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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第75話】「観光航路へ」

【第75話】「観光航路へ」


20日目。


外縁市民の漂流 Sectorが、ASTRAEON VELORIAの後方へと遠ざかり始めていた。


それまで閑散としていた星間空間が、少しずつ姿を変えていく。


メインスクリーンに表示された航法ルートも、もはや長く寂しい民間航路だけではない。


いくつもの航路が、それぞれ異なる目的地へ向けて分岐し始めていた。


そこには優先度、交通密度、推奨速度まで表示されている。


遠くでは、無数の光点がそれぞれの航路に沿って移動していた。


旅客船。


貨物船。


クルーズ船。


個人所有船。


さらには、家族旅行に使われているらしい小型船まである。


Tsumugiにとって、その光景はフロンティアとはまるで違って感じられた。


戦闘から逃げる準備をしているような動きをする船はない。


厳密な編隊を組んで移動する護衛艦隊もない。


契約上の争いを理由に救援を求める採掘ステーションもない。


ただ、民間船舶の交通だけがある。


だからこそ、ASTRAEON VELORIAの内部に流れる空気も、ずっと軽かった。


メインブリッジで、Tsumugiはキャプテンシートの前に立ち、刻々と変化する航路を眺めていた。


Seraphielはその右側に立っている。


ただし、今回は船内スピーカー越しではなかった。


直接、その場にいる。


Synthetic Personである彼の肉体は、メインコンソールの隣に静かに立っていた。


整えられた船舶用エグゼクティブウェアを身にまとい、長いsilver-whiteの髪が肩を越えて落ちている。


sapphireの瞳は、変化し続ける航法データを追っていた。


TsumugiとRheaにとっては、すでに見慣れた光景だった。


Lanも、もう驚くことはない。


だが、この場にいる別の者たちにとっては、まだ違う。


VesperaはNavigation Consoleの近くに立っていた。


Calistaは隣の席に座り、手にはengineering用のタブレットを持っている。


Aureliaは数歩後ろに立ち、乗客になってからも消えることのない好奇心で航法画面を眺めていた。


Vesperaが首を傾げる。


「つまり、ここで主要航路が変わるの?」


Seraphielはデータから視線を逸らさず答えた。


「その通りです。Outer Civilian Drift Sectorは、もうすぐ終わります。その後、ASTRAEON VELORIAはGalactic Leisure Corridorへ進入します」


Vesperaが地図を拡大する。


「交通量がかなり増えているわね」


「そうですね」


「列に並ぶ必要はある?」


「一部の航路では必要です。ただし、Galactic Leisure Corridorには複数の並行航路があります。ASTRAEON VELORIAが小型観光船と同じ航路で待機する必要はありません」


Calistaが口を挟んだ。


「こんなに大きな船が小型クルーズ船と一緒に列に並ぶことになったら、小さいほうが可哀想ね」


Tsumugiが彼女を見る。


「どうして?」


「前が何も見えなくなるかもしれないから」


それまでタブレットを確認していたLanが、ようやく小さく笑った。


「問題は視界だけじゃない」


Calistaが振り向く。


「ほかに何?」


「費用」


「費用?」


Lanはタブレットを持ち上げた。


「ASTRAEON VELORIAほど大きな船が観光施設へ入るたびに、運営側はドッキングクラス、航路の使用、施設の消費、セキュリティ、それから乗客サービスまで計算しなければならない。場所を間違えれば、君の休暇が支出報告書に変わるぞ」


