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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第73話】「一つの願い」

【第73話】「一つの願い」


ASTRAEONの朝は、船のリズムを変えることなく訪れた。


航行システムは稼働を続けている。


主機関は安定した航行を維持している。


船内の各所では、人々がそれぞれの活動を続けていた。まるで、何も特別なことが起きていないかのように。


しかしTsumugiにとっては、少し前からAureliaの一言が頭から離れなかった。


「銀河を見てもいいですか?」


TsumugiはCaptain's Residenceと船の主要区画を繋ぐ通路の一つに、一人で立っていた。


その願いを聞いたあと、彼女はすぐに治療室へ戻らなかった。


願いが難しかったからではない。


むしろ逆だった。


あまりにも簡単な願いだった。


だからこそ、無視することができなかった。


Tsumugiはしばらく通路の壁に背を預けた。


「銀河を見る、か……」


息を吐く。


そもそも、すべては一つの単純な決断から始まった。


Eldrasの契約で資金を得た。


仕事を終えた。


しばらく新しい契約を受けないことを決めた。


目的は一つ。


休暇。


任務はない。


目標もない。


追跡もない。


誰かを救わなければならないわけでもない。


少なくとも、AURELIS SERENAを見つけるまでは、それが彼女たちの計画だった。


今は状況が変わっている。


ハンガーには、確保中の放棄されたクルーズ船がある。


まだ終わっていない調査もある。


そして、ようやく家族との通信を取り戻したAureliaがいる。


ほぼ七か月分の人生を失った、十八歳の少女が。


Tsumugiは自分の手のひらを見つめた。


「問題は、彼女が銀河を見てもいいかどうかじゃない」


背後から別の声が返ってきた。


「問題は、その願いによって、あなたが旅の計画そのものを変えるかどうかです」


Tsumugiは振り返る必要もなかった。


「Seraphiel」


「その通りです」


「聞いていたの?」


「私は船の通信と運用を担当しています。あなたとAureliaの会話は、航行上の判断に関係する情報に含まれます」


Tsumugiは薄く笑った。


「それなら、もう答えは分かってるでしょう」


「私はまだ、あなたの決定を待っています」


「予想できるんじゃない?」


「これまでのあなたの判断パターンから予測することは可能です。しかし、私は船長に代わって決定することを選びません」


Tsumugiは小さく笑った。


「あなた、だんだん人間みたいな答え方になってきたね」


「褒め言葉として受け取っておきます」


「そうだよ」


Tsumugiは歩き始めた。


「Aureliaを一緒に連れていくことで、旅の目的は変わると思う?」


「運用上は、乗客が一名増えることで、いくつか考慮すべき事項が増えます」


「例えば?」


「医療状態。安全管理。船内へのアクセス。通信。個人的な必要事項。そして、彼女の健康状態が安定しない場合には、旅程を変更する可能性もあります」


Tsumugiは頷いた。


「なるほどね」


「しかし、あなたが変更しない限り、旅の本来の目的は変わりません」


Tsumugiは足を止めた。


その言葉に、しばらく黙る。


「そうだね」


そして微笑んだ。


「確かに、その通りだ」


TsumugiはEuphoria Medical Instituteへ向かって歩き続けた。


途中、船内のいくつかの区画を通り過ぎる。


一人の技術員がメンテナンス機器を運んでいた。


二人のクルーがシステム点検について話している。


複数の自動ユニットが、ある区画から別の区画へと機材を運んでいた。


ASTRAEONは、ASTRAEONなりの方法で生き続けている。


Tsumugiが一つの決断について考えているからといって、船そのものが止まるわけではない。


やがて彼女は治療室の前に到着した。


扉が自動的に開く。


Aureliaはすでに起きていた。


少女はベッドの端に座り、観測パネルを眺めている。


その近くにはRheaがいた。


Tsumugiの姿を見た瞬間、Rheaが振り向く。


「遅かったね」


Tsumugiは眉を上げた。


「まだ少ししか経ってないよ」


「答えを待ってる人間にとっては、少しでも長く感じるものよ」


AureliaがRheaを見る。


「あなたも待っていたんですか?」


Rheaは笑った。


「もちろん」


「どうして?」


「あなたの願い、なかなか面白かったから」


