17.見ていてくれる人はいる
「はー。パーティ出てから1日もたたずにそんなことになってるとはねえ」
一通り経緯を説明し終えると呆れたような顔でため息をつくレイア。俺だってこんな展開になると思ってなかったよ。
「にしてもウェルズ商会に厄介になるとはねえ。あそこ、会長の見た目と同じく胡散臭いのよね。あんたホントに大丈夫なの?」
「わかんねえ。けど行くあてもないから仕方なくって感じだ」
「王様に頼んで元の世界に帰るって手もあったんじゃないの?」
「残念ながらそれは無理だな。この世界に来た時に断言されてる」
俺たちが異世界人だというのは召喚されて数日後に明かされている。国が大々的に魔王討伐パーティとして宣言したからだ。
召喚された時にいろいろと説明を受けたがやはり出た質問は元の世界に帰れるかどうかだった。
答えはもちろん無理。テンプレ展開はどこまで行ってもテンプレだった。それを聞いた藤堂はかなり狼狽えてたな。俺は元の世界になんの未練もなかったためショックはほとんどなかった。むしろワクワクさえしていたな。
まぁ帰る手段があったとしても絶対に帰らないと思う。向こうに俺の居場所はないんだ。家にすら。
「とまぁそういったわけで奴隷を連れて歩くことになった」
「1番堅実に勇者やってたやつが奴隷使いになるとは。世も末ね。なんでパーティ抜けたのよ?」
「抜けたくて抜けたわけじゃない。俺はあいつらからすると役に立たない足手まといって事で追い出されたんだよ」
「はぁ!?なんで!?」
「なんでもなにも言葉通りだろ。戦闘では支援しかできない。できる支援も大したことない。いるだけで食費やら宿代が無駄に1人分かかる。だからいない方がマシだとさ」
言ってて悲しくなってくるぞちくしょう。
「意味わかんない。あんたが今までやってた領主との調整とか援助の交渉とか索敵とかどうすんのよ」
「知らねえよ。聖女様がやってくれるんじゃねえのか?」
レイアの言う通り俺は戦闘で役に立たない分他のところで役に立とうと頑張っていた。いくら国が召喚して公的に勇者だと発表していても他の領地の都合もあって無条件で援助を受けられらわけじゃない。
そのため、別な領地での活動許可や援助のお願いなどの交渉はすべて俺がやっていた。
バイトで管理職みたいなこともやった経験のおかげか他の勇者たちよりも上手くできていたのだ。
ただ1人でやっていたわけではなく、魔導の聖女と呼ばれる神城柚月と一緒に交渉することがほとんどだった。
神城は長く綺麗な黒髪に整った容姿も手伝って勇者ではなく聖女と呼ばれていた。
宗教信仰的にはなんの繋がりもないはずなのにこの世界の宗教関係者とかは神城がいるだけで話がトントン拍子に進むことも多かったので神城と2人で行っていたのだ。
「あの聖女様に腹の探り合いができるとも思えないけどねえ」
「まぁ良くも悪くもまっすぐな奴だからな。向いてはいないだろうよ」
レイアの言う通り神城は交渉には向いてない。性格がまっすぐすぎて交渉も直球勝負だった。そのため軋轢が生まれる場合もあった。その度に胃が痛くなったもんだ……
「まぁ俺がいなくても回るし元々1人でやってたわけでもないんだ。いらないと判断される要素にはなるだろ」
「…そう。あんたが納得してるならそれでいいわ。ただ、あんたが頑張ってたことを知ってる人はいるってことはわかっておきなさいよ。あたしだってその1人なんだからね」
納得はしているわけではない。今の俺の気持ちは諦めと落胆だ。この世界でも変わらなかった自分に対する失望の気持ちだ。
だが、そんな俺を見ていてくれた人もいることを今日初めて知った。レイアの言葉のおかげで俺は少しだけ自信を持つことができるかもしれない。
「さ、話はこんくらいにして戻りましょうか。あの子らもそろそろ選び終わってるでしょうし」
「そうだな。……ありがとうな」
「いいっての。改めて言われても困る。あんたはあたしのお得意様でいてくれたらそれでいい」
少し照れたように言ってレイアは先に店に戻っていった。
心が少し軽くなった気がする。レイアに感謝しつつ俺も後を追った。