Tsumugiがすぐに振り向いた。


「私が休暇を楽しもうとしているときに、支出報告の話をしないで」


Lanは微笑む。


「君が休暇中だからこそ言わなければならない」


「どうして?」


「休暇中というのは、人が一番簡単に『まあ、少しくらいなら』と言ってしまうからだ」


Rheaが後ろから笑う。


「その通りね」


Tsumugiが彼女を見る。


「あなたは参加しなくていい」


「私は何も言ってないわ」


「笑ってるでしょう」


「だって面白いもの」


「何が面白いの?」


Rheaが口を開くより先に、Lanが答えた。


「お金のことを考えずに休暇を楽しみたいキャプテン」


Tsumugiは黙った。


Calistaがすぐに口を挟む。


「でも、ついさっき1,500,000ギャラクティック・クレジットを手に入れたばかりでしょう」


「それに、それ以前から約700,000ある」


Lanが頷く。


「合計2,200,000ギャラクティック・クレジットだ」


Tsumugiは彼らを指差した。


「ほら。だから大丈夫」


Lanは短く息を吐いた。


「大丈夫だからといって、羽目を外していいという意味ではない」


Rheaがにやりと笑う。


「じゃあ、質問があるわ」


Tsumugiはすでに警戒していた。


「何?」


「羽目を外していい限界って、どこ?」


「Rhea」


「はい?」


「やめて」


「まだ終わってないわよ」


「だから問題なの」


Aureliaは、それまで黙っていたが、ついに小さく笑った。


その声に、何人かが振り向く。


彼女は慌てて手で口を覆った。


「すみません」


Tsumugiが眉を上げる。


「どうして謝るの?」


「ただ……皆さんの会話が、私が普段聞いていたものとは、とても違って感じたので」


「どう違うの?」


Aureliaは少し考えた。


「もっと……気楽です」


Rheaがすぐに答えた。


「ここで堅苦しくしていたら、頭が痛くなるからよ」


Vesperaが淡々と付け加える。


「そしてLanは、すべての会話について契約書を作る」


Lanが彼女を見る。


「それは誹謗だ」


「食事代の分担表を作ろうとしたことがあるでしょう」


「あれは契約ではない」


「3ページあったけど」


「記録だ」


「呼び方が違うだけね」


Calistaが笑いを堪える。


Tsumugiもついに笑った。


メインブリッジの空気は、さらに軽くなっていった。


だが、AureliaはまだSeraphielを見ていた。


仕事のやり方が気になっているわけではない。


先ほどから感じていた、ある違和感のためだった。


しばらくSeraphielを見つめたあと、彼女の視線がTsumugiへ移る。


「Tsumugi」


「ん?」


「Seraphielは、いつもここにいるんですか?」


Seraphiel自身が答えた。


「もし、私が肉体的にここにいることを意味しているのであれば、常にではありません」


Aureliaが瞬きをする。


「肉体的に……?」


その瞬間、部屋がわずかに静かになった。


TsumugiがSeraphielを見る。


Rheaは口元を手で覆った。


Lanはゆっくりとタブレットを下げる。


Calistaが眉を寄せた。


VesperaもSeraphielを見る。


Aureliaは困惑していた。


Seraphielは何かに気づいたようだった。


「どうやら、その部分についてはまだ説明していなかったようですね」


Calistaが立ち上がる。


「待って」


彼女はSeraphielを指差した。


「今、『その部分』って言った?」


「その通りです」


「じゃあ、今まであなたは……」


Calistaは言葉を止めた。


視線がSeraphielからコントロールパネルへ移り、そして再びSeraphielへ戻る。


「あなたの身体って、本物なの?」


Seraphielは薄く微笑んだ。


「はい」


Calistaが固まった。


「ちょっと待って」


彼女が近づいていく。


何が起きるのかを知っているRheaは、すでに笑い始めていた。


CalistaはSeraphielの約1メートル前まで歩いてくる。


「手」


Seraphielが手を上げる。


Calistaはその手のひらに触れた。


温かい。


金属の表面ではない。


ホログラムでもない。


投影でもない。


Calistaはすぐに手を引いた。


「……温かい」


Seraphielが首を傾げる。


「私には人工循環システムがあります」


「それ、余計に普通じゃない答えだから」


Lanが小さく笑った。


「ようこそ」


Calistaが鋭く振り向く。


「あなたは知ってたの?」


「知っていた」


「いつから?」


「かなり前から」


「それで教えてくれなかったの?」


Lanは肩をすくめる。


「Seraphielは秘密にしてほしいとは言わなかった。だが、私にもわざわざ公表する理由はなかった」


CalistaがRheaを見る。


「まさか……」


Rheaが両手を上げた。


「私も知ってるわ」


Calistaは頭を抱えた。


「じゃあ、知らなかったのは私だけ?」


Vesperaは黙っていた。


視線はSeraphielへ向けられている。


そして、ゆっくりと言った。


「私も知らなかった」


CalistaがVesperaを指差す。


「よかった。少なくとも一人じゃない」


Vesperaが眉を上げる。


「それであなたの状況が良くなるわけではないわ」


「そうね」


Aureliaはまだ困惑したままだった。


