16.そうだ装備を買おう
「さて、今後の話をしまショウ」
ウェルズの書斎に戻ってきて一息ついたところでそう切り出してきた。
「ではお三方には冒険者登録していただきマス。そして教育がてら冒険者としてのランクをあげていただきマス」
………
「他は?」
「それだけデス。あ、報酬の半分は商会に入れてください。それとは別に給料は出しマスので報酬の半分はだいぶ安い方だと思いマスケド」
「まぁ給料もらえるからな。文句はないけど逆に5割もらっていいのか?」
「そのお金で3人分の装備を揃えてもらうので優しくはないと思いマスヨ?」
待て、それはキツイ。確かに優しくないわ。
ウェルズのニヤけ面がいつもよりもムカつく気がする。
「まぁわかった。なんとかする」
「ではそれでよろしくお願いしマス。2人がある程度育ったらまた別な仕事をお願いすると思いマスので」
やることも決まればさっさと行動することとしよう。
俺はマオとタマキを連れて冒険者ギルドへ向かうことにした。
****
王都の街並みを歩く。俺は1日ぶりだが他の2人は珍しいのかきょろきょろと周りを見ている。
「はぐれないようについてこいよ?」
「わかってる(ます!)」
2人揃っていい返事だった。が、視線は変わらずあっちこっちに流れている。
「返事がいいだけじゃないかまったく。装備揃えるついでに観光する時間作ってやるから」
そういうと2人とも嬉しそうに目を輝かせていた。
タマキはわかるがマオもか。こいつ案外わかりやすいな。
今回買う装備はタマキとマオの分だ。さすがに今着ているボロ布のまま登録させるどころか街を歩かせるのも躊躇する。
というか俺が鬼畜にしか見えないから一刻も早く買わなければならない。
出る直前にそれを思い出しウェルズに打診したら普通に商品を見せられた。到底手の出る金額じゃなかったので街の武具屋に行くことになったのだ。
「ほらさっさと行くぞ。周囲の視線が痛いんだ」
俺より小さな子をボロ布を着せて連れて歩いているので刺さるような視線が突き刺さる。俺はどこぞの変態野郎みたいな趣味はないのでこの状況をさっさとどうにかしたい。
足早に向かった先は俺が召喚されてから初めて行った武具屋だった。装備を更新するときはいつもここを使っていた。
夜須たちは最初こそ俺と同じくこの店で買っていたが俺との関係が悪くなるにつれてここを利用しなくなった。
まあそれはいい。思い出してもいいことはないし。
「いらっしゃーい」
「おう、お邪魔するよ」
「キョウスケじゃん。久しぶり!今日はどうしたの?」
出てきたのはこの店の看板娘のレイアだった。親父はきっと工房にいるんだろう。
「こいつらの武器と防具を買いにきたんだ。予算はあんまりないから初心者用装備だけど」
「はいはーい。……ちょっとこっちきなさい」
「……はい」
なぜ呼ばれたのかは察しがついている。笑顔が怖いぜ。
「そっちの棚が初心者向けの装備だからそこらへんから自分の気に入るものを選んでるといいよー。あたしはこいつと話をしてるから」
「お、おう」
「キョウスケ様大丈夫ですか…?」
マオはちょっと引いてるしタマキは心配そうに俺を見ている。
俺の顔が引きつっているからだろうか。
「大丈夫だ。言われた通りの棚でほしいもん選らんでてくれ」
2人はこちらを気にしてはいたが店の中のものが気になるのか心配もそこそこに装備を見に行った。
そっちに興味津々なのはわかるが俺のことを助けて欲しかった。
「で、あの子らはなんなのよ」
「な、なかまかなぁ?」
「ほーん、あんなボロ着せてるのが仲間とな」
「ちょ、ちょっと魔物に装備を壊されてさぁ」
「なるほどー。それで左肩になんか呪いでも受けたの?」
笑顔が怖いです。許してください。
「あぁ、もう勘弁してくれ。言いたいことはわかるけど流してくれよ」
「さすがに奴隷連れてたら言いたいことも出てくるわ。あんた仮にも勇者でしょ。いくらパーティ抜けたからって奴隷を仲間にするほど人望ないわけじゃないでしょ」
「いやまぁいろいろとあって。つかなんで知ってんだそれ!」
「今朝国から発表があったのよ。訳あって支援の勇者はパーティを離脱したと。その場に他の勇者たちもいたからすんなり受け入れられてたわよ」
「いくら勇者がいたとはいえすんなりはちょっとショックだわ……そんなに俺ってダメだったんかなぁ」
大衆にも役立たず認定されたようなものだ。ちょっととは言ったがだいぶ心にきていた。
「いやそれはないでしょ。あんた一部には他の勇者より支持者いるわよ」
「いいんだ…そんな気休めはいらんよ…」
「そんな卑屈にならなくても……まぁそれはいいわ。どうせ説明してもあんたのネガティブ思考だと素直に受け取らないだろうし。そんなことよりあの奴隷のことについて説明しなさいよ」
俺そんなネガティブなわけじゃないんだけどなぁ。まぁ素直に受け取らないのはその通りだろうな性格上。
レイアは腕組みをしてこちらを睨みつけている。説明するまで解放しないという強い意志を感じる。
俺は諦めたように説明を始めたのだった。