Aureliaは少し恥ずかしそうにする。


「私はただ、簡単なことをお願いしただけです」


「そこが面白いのよ」


Tsumugiは椅子を引いた。


「体調は?」


「良くなっています」


「めまいは?」


「前ほどではありません」


「まだ弱い?」


Aureliaは頷いた。


「急いで歩こうとすると、身体が『私はほぼ七か月ぶりに目覚めたばかりです』と教えてくれます」


Rheaが笑う。


「身体がかなり丁寧な言い方で、無理するなって言ってるわね」


Aureliaも笑った。


「少しずつ分かってきました」


TsumugiはAureliaの顔を見つめる。


数時間前とは、少し変わっていた。


大きな変化ではない。


けれど、はっきり分かる。


少女の瞳には、以前より生気が戻っていた。


肩からも、以前ほど力が抜けている。


質問への答え方にも、少しずつ余裕が生まれていた。


失われた七か月という重荷を、まだ抱えている。


けれど今は、その重荷だけが彼女の思考を埋め尽くしているわけではない。


Tsumugiは背もたれに寄りかかった。


「君の願いについて、考えてみた」


Aureliaがすぐに黙る。


Rheaも口を挟まない。


Tsumugiは続けた。


「君は、帰る前に銀河を見たいんだよね」


「はい」


「どうして?」


Aureliaは少し困ったような顔をした。


「もう説明したと思いますが……」


「君は銀河を見たいと言った」


Tsumugiは彼女を見る。


「私は、その理由を知りたい」


Aureliaはしばらく黙った。


そして観測パネルへ視線を向ける。


星々が、はるか遠くの光の点として見えている。


「私は、本当の意味で銀河を見たことがないからです」


Tsumugiは何も言わなかった。


Aureliaが続ける。


「軌道から惑星を見たことはあります。星系間を移動したこともあります。宇宙ステーションを見たこともあります。銀河のさまざまな地域について学んだこともあります」


彼女は小さく笑った。


「でも、全部が予定の一部だったんです」


「予定?」


「はい」


Aureliaは頷いた。


「どこへ行くのか。誰と行くのか。どれくらい滞在するのか。いつ戻るのか。どの行事に出席するのか。誰と会うのか。何を言うべきなのか。何を言ってはいけないのか」


Rheaが黙った。


Tsumugiも何も言わない。


Aureliaは俯いた。


「美しいものを見たときでさえ、数分後にはもう移動しなければならないと分かっていることが多かったんです」


「安全上の理由?」


「それもあります」


「それ以外は?」


Aureliaは薄く笑った。


「義務です」


たった一つの言葉だった。


しかしTsumugiには、その言葉の奥に長い人生があることが分かった。


教育。


礼儀作法。


家族。


身分。


名前。


他人からの期待。


そして、自分だけでは決められないかもしれないこと。


Aureliaは自分の両手を見つめた。


「私は、自分の人生が嫌いだったわけではありません」


Tsumugiは頷いた。


「そうは思ってないよ」


「家族を愛しています」


「うん」


「どうして私を守ろうとするのかも理解しています」


Aureliaは言葉を止めた。


「でも、あの七か月の間は、それが全部ありませんでした」


Rheaが彼女を見る。


Aureliaは続けた。


「予定もありませんでした。先生もいませんでした。護衛もいませんでした。どこへ行くべきか指示する人もいませんでした」


彼女は小さく笑った。


「もちろん、その自由を楽しんでいたとは言えません。私は何も意識していなかったのですから」


Tsumugiは微笑んだ。


「それは少し悲しいね」


「そうですね」


Aureliaも笑った。


「でも、目覚めてから気づいたことがあります」


「何?」


「予定表に書かれていないものを、どうしても見てみたいと思ったんです」


再び、部屋が静かになった。


Tsumugiは顎に手を当てた。


「それが理由なんだね」


「はい」


Aureliaは頷いた。


「家族から逃げたいからではありません」


彼女はTsumugiを見る。


「ただ、一つくらい、自分自身で選んだ経験が欲しいんです」


その言葉は、貴族の令嬢からの要求には聞こえなかった。


要求もない。


特権を主張するわけでもない。


ただ、自分の人生の大部分が他人によって決められていたことに、今になって気づいた一人の人間の願いだった。


Tsumugiはようやく笑った。


「それなら、ちょっと面白い問題があるね」


Aureliaが瞬きをする。


「問題ですか?」


Tsumugiは自分を指差した。