「すみません……では、Seraphielは単なるAIではないのですか?」


Seraphielは静かに答えた。


「私はSovereign-Class Artificial Intelligenceです。しかし、私の本体は生体合成型の人工身体です」


Aureliaがゆっくり繰り返す。


「本体……」


「その通りです」


「では、今私の目の前に立っている身体が、あなたの本体なのですか?」


「はい」


Vesperaがようやく近づいた。


地図に存在しない何かを見つけた探索者のような目で、Seraphielを頭から足元まで観察する。


「それなら、あなたがTsumugiと一緒に歩いているときは……」


「実際に歩いています」


「食事をするときは?」


「食べます」


「眠るときは?」


「眠ります」


Vesperaが黙る。


Calistaが真剣な顔で付け加えた。


「怪我をしたときは?」


Seraphielは迷わず答えた。


「怪我をすることはあります」


「痛みも?」


「はい」


Aureliaが少し驚いた。


「それなら……」


彼女は一瞬言葉を止めた。


「あなたは、人間なのですか?」


Seraphielはすぐには答えなかった。


分からなかったからではない。


その質問が、聞こえているほど単純ではなかったからだ。


「私はHumanではありません」


Aureliaはゆっくり頷いた。


「Synthetic Personだから」


「その通りです」


Vesperaが腕を組む。


「つまり、たまたま人間に見える機械というわけではないのね」


Seraphielが微笑む。


「正確には、合成された起源を持つ存在である、ということです」


Vesperaは数秒間、彼を見つめた。


「興味深い」


Rheaが割って入る。


「Vesperaが『興味深い』って言ったら、もう何かを分解したくなってるって意味よ」


Vesperaが振り向く。


「人を分解したりはしない」


Calistaがすぐに言う。


「機械なら?」


「話は別」


Calistaは満足そうに笑った。


「ほら。意見が合った」


Seraphielが小さく息を吐く。


「しばらくの間、私の身体を研究対象にするのは控えることをお勧めします」


Calistaが少し残念そうな顔をする。


「ただ構造を調べたいだけなんだけど」


「駄目です」


「少しだけ」


「駄目です」


「外側だけでも」


「駄目です」


「じゃあ、ほんの――」


「Calista」


「分かった」


Tsumugiは笑いを堪えた。


「Seraphiel、Calistaへの対処法を覚えたみたいね」


「経験を積みましたので」


Calistaが鼻を鳴らす。


「私を問題みたいに言わないで」


Lanがすぐに言った。


「実際、問題だ」


「聞こえてるからね」


「わざと聞こえるように言った」


Rheaが笑う。


Vesperaは小さく首を振るだけだった。


Aureliaも、いつの間にか笑っていた。


彼女は彼らを見つめる。


奇妙な集団だった。


若いHumanのキャプテン。


BeastmanのMercenary。


Space ElfのMerchant。


Space High ElfのExplorer。


Space DwarfのEngineer。


そして、船そのもののAIでもあるSynthetic Person。


そして自分自身。


つい先ほど一時的な乗客になった、公爵令嬢。


誰一人として、貴族の一行には見えない。


だからこそ、彼女は心地よかった。


Aureliaは再びSeraphielを見る。


「もしあなたの身体が本体なら、船の外にいるときはどうやってASTRAEON VELORIAを操作できるのですか?」


Seraphielは静かに答えた。


「私の意識は、船のシステムと直接接続されています」


「では、ここにいながら船を操作できるのですか?」


「はい」


「別の場所へ行った場合は?」


「船のシステムは稼働し続けます」


Vesperaが口を挟む。


「つまり、肉体が端末というわけではないのね」


「その通りです」


「そして、ときどきいろいろなスクリーンに現れるホログラムの身体は?」


「あれはインターフェースにすぎません」


Calistaがゆっくり頷く。


「なるほど」


そして眉を寄せた。


「いや、待って。技術的にはやっぱり理解できない」


Seraphielが微笑む。


「そのコメントのほうがCalistaらしいですね」


「からかわないで」


「からかってはいません」


「笑ってるじゃない」


「実際に笑っています」


「そのほうが悪い」


Tsumugiはとうとう席から立ち上がった。


「もういい」


全員が彼女を見る。


「今、観光航路へ入ろうとしてるんだから」


彼女は航法画面を指差した。


「Seraphielの身体について話し続けてたら、最初の目的を忘れるでしょう」


Lanがタブレットで時刻を確認する。


「その通りだ。まだ進入手順が残っている」


VesperaがNavigation Consoleへ戻る。


「Galactic Leisure Corridorには複数の航路層がある。主要な観光船はLane CとLane Dを使用する。大型船はLane Aよ」


Tsumugiが近づく。


「Lane A?」


「大型船、および乗客数の多い船舶用の航路」


Seraphielが地図表示を切り替える。


「ASTRAEON VELORIAはLane Aから進入します。最初の管制ゲートを通過した後、目的地システムに向けたOrbital Controlからの指示を受けます」


