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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第89話】「待つ者たち」

【第89話】「待つ者たち」


ギャラクティック・レジャー・コリドー → ヴェルドラコン行き民間航路


04:30~12:00


  パノラマウィンドウの向こうに広がる空間が、ゆっくりと変化していく。


  星々が突然明るくなったわけではない。


  これまで不規則に散らばっていた光点が、明確な航路に沿って動き始めたのだ。


  貨物船は商業コリドーを進み、民間旅客船は互いに安全な距離を保ちながら航行している。その中には、航行システムが自動的に航路上の優先権を与える外交用トランスポンダーを搭載した大型船もあった。


  そして、そのすべての中を――ASTRAEON VELORIAは静かに進んでいた。


  全長8,600メートルの巨体は、まるで恒星間航行すら可能な豪華都市そのものだった。


  展開された兵装塔はない。


  左右を戦闘艦隊が護衛しているわけでもない。


  外観に目立った変化もない。


  しかし、ヴェルドラコン銀河帝国の領域へ近づくにつれて、その船の存在を認識し始める航行システムは、少しずつ増えていた。


「キャプテン、すでにヴェルドラコンの行政領域へ入りました」


  グランド・サロンの前方から、セラフィエルの声が響いた。


  いつものように船のシステムを通して話しているのとは違い、今のセラフィエルは自らの肉体を持って、その場に立っている。


  長い髪が、空調システムから流れる風に合わせてわずかに揺れていた。その手には、ラグジュアリーキッチンで淹れたばかりの熱いコーヒーが入ったカップがある。


  ソファに座っていた紬は、携帯端末の画面から顔を上げた。


「もう入ったのか?」


「はい。領域境界を正式に検知しました。民間航行システムも、ギャラクティック・レジャー・コリドーからヴェルドラコン民間交通ネットワークへ移行しています」


「規則に変更は?」


「いくつかあります」


  セラフィエルはカップをテーブルに置いた。


「ヴェルドラコンでは、先ほどまでの観光領域よりも厳格な船舶の本人確認が実施されています。船舶登録、キャプテンの身分、乗船者数、兵装申告、航行目的、そしてこちらに送られてきた護衛要請について、帝国側のシステムによる確認が行われます」