「私たちの最初の目的は、もともと休暇なんだよ」


Aureliaが彼女を見る。


「本当ですか?」


「うん」


Rheaがすぐに笑った。


「最初からそう言ってたじゃない」


AureliaはTsumugiを見る。


「本当に観光地へ向かっているんですか?」


「そうだよ」


「口実ではなく?」


「違う」


「契約は?」


「ない」


「仕事は?」


Tsumugiは首を横に振った。


「しばらくは、ないよ」


Aureliaは黙った。


そして、もう一度尋ねる。


「では……私が銀河を見たいとお願いしても、皆さんの目的を変えることにはならないんですか?」


Tsumugiは首を横に振った。


「ならないよ」


そして笑った。


「私たちは、本当に観光地へ向かってるから」


Aureliaは数秒間、彼女を見つめた。


やがて、その目が少し大きくなる。


「本当に?」


「うん」


答えは簡単だった。


しかしAureliaの表情は、一瞬で変わった。


大げさな喜びではない。


何かを勝ち取った人間のような反応でもない。


顔に、ゆっくりと笑みが浮かんだ。


最初はほんの小さなものだった。


それが、少しずつはっきりしていく。


Rheaがその表情を見つめる。


Tsumugiも見ていた。


それは、二人が初めて見るAureliaの笑顔だった。


その笑顔には、隠れた悲しみがなかった。


Aureliaは少し俯いた。


「それなら……私のお願いが、こんなに簡単に叶うとは思いませんでした」


Tsumugiは笑った。


「私たちは最初から同じ場所へ向かってるんだからね」


Aureliaが顔を上げる。


「では、いいんですか?」


Tsumugiは頷いた。


「身体の状態が許して、家族も反対しないなら、もちろん」


その笑顔が一瞬止まる。


「家族……」


「帰る前に、自分の時間を取りたいってことは、昨日もう家族に話してたでしょ」


AureliaがTsumugiを見る。


「どうして知っているんですか?」


「昨日、君自身が話してたから」


「あ……」


Aureliaは黙る。


それから、また笑った。


「そうでした」


Tsumugiは続ける。


「ただし、一つだけはっきりさせておきたい」


Aureliaが頷く。


「何でしょう?」


「君は、公爵令嬢だから特別扱いされるわけじゃない」


Aureliaは気を悪くしなかった。


むしろ、ほっとしたように見えた。


「私は、それを望んでいません」


「それならいい」


「でも、一つ聞いてもいいですか?」


「どうぞ」


「特別扱いされないのなら、普通の乗客として扱ってもらうことはできますか?」


Tsumugiは笑った。


「だいたいそんな感じかな」


「だいたい?」


「君はまだ患者だから」


Rheaが笑う。


「しかも、七か月ぶりに目覚めたばかりの患者」


Aureliaはため息をついた。


「ここでは、私の身分が何の役にも立たないような気がしてきました」


Tsumugiは無表情で答えた。


「それでいいよ」


Aureliaは彼女を見る。


そして笑った。


Rheaも笑う。


さらに、通信システムからSeraphielの声まで聞こえてきた。


「私も船長に同意します」


Aureliaが振り向く。


「Seraphiel-san」


「はい?」


「余計なところに入ってこないでください」


「私は効率的な判断を支持しているだけです」


「そういうことですか」


部屋の空気が変わった。


Aureliaが初めて目を覚ましたときのような緊張は、もうなかった。


まだ知らないことはたくさんある。


それでも今は、楽しみにできるものが一つある。


TsumugiはSeraphielに、再び航路を表示するよう頼んだ。


メインパネルが切り替わる。


航路の線が現れた。


ASTRAEONはまだ星系間の民間航路上にいる。


その先には、Galactic Leisure Corridorへ向かう航路が伸びている。


Tsumugiはその航路を見つめた。


「あとどれくらい?」


「現在の速度であれば、航行にはまだ時間を要します。ただし、現時点でも計画されていた航行範囲内に収まっています」


Tsumugiは頷いた。


「急ぐ必要はないね」


「承知しました」


Aureliaはその航路を眺めていた。


「銀河の観光地って、全部こんな感じなんですか?」


「こんな感じって?」


「専用の航路があるんですか?」


Seraphielが答える。


「Galactic Leisure Corridorは、観光地域へ向かう航行を担う航路の一つです。民間航路の利用においても、適用される交通手続きと管制規則に従う必要があります」


