表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/107

タレスの容態

  王都への道は思った以上にきついものだった。あの黒魔術を使ってから酷い倦怠(けんたい)感が付きまとっていた。刺された腕の痛みを鈍くするほどに。

  やっとの思いで王都へ到着する頃には、日が既に西の空へと傾いていた。その間、幸いにも他の誰とも鉢合わせになることはなかった。街の様子も、特に慌ただしい様子は見受けられない。

  そして、最大の難点であった、タレスをどうするかという話。常識的に考えて、衛兵に突き出すのが最善だろう。だが、あえてアイルは彼を医療施設へと運んだ。


  「何があったんですか!?」


  驚く施設の女に、「依頼の途中で魔物に襲われました」とアイルは適当な嘘をでっちあげた。状況が状況なだけに、特に追求することもなく、女はタレスを奥の部屋へと運ばれていった。

  それから十分ほど。


  「タレスさんの容態は?」


  戻ってきた女に、アイルは聞く。


  「結論から言いますと、とりあえず命に別状はありません。二、三日療養すれば、元通りの生活に戻れます」

 

  女の言葉に、アイルは素直に喜ぶべきか迷った。そんな彼の様子を見て、女は怪訝(けげん)そうに眉をひそめたので、彼は慌て咳払いをする。


  「良かったです。酷い怪我だったので、どうなるかと……」

 

  「いえ、衰弱していた原因は怪我というより、マナを許容限界を超えて使用したことです」


  女の意外なセリフを聞いて、アイルの頭に疑問符が浮かぶ。


  「それってどういうことですか? タレスさんの腕は……」


  「腕ですか? ここへ来た時には、タレス様の腕の傷は完璧に塞がっていましたよ」


  「え?」


  アイルは何か聞き間違いをしたのかと思った。


  「怪我といえば、背中に局所的に軽い火傷を負っていたくらいですが、これも重傷とはいえないですし……」

 

  「いや、でも……」


  そんなはずはない。

  崖から落下する時、アイルはタレスの腕を燃やした。それから、再び彼が現れるまで一時間もかかっていないはず。その間に、回復魔法をかけたということだ。

  タレス自身がそんな魔法を使えたというのか? それとも……

 

  「大丈夫ですか?」


  いつのまにか、女はアイルの顔を覗き込んでいた。

 

  「大丈夫です。それで、マナの許容限界を超えたというのは?」


  「はい。通常、マナは毎日一定量が体内で生成、蓄積されます。しかし、この全マナを使い切ることはできません」


  「ああ。確か、マナの貯蔵量が一割ほどになると、ストッパーがかかるんですよね」


  幼少の頃から魔法の能力が皆無だった分、アイルは勉学に励んできた。こういう知識なら持ち合わせている。


  「その通りです。これは、マナが完全に枯渇すると、人体に影響がでるからと言われています。しかし、タレス様の場合、マナが限りなくゼロに近い状態でした。こんなこと普通できません」


  「じゃあ、どうしてタレスさんは?」


  「わかりません。こんな症例めったに見ないものなので」


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