「当然だな」


  紬は立ち上がった。


「俺たちは彼らの領域へ向かっている。何も確認しないほうがおかしい」


「私もそう思います」


  それまで窓際にいたレアも近づいてくる。


「じゃあ、今度こそ本当に帝国へ入ったってこと?」


「そういうことだ」


「オーレリアのいる帝国?」


「レア、それはそういう言い方をするものじゃない」


  別の席に座っていたランが注意する。


「オーレリアは帝国の所有物じゃない」


「分かってるよ」


  レアは狐耳を動かした。


「私が言いたかったのは、オーレリアの故郷ってこと」


「だったら最初からそう言えばいい」


「朝っぱらから真面目すぎるんだよ」


「あなたが朝っぱらから気楽すぎるの」


  航行データを確認していたヴェスペラが、わずかに笑う。


「二人とも相変わらずね」


「私たちは変わる必要なんてないから」


  レアが即答した。


「これを一貫性っていうの」


  廊下のほうからエンジニアリング用タブレットを持ってきたカリスタが、鼻を鳴らした。


「一貫性って、船が新しい領域に入るたびに言い合うことを指すなら、本当に一貫してるわね」


「おい」


「何?」


「私は言い合ってない」


「さっき言い合ってたでしょう」


「議論よ」


「火災報知器みたいな声量で?」


「カリスタ」


  その会話がヴェルドラコンとはまったく関係のない方向へ発展する前に、紬が手を上げた。


「まだ目的地には着いてない。必要のないことに体力を使うな」


「私はただ事実を説明してるだけ」


  カリスタは淡々と答える。


「そして、その事実が痛い」


  ランが笑いを堪える。


  そんな小さなやり取りの中で、オーレリアは窓から少し離れた場所に立っていた。


  ここ数分、ほとんど口を開いていない。


  その目は、外を流れていく船の光を追い続けていた。


  紬はそんな彼女に気づく。


「オーレリア」


  少女が振り向いた。


「はい?」


「大丈夫か?」


「私は……」


  オーレリアは再び外へ視線を戻した。


「たぶん、大丈夫です」


「たぶん?」


「七か月近くも行方が分からなくなっていたあと、故郷へ戻るときに、どういう気持ちになるのが普通なのか……私には分からないんです」


  部屋が急に静かになった。


  誰も、すぐには答えなかった。


  オーレリアは小さく笑ったが、その笑顔だけでは緊張を完全に隠すことはできていない。


「ここ数日、ずっと一つのことだけを考えていました」


「何を?」


「もし、すべてが変わってしまっていたら、どうしようって」


  紬は、彼女の家族がきっと何も変わっていないとは言わなかった。


  すべてうまくいくとも言わない。


  そういう言葉は、同じ立場にいない人間だからこそ簡単に口にできるものだからだ。


「変わってたなら、変わったものに向き合えばいい」


  紬の答えは単純だった。


「変わってないなら、変わってないものに向き合えばいい」


  オーレリアが瞬きをする。


「それ……すごく紬さんらしい答えですね」


「他にどうしろっていうんだ?」


「分かりません」


  その朝になって初めて、オーレリアの表情が少しだけ軽くなった。


「でも……少し落ち着きました」


「それならよかった」


  セラフィエルがカップを取り直す。


「では、朝食にしますか?」


  オーレリアが彼女を見る。


「今からですか?」


「船は、家族の問題が解決するまで朝食を待ってくれるわけではありませんから」


  レアがすぐに手を上げた。


「セラフィエルに賛成」


「あなたは食べ物の話になると、いつも賛成するわね」


「食事は重要な問題だから」


  ランが小さく笑う。


「少なくとも今回は、レアの優先順位がはっきりしてるわね」


「からかわないでよ」


「からかってないわ」


「顔がからかってる」


  紬はため息をついた。


「分かった。先に朝食にしよう」


  グランド・ダイニング・ASTRAEON VELORIAに人が集まり始めた。


  厨房とサービスエリアを担当する複数のシンセティック・パーソンが、静かに動いている。食器の触れ合う音、加熱機器の作動音、そして軽い会話が混ざり合い、数時間後に彼らを待ち受けている政治的状況とは比べものにならないほど、穏やかな朝の空気が広がっていた。