Aureliaは頷いた。


「休暇旅行にもルールがあるんですね」


Tsumugiは笑った。


「この銀河では、ほとんど何にでもルールがあるよ」


「休暇にも?」


「特に、これだけ大きな船ならね」


Rheaが口を挟む。


「航路を間違えたら、休暇が中止になるだけじゃないわ。Traffic Controlに説明を求められることもあるから」


Aureliaはパネル越しにASTRAEONを見る。


「少し分かってきました」


そして尋ねる。


「これほど大きな船が観光地域へ入る場合、また許可を取る必要があるんですか?」


Seraphielが答える。


「地域と現地の手続きによって異なります。船舶識別情報、登録状況、航行目的、その他Space Traffic Controlが要求するデータを送信する必要があります。また、特定の軌道規則が適用される地域へ入る場合は、Orbital Controlの指示にも従います」


Aureliaは興味深そうにしている。


「では、どこへでも自由に飛んでいけるわけではないんですね」


「そうだよ」


Tsumugiが答えた。


「この船はとても大きいけど、それでもルールには従わないといけない」


「むしろ、大きいからこそですね」


Aureliaは頷いた。


「納得できます」


Tsumugiは彼女の表情を見る。


「興味ある?」


「少しだけ」


「それなら、あとでSeraphielに聞けばいいよ」


「医療行為を妨げず、船の運用に関する質問であれば、いつでもお答えします」


Aureliaは微笑んだ。


「分かりました」


それから旅についての会話は、自然に広がっていった。


Aureliaは、これから向かう観光地がどんな場所なのか知りたがった。


Tsumugiは、Eldrasを出発した時点では、特定の目的地を一つに決めていなかったと説明した。


Rheaは、まだいくつかの選択肢があると言った。


ゆっくり休むのに向いた場所。


娯楽施設が充実した地域。


宇宙の景色を楽しむことに重点を置いた区域。


そして、買い物や食事に向いた目的地もある。


Aureliaは興味深そうに聞いていた。


「では、まだ行き先は決めていないんですか?」


「まだだよ」


「どうして?」


Tsumugiが答える。


「今回は、予定を追いかける旅じゃないから」


Aureliaはその言葉を考える。


「楽しそうですね」


「そうだよ」


「そして、普通ではない」


「私たちにとってもね」


Rheaが付け加える。


「普段は契約、目的地、期限、問題、それから別の問題」


TsumugiがRheaを見る。


「どうしてそんなに悲惨そうに聞こえる言い方をするの?」


「実際そうだから」


Aureliaが笑った。


「それなら、皆さんには本当に休暇が必要ですね」


Tsumugiは頷いた。


「そのつもりなんだ」


Aureliaは一人ずつ彼女たちを見る。


何かが、少しずつ彼女の中に生まれていた。


親しさではない。


まだそこまでではない。


彼女たちと知り合ってから、まだそれほど時間は経っていない。


それでも、今までとは違う安心感があった。


家族の護衛から与えられてきた安全とは違う。


ここの安全は、壁のようには感じられなかった。


常に背後に誰かが立っているわけではない。


一歩一歩を指示する手もない。


ただ、彼女が倒れないように支えてくれている。


それ以外は、自分で選んでいい。


その感覚に、胸が少し軽くなった。


やがてTsumugiはAureliaに、もう一度休むよう促した。


「今日はこのくらいにしよう」


Aureliaは頷いた。


「分かりました」


「身体にはまだ時間が必要だから」


「分かっています」


そしてTsumugiを見る。


「ありがとうございます」


「今度は何に対して?」


「私のお願いを、負担のように扱わなかったことです」


Tsumugiは黙った。


それから答える。


「君の願いは、負担なんかじゃないよ」


Aureliaは微笑んだ。


「そう言ってもらえて嬉しいです」


彼女は再び横になる。


Rheaが慎重に毛布を掛け直した。


「考えすぎないこと」


AureliaがRheaを見る。


「努力します」


「努力じゃなくて、やるの」


「はい」


Tsumugiは扉の近くに立つ。


部屋を出る前に、Aureliaが呼び止めた。


「Tsumugi-san」


「うん?」


「もし本当に観光地へ行くなら……」


Aureliaは少し言葉を止める。


「私も何か選んでいいですか?」


Tsumugiは笑った。


「もちろん」


「何でも?」


「常識の範囲ならね」


Aureliaは考える。


「それなら、考えておきます」


「あまり時間をかけないでね」


「どうしてですか?」


「考えすぎると、Rheaが先に選んじゃうから」


Rheaがすぐに口を挟む。


「どうして私の名前を出すのよ?」