Aureliaが画面を見つめる。


「Galactic Leisure CorridorにもSpace Traffic Controlがあるのですか?」


「あるわ」とVesperaが答える。「各システムには、それぞれの交通管制が存在する。観光航路だからといって、すべての船が自由に動けるわけではない」


Tsumugiが頷く。


「よかった。私は明確なルールのほうが好き」


Lanが笑う。


「君が?」


「何?」


「君は普段、ルールと関わるのを一番嫌がるだろう」


「明確なルールと、分かりにくい官僚主義は別よ」


Calistaが短く笑った。


「それは確かにそうね」


Vesperaが地図を拡大する。


「前方に分離航路がある。検査地点までは速度を維持する必要があるわ」


Seraphielが付け加えた。


「速度はすでに調整済みです」


Tsumugiが画面を見る。


「どれくらい?」


「表示されている数値は、標準民間クルーズ速度の0.42です」


Tsumugiが頷く。


「いいわ」


そして全員を見渡した。


「入った後は?」


Seraphielが答える。


「契約は受けません」


Lanが一本指を立てる。


「賞金首依頼も受けない」


Rheaが続ける。


「面倒事を探さない」


Calistaが続けた。


「他人の船を分解しない」


全員の視線がCalistaへ集まった。


Calistaはため息をつく。


「何よ?」


Vesperaが淡々と言った。


「Seraphielに断られたばかりだから、そう言ったのでしょう」


「それは関係ない」


Seraphielが微笑む。


「少しは関係があります」


Aureliaがようやく口を開いた。


「それなら……何をしてもいいのですか?」


Tsumugiが彼女を見る。


「休暇よ」


「そんなに単純なのですか?」


「そんなに単純よ」


Aureliaが微笑む。


「分かりました」


Tsumugiは再び席に座った。


「Seraphiel」


「はい、Captain」


「さっきのモードを起動して」


Seraphielが彼女を見る。


「PRIVATE LEISURE MODEですか?」


「そう」


Lanがすぐにタブレットを開く。


「そのモードが有効になると、入ってくる契約は?」


「フィルタリングされます」


「賞金首依頼は?」


「自動的に拒否します」


「護衛依頼は?」


「拒否します」


「調査依頼は?」


「拒否します」


Calistaが尋ねる。


「緊急要請が来た場合は?」


Tsumugiは少し考えた。


「本当に緊急事態なら?」


Seraphielが答える。


「システムからCaptainへ情報を転送します」


Tsumugiが頷く。


「それならいいわ」


彼女は息を吸った。


「やって」


Seraphielが片手を上げる。


メインスクリーンが切り替わった。


それまで契約や外部通知を表示していたいくつかのパネルが縮小する。


商用通信システムが制限モードへ移行する。


Mercenary Associationには、もはや仕事の一覧が表示されない。


Bounty Networkはバックグラウンドへ移された。


新規契約の依頼には、deferredの表示が付いた。


そしてメインスクリーンに、一つの文字列が現れる。


PRIVATE LEISURE MODE


ACTIVE


Tsumugiは数秒間、それを見つめた。


「……あ」


Rheaが笑う。


「どうしたの?」


「なんだか変な感じ」


「どうして?」


「普段、船の画面がこんなふうに変わると、その直後には大抵何か問題が起きるから」


Lanがタブレットを閉じた。


「今回は違う」


Vesperaが前方の航路を見る。


「少なくとも、そう願えるわね」


Calistaが身体をもたれさせる。


「私は産業観光施設を見てみたい」


Tsumugiがすぐに振り向く。


「私たちは休暇中よ」


「分かってる」


「それは休暇じゃない」


「私にとっては休暇よ」


Lanが手を上げる。


「私は買い物がしたい」


Rheaが割り込む。


「私はゲームアリーナ」


Vesperaが静かに言った。


「私は天体観測回廊を見たい」


Aureliaが考える。


「私は、全部見てみたいです」


Tsumugiは一人ずつ彼らを見た。


そして小さく笑った。


「じゃあ、何をしたいのかまだ決めてないのは私だけね」


Seraphielが彼女の隣に立つ。


「Captainは、今決める必要はありません」


「それもそうね」


「Galactic Leisure Corridorは十分に広いです」


「選択肢はどれくらいあるの?」