  テーブルの一角には、すでに彼らの生活の一部となっている二種類のメニューが並んでいる。


  合成食品。


  そして、オーガニック食品。


  その違いは、味だけではない。


  合成食品は栄養組成を正確に調整して生産でき、長期保存にも向いている。そのうえ大量生産が可能で、コストもはるかに低い。


  一方、オーガニック食品には本物の生体由来の食材が必要であり、維持管理、品質監視、特殊な保存環境、そしてはるかに高価な流通網まで必要になる。


  銀河の大部分において、オーガニック食品は購入不可能なものというわけではない。


  ただ、特別な理由でもない限り、一般人が毎日の食事として扱うものではなかった。


  オーレリアは、小さなオーガニックパンを手に取った。


  表面をしばらく眺めてから、少しだけ齧る。


「まだ不思議な感じがします」


  向かいに座っていた紬が尋ねる。


「どういう意味だ?」


「以前は、こういう食べ物がどこから来ているのかなんて考えたこともありませんでした」


「今は?」


「今は……こんなに簡単に見える食べ物が、私が思っていたよりずっと高価なのだと知っています」


  レアは自分の皿から合成パンを取った。


「私はこっちのほうが好きだけど」


「食べてもいないのに?」


「味はもう知ってるから」


「それは理由になってない」


「効率的」


  カリスタが合成卵をナイフで切る。


「私はレアを支持するわ」


  オーレリアが驚いたように見る。


「カリスタも?」


「朝食だけなら、オーガニックの食材なんて必要ないでしょう」


「でも、味は?」


「美味しいからって、高価である必要はないもの」


  ランがカップを持ち上げた。


「それはすごく納得できる言葉ね」


「ようやく分かってくれる人がいた」


  セラフィエルが微笑む。


「ですが、キャプテンはオーガニックメニューを選んでいます」


  紬は自分の皿を見る。


「今日だけだ」


「私は何も言っていません」


「その声の調子が、いろいろ言ってる」


「私はただ事実を記録しているだけです」


「そのほうが危険だ」


  オーレリアが小さく笑った。


  その笑い声にレアが振り向く。


「ほら」


「何?」


「少しずつ慣れてきたじゃない」


「何に?」


「私たちに」


  オーレリアは一瞬、黙った。


  それから、小さく頷く。


「……たぶん」


  誰も、その会話を無理に感情的なものへ変えようとはしなかった。


  彼らはそのまま朝食を続ける。


  時には、誰かを受け入れていると伝えるよりも、その人のために席を用意するほうがいい。


  目の前に皿を置き、いつもと変わらないように話す。


  それだけでいいこともある。


  朝食を終えると、ASTRAEON VELORIAの外の状況が変わっていた。


  セラフィエルが紬をコントロールセンターへ呼ぶ。


  レア、ラン、ヴェスペラ、カリスタ、そしてオーレリアも一緒に向かった。


  扉が開くと、宇宙空間のパノラマは先ほどよりも明らかに混雑していた。


  数十隻の船が、それぞれ異なる航路を進んでいる。


  商業用トランスポンダーを使用している船もあれば、政府関係の識別情報を持つ船もある。


  そして、その中には航行システムによって自動的に外交船として識別されている船も数隻あった。


  ヴェスペラがパネルへ近づく。


「外交船の数が増えています」


「何隻だ?」


「現在、安全圏内にいるのは七隻です」


  レアが小さく口笛を吹いた。


「七隻?」


「ええ」


「全部、私たちのため?」


「いいえ」


  ヴェスペラはいくつかの航路を指し示す。


「一部は同じコリドーを利用しているだけです」


「よかった」


  レアが息を吐いた。


「七隻全部が私たちのためだったら、私たちって有名すぎるんじゃないかって思い始めるところだった」


  紬が彼女を見る。


「まだ喜ぶな」


「どうして?」


「有名だからといって、いいこととは限らない」


  ランが腕を組む。


「特に、その評判に『傭兵』って言葉まで付いてくるならね」


「俺は『インディペンデント』のほうが好きだ」


  紬が答える。


「そっちのほうが高そうに聞こえる」


  セラフィエルが振り向いた。


「それは正式な契約料金の決め方ではありません」


「分かってる」


「残念ですね」


  セラフィエルの口元に薄い笑みが浮かぶ。


  しかし、一つの信号が入ったことで、再び空気が変わった。


「キャプテン」


「何だ?」


「ヴェルドラコン帝国交通局より、先ほど受信した帝国護衛要請が有効化されたことを確認しました」