Aureliaが笑った。


「分かりました。早めに決めます」


Tsumugiは扉を開ける。


部屋を出る前に、もう一度Aureliaを振り返った。


少女はすでに横になり、目を半分閉じている。


それでも、小さな笑みは残っていた。


Tsumugiはそのまま部屋を出る。


扉がゆっくり閉じた。


廊下では、Rheaが待っていた。


「船長」


「何?」


「気づいてるよね?」


「何に?」


「これで本当に、乗客を一人連れていくことになった」


Tsumugiは頷いた。


「しばらくはね」


「しかも、公爵令嬢」


「うん」


「ヴェルドラコン銀河帝国の」


「うん」


Rheaは両手をポケットに入れる。


「それでも休暇に行くつもりなんだ」


TsumugiはRheaを見る。


「それが最初から私たちの目的だから」


Rheaは大きく笑った。


「それならいい」


「どうして嬉しそうなの?」


「だって、今回はいつもより面白い理由で休暇に行けるから」


Tsumugiは首を振った。


「複雑な話にしないでよ」


「私は何も言ってないわ」


「顔がいろいろ語ってる」


Rheaは笑った。


二人は廊下を歩いていく。


数歩進んだところで、Tsumugiが足を止めた。


「Seraphiel」


「はい、Tsumugi?」


「これからは、航行計画を考えるときにAureliaの状態も考慮して」


「承知しました」


「でも、旅の目的は変えない」


「Galactic Leisure Corridorを目的地とする計画は維持します」


「そう」


Tsumugiは前を見る。


「誰かを見つけたからって、休暇そのものを変える理由にはならないからね」


Rheaが眉を上げる。


「でも、休暇へ行く理由が一つ増えたってことじゃない?」


Tsumugiは笑った。


「かもしれないね」


治療室の中では、Aureliaはまだ眠っていなかった。


遠ざかっていく廊下の音を聞いている。


彼女は観測パネルを見つめた。


星々は、まだそこにある。


何も変わっていない。


けれど、彼女にとってはすべてが違っていた。


以前は、予定表を通して宇宙を見ていた。


今は、自分自身の意思で見たいと思っている。


Aureliaは指先で毛布に触れた。


「銀河……」


その言葉は、ほとんど囁きのようにこぼれた。


そして微笑む。


ほんの小さな笑顔。


けれど、本物だった。


目覚めてから初めて、Aureliaは失われた七か月について考えなかった。


その先に、まだ何を見ることができるのかを考えていた。


ASTRAEONの別の区画では、Seraphielが航行システムから更新情報を受信していた。


Galactic Leisure Corridorへ向かう航路は、引き続き安全だった。


目的地に変更はない。


新しい契約もない。


ASTRAEONの航行を停止させるような外部からの要求もない。


当初の計画は、そのまま有効だった。


ただ一つだけ、追加されたものがある。


自分の目で銀河を見たいと願う、一人の乗客。


Seraphielはその情報を航行記録へ保存した。


任務としてではない。


義務としてでもない。


最初から休暇になるはずだった旅に、新たに加わった一つの要素として。


そして数時間後、航行が進路を変えることなく続いた頃、Tsumugiはようやく一つの単純な決定を下した。


Aureliaも一緒に行っていい。


ただし、乗客として。


クルーではない。


家族の一員でもない。


そして、助けてもらったことを何かで返さなければならない人間でもない。


今はただ、銀河を見たい一人の少女。


それで十分だった。


【第74話――「一時的な乗客」】


Aureliaは正式にASTRAEONの一時的な乗客として登録される。ゲストキャビン、アクセスカード、緊急通信機を与えられる一方、彼女がTsumugiたちにとっての客人なのか、患者なのか、家族の一員なのか、その境界は明確に保たれる。Galactic Leisure Corridorへ向かう旅は、当初の計画通り続いていく。


しかし、乗客の手続きが完了したとき、Seraphielは新たなメッセージを受信する。


AURELIS SERENAの登録所有権情報を、誰かが探し始めた。


【第74話へ続く……】

英語のチャットAIが、私が長々と話しているのに日本語に翻訳してくれず、いつもこんな結果になるので、本当にストレスが溜まっています(。ノω\。)


強力な日本語翻訳プロンプトをお持ちの場合は、DMで送信するか、私のXアカウントがプロフィールに固定している投稿にコメントしてください(っ˘̩╭╮˘̩)っ


私もまだ初心者ライターなので、時々間違いを犯します。特に、日本語をパッシブなレベルで習得しようとしているところなので、皆さんの応援をお願いします(◜‿◝)♡

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