカウンターまでお持ちください。混んでいるので私がいるカウンターでも受付ますので」
「わかった」
「あの、先ほどは申し訳ありませんでした。驚いたとはいえ大きな声で……」
「いいよ。気持ちはわかるしわざとじゃないこともわかる。ただ変に勘ぐらないでもらえると助かるよ」
「わかりました。ありがとうございます」
そう、マオとタマキを登録した際に2人が俺の奴隷であることはこの職員にバレてしまっている。
それを見なかったことにして登録を進めてくれたのは先ほどのお詫びのつもりだったのだろうか。助かることには変わりないのでなんでもいいが。
「今後なにかありましたらサポートさせていただきたいと思います。なにかご用の際は私、リフェルにお申し付けください」
「わかった。これからよろしく頼む。じゃあ2人とも、できそうな依頼があるか見にいこうか」
「はい!」
「やっと終わりか。待ちくたびれたわ」
マオの憎まれ口はどうにかならんものか。反抗期って難しい。
出ている依頼を確認するために登録手続きをしていた部屋を出る。手続き前の騒ぎはおさまっていた。
「さて、どんな依頼があるのかな」
「俺、魔物と戦えるやつがいい!この武器使ってみたい!」
「い、いきなりですか?私はまだ魔法使えないのでちょっと怖いです」
マオはもともと棒術スキルを持っているし問題ないだろうがタマキは心配だな。本人もそれは理解しているのか及び腰だ。
「今日は時間もないからすぐ出発するわけじゃないからな」
「わかってるって!なぁキョウスケ、ゴブリン退治とかないのか?」
「今はないみたいだな。あっても受けないが」
「なんでだよ!」
「ゴブリンを舐めるな。あいつら1体1体は弱いが数が多い。こんな駆け出しだらけのパーティで気軽に受けたら数の暴力に負ける場合だってあるんだぞ」
実際勇者としてゴブリンの集落を潰した時は数が多くて押し切られそうになったことがある。
その時は神城の魔力のゴリ押しによる広域殲滅でなんとかなったが俺たちのパーティだと力押しなんてできるわけもない。
「だから最初はスライムとかせいぜいジャイアントラットくらいじゃないと最悪死ぬぞ」
「ちぇ、わかったよ。じゃあ何受けるんだ?」
依頼をざっと見る。
出ている依頼の中で俺たちが無理なくできそうなのは採取系依頼だろうな。あとは討伐系でさっき言った魔物あたりがあれば……
「お、ちょうどいいのがあるな。これにするか」
手に取ったのはスライムとキラーラビットの討伐依頼。キラーラビットは名前こそ穏やかじゃないが実際は畑を荒らすとかその程度の魔物だ。
しかし動きがすばやいため初心者が仕留めるにはなかなか難しかったりする。
「結局スライムかよ」
「文句いうな。死にたいなら止めないが」
「うっ…わかったよ」
「キョウスケ様、私戦えないです……」
「大丈夫だ。魔法は教えてやるし戦闘がどんなものか知るだけでもいい経験になるから。それで怖くて戦えないっていうなら他のことを頑張ればいい」
「わ、わかりました」
「けど怖いというならもちろん待っていてもらっても構わない。タマキの同意を得ずに装備を買ったりギルドに登録してしまったのは悪かった。無理強いする気はないから嫌ならはっきりと言ってくれていいよ」
まだ小さい子に冒険者として活動させるのは実はものすごく抵抗がある。実際ギルドでも冒険者として活動できるのは成人してからが望ましいとされている。登録できないわけではないがほとんどが止められる。
ウェルズの仕事もあるからとここまでタマキを連れてきてしまったが嫌ならウェルズに説明して他のことに回してもらったほうがいいだろう。
「でも、戦わないとキョウスケ様と一緒にいられなくなるんじゃ…?」
「常に一緒ってわけにはいかなくなるけど会えなくなるわけじゃない。魔物と戦うのは危険だからタマキの気持ちを優先するよ」
「一緒にいられないのは嫌!怖いけど頑張る」
気合をいれるように拳を握る。この仕草すっごいかわいい。
この子を危険な目に合わせないよう頑張ろうと決意し、頭を撫でてやる。
「なぁ、キョウスケ決まったならさっさと行こうぜ」
マオは待ちきれないのかそわそわしていた。今日は行かないって言ったろう。
俺は張り出してあった依頼書を剥がしてリフェルのところへ持っていき無事依頼を受けることができた。その時に出発は明日にすることも一応伝えておいた。
「よし、じゃあ1回商館に戻るぞ」
「おう」「はい」
ギルドを出ようと振り向いたその時、俺の心をえぐる声が聞こえてきた。
「おいおい、勇者をやめたら今度は保育士にでもなったのか?元支援の勇者様よぉ」
声の主に目を向ける。本当は見なくてもわかる。
そこにいたのは夜須、神城、藤堂の3人だった。