  紬が近づく。


「護衛が来るのか?」


「もう来ています」


  メインスクリーンが切り替わる。


  複数の船が、異なるFTL航路から現れた。


  その編隊は整然としている。


  攻撃的ではない。


  各艦の間隔も正確に保たれていた。


  ASTRAEON VELORIAへ向けられた兵装システムもない。


  それでも、その数だけでヴェルドラコンがオーレリアの帰還を小さな問題として扱っていないことは十分に伝わってくる。


「俺たちが来ることを知ってたんだな」


  紬が静かに言った。


「はい」


  セラフィエルが答える。


「そして、彼らはすでに待っていました」


  数分後、外交船の一隻が通信チャンネルを開いた。


  急いだ様子はない。


  聞こえてきたのは、ただ正式な口調の男性の声だった。


『ASTRAEON VELORIA、こちらはヴェルドラコン帝国外交護衛隊です』


『船舶、キャプテン、航行目的の確認を行います』


『オーレリア・ヴェイリエンヌ嬢の帰還航行に対する帝国護衛要請を受領しております』


  紬が通信を引き継ぐ。


「こちら、ASTRAEON VELORIAのキャプテン兼オーナー、星崎紬だ」


「航行中の民間船としてのステータスが維持される限り、護衛を受け入れる」


『承知しました』


「安全上の理由がない限り、こちらから航路を変更することはない」


『承知しました』


「そして、正式な引き渡し手続きが行われるまで、乗客は俺たちの保護下に置く」


  通信回線に短い沈黙が流れる。


『承知しました、キャプテン・ホシザキ』


  通信が切れた。


  レアが息を吐く。


「まあまあね」


「何が?」


「いきなり命令してくるのかと思ってた」


  紬は自分の席へ戻る。


「そんな理由、向こうにはないだろ」


「本当に?」


「いや」


  レアが彼を見る。


「いや?」


「ただ、向こうにもプロとして接する理由があることを願ってるだけだ」


  セラフィエルが紬を見る。


「現実的な答えですね」


「俺は面倒事を探してるわけじゃない」


「存じています」


「俺たちはオーレリアを送るだけだ」


「私も理解しています」


  セラフィエルが微笑んだ。


「ですが、時として問題というものは、招かれてもいないのにやって来る習性があります」


  紬はため息をついた。


「だから、俺は休暇のほうが好きなんだ」


  しばらくして、オーレリアが一人で窓の前に立っていた。


  最初は、ただ外交船を見ていた。


  しかし、やがてその視線が止まった。


  本当に、止まった。


「……あれ」


  オーレリアの声は小さく、レアにもほとんど聞こえないほどだった。


「何?」


  オーレリアは答えなかった。


  ゆっくりと手をガラスへ伸ばす。


  遠くで、一隻の船が護衛編隊の中を進んでいる。


  その船はASTRAEON VELORIAほど大きくはない。


  だが、その船体のラインは他の外交船とは明らかに違っていた。


  カラーリングも、家紋も、見覚えのあるものだった。


  オーレリアは、まるで何か月もの間、記憶の中だけに存在していたものを目の前に見ているかのように、その船を見つめていた。


「私の家の船です」


  レアもその船を見る。


「本当に?」


「はい」


  オーレリアが頷く。


「家紋を覚えています」


  その声が変わった。


  過去について話している人間の声ではなくなっている。


  そこには、もっと近い何かがあった。


「お父様……」


  たった一言。


  それだけで、その場にいた全員の表情が変わった。


  紬は必要以上にオーレリアへ近づかなかった。


  ただ、彼女の数歩後ろに立っている。


「もっと近くで見たいか?」


「私は……」


  オーレリアが息を吸う。


「はい」


  その答えは、自分自身が予想していたよりも早く出た。


「見たいです」


  紬は頷いた。


「分かった」


  ヴェスペラが航行表示を調整し、その家族船を一方のパネルへ拡大表示する。


  家紋が、より鮮明になる。


  オーレリアは長い間、それを見つめていた。


「本当に、帰ってきたんですね……」


  誰も答えなかった。


  その言葉が、そのまま空中に残ることを許した。


  スリーピングポッドの中で約七か月眠り続け、見知らぬ船の中で目を覚まし、それまで家族の予定と護衛の向こう側からしか知らなかった世界を目にしてきた。


  そんな彼女の過去の人生の一部が、ついに目の前にある。


  だが、帰還というものは、船と船の間の距離ほど単純ではない。


