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9.小さい子はよく食べよく寝るべきだ

「ごちそうさま」


シンプルな塩野菜スープはちょっとアレだったからすこし炒めて香ばしさをだしてみたが悪くはなかった。

けどできるなら鶏ガラか胡椒はやはりほしい。

金がないから当面先になるだろうがそのうち手に入れたい。あとは米、日本人のソウルフード米。


「さて、片付けも終わったしあとは寝るだけなんだけど」


テーブルに目を向ける。

そこにはつっぷして眠るタマキがいた。途中までは料理を観察していたが煮込む段階で飽きたのか気づいたら寝てしまっていた。

口を半開きにして薄茶色の紙をテーブルに広げて寝息をたてている。

あー、よだれがたれそうだ。


「子供に夜更かしはやっぱよくないな」


寝るならしっかり布団で寝てほしいがあいにくタマキの部屋を俺は知らない。

かといって放置するわけにもいかない。


「部屋に連れていくしかないか…」


ベッドが一つしかないのになぁ。

せっかくのいいベッドだが今日は硬い床で寝ることになりそうだ。


寝ているタマキを起こさないように気をつけながら抱き上げる。


「…軽いな」


小さい子だから軽いのは当たり前だろう。だがそれだけではない。

体に肉がついていないのだ。7歳くらいの年頃にしてはずいぶんと骨張った体をしていた。

体重もおそらく平均よりもだいぶ軽いのだろう。


…奴隷だからなのだろうな。フィクションしか知らない俺の想像でしかないが奴隷なんてまともな飯も食えないだろうし主人に迫害されることだってあるのだろう。

ボロ布の隙間から見えている痣のようなものがそんな想像に拍車をかける。


この世界にもやっぱり人種差別はある。俺たちがいた世界でも黒人差別はいまだに根深い問題としてニュースで取り上げられていた。

日本人の俺からしたら見た目は肌の色くらいしか違いがわからないが人間としての形は俺たちと変わらない。それでも差別されていたのだ。

見た目が違う獣人などはより迫害されやすかったりするのだろう。


「自分と違うものを受け入れられないのはわからんでもないけどな。こんな小さな子まで被害を受けるのは気分が悪い」


同じ日本人同士でも生理的に受け入れられない人もいるのだし。

かといってこの世界では奴隷売買はあたりまえに行われているし法で規制されているわけではない。

俺だけが声を上げたところで今の状況が改善されるわけがないのだ。


「やめよう。考えても仕方ない」


善人になるつもりもない。俺にできることなんてほとんどないのだ。

手に届く範囲だけでも助けたいなどと傲慢なことを考えることも実行することもないだろう。


「さっさと部屋に帰って寝よう。明日は早くからウェルズのやつから仕事の話を聞かなきゃいけないし」


今まで考えていたことをまるっと放り出して部屋に向かって歩き出した。

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