「この一度の旅では、すべて訪れることができないほどです」


Tsumugiがため息をつく。


「それは逆に困るわ」


Seraphielが微笑む。


「Captainには、興味深い弱点がありますね」


「何?」


「敵を相手にした場合、Captainは数秒で決断できます」


Tsumugiは嫌な予感がした。


「続けないで」


「しかし、レストランを選ぶときには20分かかることがあります」


Rheaがすぐに笑い出した。


Lanも笑う。


Vesperaまで薄く笑った。


Calistaがテーブルを叩く。


「それは本当」


Tsumugiは彼らを見る。


「みんな覚えてるの?」


「何度もあったからな」とLanが答えた。


Aureliaは大きな声で笑わないよう、口元を手で覆った。


Tsumugiはため息をつく。


「分かった。認めるわ」


そして再び前方を見る。


「でも、今回は私が選ばない」


「本当に?」とRheaが尋ねる。


「ええ」


「誰に任せるの?」


Tsumugiは全員を指差した。


「あなたたちが選んで」


Rheaがすぐに立ち上がる。


「本気?」


「本気」


Lanはすでにカタログを開いていた。


Vesperaは観光マップを呼び出す。


Calistaは施設一覧を開く。


Aureliaは目を輝かせながらスクリーンへ近づいた。


Tsumugiはキャプテンシートに身体を預けた。


Galactic Leisure Corridorへ向かう旅が始まって以来、初めて彼女は次の契約について考えなくてよかった。


任務のリスクを計算する必要もない。


支払い条項を確認する必要もない。


待ち伏せの可能性を予測する必要もない。


7か月間放置されていた船のことさえ、今は彼らの旅の後方へ置き去りになっていた。


今のところ。


ただ、今のところだけは。


ASTRAEON VELORIAは進み続ける。


パノラマウィンドウの外では、Galactic Leisure Corridorの光の航路が次第にはっきりと見え始めていた。


何千もの船が、それぞれ異なる目的地へ向かっている。


家族を乗せている船もある。


恋人同士を乗せている船もある。


ただ新しい場所を見てみたいという観光客を乗せている船もある。


そのすべての船の中で、ASTRAEON VELORIAは巨大な高級個人船として、自らの航路へ進入していった。


民間管制システムが船舶識別情報を受信する。


登録情報が確認される。


武装状態が規定どおりであることが確認される。


乗客数とクルー数が更新される。


AURELIS SERENAは引き続きASTRAEON VELORIAのハンガー内部に確保され、その法的データはSeraphielとLanの監視下に置かれている。


契約はない。


賞金首依頼もない。


ミッション・ブリーフィングもない。


ただ旅がある。


ただ休暇がある。


Aureliaは窓の近くに立っていた。


「これは……」


Tsumugiが振り向く。


「何?」


Aureliaが前方を指差す。


民間船舶の密集した交通路の向こうに、一つの輝く星系が現れていた。


単なる惑星ではない。


その周囲には人工的に造られたリング、観光ステーション、軌道輸送路、そして一目では数え切れないほどの光点が存在している。


Rheaが近づく。


「もう着いた?」


Vesperaが座標を確認する。


「まだよ」


Lanが微笑んだ。


「でも、もうすぐだ」


Seraphielが航法画面を見る。


「Captain」


「何?」


「Galactic Leisure Corridorが、我々を受け入れました」


Tsumugiは前方の景色を見る。


そして微笑んだ。


「それなら……」


彼女は心地よさそうに身体を預ける。


「私たちの休暇は、本当に始まったわね」


遥か前方で、最初のリゾートが姿を見せ始めていた。


そしてフロンティアを離れてから初めて、Tsumugiは仕事のことを考えなかった。


ただ、あの場所がどんなところなのか見てみたいと思った。


【次話 第76話――「オーシャン・リゾート・ワールド」】


「オーシャン・リゾート・ワールド」


ASTRAEON VELORIAはPelagia Noveへ到着する。


そこは、人工ビーチ、浮遊ホテル、水中都市、マリンパーク、そして高級レストランを備えた海洋観光惑星だった。


Tsumugiは、ついに本当の意味で休暇を楽しみ始める。


一方、Aureliaはこれまでの人生でほとんど持つことのなかったものを目にする。


それは、一般の人々が個人護衛を伴わず、自由に歩くことができる光景だった。


【第76話へ続く……】

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