  ASTRAEON VELORIAは、指定された到着航路へ向けて進み続ける。


  ヴェルドラコン帝国交通局が座標を送信する。


  護衛艦が編隊を整える。


  他の外交船も、主要航路から退避し始める。


  航行システムには検査区域が表示された。


  紬は、それらすべての情報をもう一度確認する。


「セラフィエル」


「はい?」


「ドッキング状況は?」


「まだ開始されていません」


「なぜ?」


「現在はアプローチ段階です」


「あとどれくらいだ?」


「数分です」


「分かった」


  紬は身体を背もたれへ預けた。


「そのあと、オーレリアを正式に引き渡す」


「その通りです」


  オーレリアはまだ窓の近くに立っている。


  その隣にはレアがいた。


「緊張してる?」


「少し」


「少し?」


「とても」


  レアが小さく笑った。


「そっちのほうが正直ね」


「努力しています」


「無理しなくていいよ」


  レアが彼女の肩へ軽く触れる。


「ここまで来たんだから」


  オーレリアが微笑む。


「ありがとう」


「まだお礼はいいよ」


「どうして?」


「船を降りてから、改めてお礼を言えばいい」


「それ、あなたのルール?」


「レア・ヴァレンのルール」


「ずいぶん正式な響きですね」


「そうだよ」


  オーレリアが笑う。


  ほんの数秒だけ、空気が軽くなった。


  しかし、その直後、通信パネルに赤いインジケーターが表示された。


  大きくはない。


  アラームも鳴っていない。


  手動で護衛データ全体を確認していなければ、注意を向けることさえないはずの、単なる行政上の表示だった。


  セラフィエルがそれを見る。


  その表情が、わずかに変化した。


  紬はすぐに気づいた。


「セラフィエル」


  一瞬、返事がない。


「セラフィエル?」


  セラフィエルがメインパネルから視線を外す。


「紬さん、問題があります」


  紬が立ち上がった。


「今度は何だ?」


  セラフィエルが、ヴェルドラコンから公式チャンネルを通して送られてきた護衛要員のリストを拡大する。


「現在、帝国護衛要請に記載されているすべての人員と艦艇を、外交データ上で確認可能な帝室の構成情報と照合しています」


「それで?」


「一名だけ、一致しない名前があります」


  レアが近づく。


「一致しないって、どういうこと?」


  セラフィエルが一行のデータを拡大する。


「この名前は、確かに護衛要員のリストには登録されています」


  ヴェスペラがパネルを見る。


「でも?」


  セラフィエルは静かな声で答えた。


「この人物は、帝室の一員ではありません」


  部屋が突然、静まり返った。


  それまで家族の船を見ていたオーレリアが、ゆっくりと振り返る。


  紬はそのデータの一行を見つめた。


  一つの名前。


  一つの役職。


  一つの正式なアクセス権限。


  そして、公爵令嬢の帰還を護衛するためのリストには本来存在するはずのない、一つの不一致。


  紬はすぐに結論を出さなかった。


  誰かを疑うこともしない。


  兵装を指示することもない。


  航路を変更することもない。


  ただ一つだけ、変わったものがあった。


  紬の注意だった。


「全リストを表示」


「すでに表示しています」


「何も削除するな」


「承知しました」


「向こうのシステムには触るな」


「ネットワークへの侵入は行いません」


  セラフィエルが一瞬だけ間を置く。


「こちらへ正式に送信されたデータを読むだけです」


  紬は頷いた。


「分かった」


  窓の外では、オーレリアの家族船がさらに近づいている。


  その前方には、ヴェルドラコン銀河帝国の広大な領域が広がっていた。


  人々は、一人の公爵令嬢の帰還を待っている。


  しかし、この旅が始まって以来初めて、紬は気づいた。


  待っているのは、彼女の家族だけではないのかもしれない――と。


【次の第90話 — 「帰還する公爵令嬢」】


ASTRAEON VELORIAはヴェルドラコン帝国到着区域へ入る。オーレリアはついに船を降り、公爵令嬢としての帰還と向き合うことになる。紬は報酬も地位も保護も求めない。ただ彼女を目的地まで送り届け、別れ際に一つの簡単な言葉を残す。


しかし、ASTRAEON VELORIAがその領域を離れる前に、セラフィエルはオーレリアの護衛リストが確かに何者かによって改変されていたことを発見する。


【第90話へ続く……】

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