親切な少年
アイルたちが振り向くと、そこにいたのは彼らと同い年くらいの少年だった。癖のある白い髪の毛は真ん中で分けられ、病的に白い肌には、炎のように赤い目がひときわ目立っている。
「知ってる人?」
ライラに聞かれる。
しかし、アイルには思い当たる節がなかった。
「いや…… あの、どちら様でしょうか?」
「僕は…… ライネスと言います。あなた達と同じ駆け出し冒険者です」
ライネスは明るい声色で自己紹介をした。名前を言うまでに、妙な間が空いた気がする。
だが、今はそんな些事、気にしている場合ではない。
「あの、この金貨は……?」
「登録料が払えなくて、困っているんでしょう? どうぞ使ってください」
ライネスは柔らかな笑みを浮かべた。
「銅貨二枚なんですけど……」
受付嬢がうんざりしたようにツッコミを入れるが、アイルの耳には届かない。
「いいんですか? いつ返せるかわかりませんよ?」
「返す必要なんてないですよ。それはお近づきの印です」
お金絡みの話など、普通なら断ってしまうものだ。しかし、このままでは今日の食べ物にありつけるかわからない。藁にもすがる思いだった。
「それなら、お言葉に甘えて……」
こうして、アイルとライラは冒険者として登録することができた。記入事項に魔法適性の欄があったらどうしようかと思ったが、幸い、名前と年齢だけ書けば良い簡単なものだった。
「これで登録は完了です。これより、アイル様とライラ様は初級冒険者として、この施設の初級依頼を受注可能になります」
「よかったね」
「ああ」
アイルはライネスの方を向く。
「ありがとうございます、ライネスさん。おかげで助かりました」
アイルに合わせて、ライラもぺこりとお辞儀する。
「いえいえ、このくらい大した事じゃありませんよ」
ライネスは手を振り、軽い感じで答える。まさに好青年という感じだ。
「それで……せっかくですから、みんなで依頼を受けませんか?」
アイルは悩んだ。
あまり他の人と行動することは避けたかった。黒魔術の事がバレて、王都に通報されれば、それで終わりだからだ。だが、施しを受けておいて、この誘いを無下にはできない。
彼がライラの方をちらりと見ると、彼女は小さく頷いた。
「……わかりました。ですが、俺たちは魔法に自信がないので、簡単な依頼を受けたいんですが、それでもいいですか?」
「構いませんよ。僕なんて何の魔法適性もない人間ですから」
そう自虐して、一人笑うライネス。
どうやら、彼は前までのアイルと同じような境遇らしい。
「ということで、魔法を使わなくても済むような依頼はありますか?」
「魔法を使わない、ですか……」
もはや受付嬢はあからさまに面倒くさそうな表情をしている。
「あ、一つありました。採取の依頼が。あちらの方と合同になりますけど、よろしいですか?」
受付嬢が手で示した方には、一人の男が立っていた。




