表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/107

烈風焔刃

  アイルたちがスキア・サラマンダーの討伐に向かう少し前。

  烈風焔刃の拠点の、だだっ広い一室にリンシアはいた。彼女の目の前には、豪奢な机に脚を乗っけるという、悪役さながらの座り方をするレイリーが。他に誰もいない。


  「で、俺たちの親友はどうだったよ?」


  「何の魔法も使えないみたい。少しも進歩してなくて、非力で無価値ないつも通りのアイルだったよ」


  リンシアは努めて皮肉っぽい微笑を浮かべた。


  「おいおい、随分ひでえ言い方だな」


  言葉と裏腹に、レイリーは至極愉快そうだ。


  「だってあいつ、初級の中でも一番レベルの低い依頼を受けて、それも失敗だって。どうして冒険者なんてやろうとしたのか意味不明」


  「相変わらずの雑魚っぷりってわけか。昔を思い出すよ」


  「ほんと、昔のまんまだったよ……」


  リンシアはふと、自分がレイリーではなく、遠くの何もない空間を見つめていることに気づいた。

  突如、その空間だけがぐにゃりと歪み、全く別の情景へと変わった。王都の一画。先ほど会った少年が、憂うような瞳でこちらを覗いている。彼女は反射的に痛む腕を抑えた。


  「だから…… これ以上あいつと関わる必要はないんじゃない? 何か有用な情報を持ってるわけでもないし、ただの時間の無駄だと思うよ 」


  「いや、それは違うな」


  レイリーの声は冷淡なものに変わっていた。


  「あいつは曲がりなりにも黒魔術の適性者だ。それが何を意味しているか、お前にもわかるだろ?」


  「…… アイルを、国に突き出すの?」


  「黒魔術は禁術の中でも最も危険な魔法だ。 俺たち烈風焔刃が捕らえたとなれば、他のギルドと圧倒的な差が生まれる。俺たちの一人勝ちってわけだ」


  「でも、あいつは魔法を使えないんだし、証拠がなくて国は動かないんじゃない? もう百年くらい黒魔術の適性者が出たことなんてないらしいし、世間では存在自体が眉唾ものだよ」


  「わかってないな」とレイリーは肩をすくめる。


  「あいつが、半年経った今、どうしてわざわざ王都に来て冒険者になったと思う?」


  「えっと、お金に困ってたから…… ?」


  「まあ、それが一番だろうな。だが、金額に拘らなければ、他にも金を稼ぐ方法なんて幾らでもあるはずだ」


  言葉の真意が見えず、リンシアは無言で続きを待った。


  「要は、心のどこかで多少の自信があったから、冒険者という選択肢がでてきたんだ。それでもショボい依頼を受けたのは、魔法のことがバレないようにするためだろう」


  「じゃあ、アイルは……」


  「黒魔術を使えるようになった可能性がある」


  リンシアは絶句した。

  まさか、あのアイルが本当に黒魔術を習得したというのだろうか。そんな様子は一切見られなかった。

 

  「お前は引き続きあいつの行方を追え。そして、何か掴んだら逐一俺に報告するんだ。無能だったあいつも、最後くらい役に立ってもらわないとな」


  「わ、わかった……」


  「ああ、それと」


  「なに?」


  「お前、さっきからまるでアイルを庇ってるような感じだったが、俺の勘違いだよな?」


  レイリーの鋭い視線には、糾弾するような光が満ちていた。間違いなく彼はリンシアの事を怪しんでいる。いや、それは既に確信に近いのかもしれない。


  「うん、勘違いだよ。あんな奴、庇ってどうするの」


  リンシアは震えそうな声を必死で抑えた。

  どうなるかと気が気でなかったが、意外にもレイリーはすぐに折れた。


  「そうか、ならいいんだが…… お前は一度ミスをしてるというのを忘れるな。次はないからな」


  「うん……」


  幼馴染で半年前までは、一緒になってアイルをいじめていたレイリー。

  しかし、ここにいるのはあの時の彼ではない。今の彼は狂った野心に汚染され、歪な怪物へと変貌を遂げていた。自分がのし上がるためなら手段を問わない。使えないものは平気で切り捨てる。それが今の彼だ。

  確かに昔からそういったきらいはあった。だが、彼をここまで変えたのは、全てあの男が原因だ。

  リンシアの後ろで、扉がノックされる音が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