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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第69話】「七ヶ月間眠り続けた少女」

【第69話】「七ヶ月間眠り続けた少女」



AURELIS SERENAのメディカル・プリザベーション・デッキの扉が、ついに再び閉じた。


スリーピングポッド07は、もう放棄されたクルーズ船の中にはない。


そのユニットは現在、ASTRAEONのメディカル・トランスポート・モジュールの中にある。


その内部では、18歳の人間族の少女がまだ眠っている。


顔には大きな変化はない。


しかし、以前はほとんど安定性を失いかけていたプリザベーション・システムには、今でははるかに安定した電力が供給されている。


ASTRAEONには、単に故障したポッドを維持するだけではなく、はるかに複雑な状態にも対応できるよう設計された医療設備がある。


Tsumugiはモジュールの隣に立っていた。


反対側にはRheaがいる。


Seraphielは、ASTRAEONの医療システムを通して全行程を監視している。


Euphoria Medical Instituteへ続く扉が開いた。


医療ドローンがすぐに近づいてくる。


「移送を開始できます」


Tsumugiがうなずく。


「ゆっくり」


「了解しました」


メディカル・トランスポート・モジュールが内部へ移動する。


Euphoria Medical Instituteは、AURELIS SERENAのメディカル・プリザベーション・デッキとはまったく違っていた。


点滅する照明はない。


壊れたパネルもない。


焼けたケーブルもない。


廊下は清潔で、明るい。


空調システムが温度を安定した状態に保っている。


いくつかの医療ドローンが彼らの横を通り過ぎ、別の治療室へ向けて医療器具を運んでいる。


Tsumugiはモジュールの横を歩く。


Rheaは内部の少女を見つめている。


「本当に大丈夫になるの?」


Seraphielが内部通信システムから答える。


「まだ断定できません」


Rheaが振り向く。


「あなた、普段はもっとはっきり答えられるでしょう」


「先ほどまで彼女は損傷したプリザベーション・システムの中にいました。状態が悪化し続ける設備の支援を受けながら、約7か月間、身体を維持していたためです」


Tsumugiが少し立ち止まる。


「つまり、問題は起こすことだけじゃない」


「その通りです」


「そのまま起こしたら?」


「リスクが高くなります」


Tsumugiがモジュールを見る。


「眠らせたままなら?」


「その場合もリスクは高まります」


Rheaが息を吐く。


「つまり、最初から完全に安全な選択肢はなかったってことね」


「より正確には、制御可能な範囲にあるリスクを選択しています」


Tsumugiは再び歩き出す。


「分かった」


彼らの決断を後悔する理由はない。


彼女を、より安全な場所へ連れてきた。


あとは、身体が回復処置を乗り越えられるようにするだけだ。


モジュールが専用治療室で停止する。


扉が閉じる。


医療システムが外部から部屋をロックする。


Tsumugiは観察パネルの前に立つ。


Seraphielが最初の検査を開始する。


「セルラー・スキャンを開始します」


スキャン光がAureliaの身体をゆっくりと通過する。


複数のスクリーンに生体データが表示される。


Tsumugiには、表示される医療用語のすべてを理解することはできない。


ただ、主要なインジケーターを見つめる。


心臓。


酸素供給。


細胞活動。


体温。


代謝。


神経系。


赤い警告はない。


しかし、いくつかのインジケーターがゆっくりと上下している。


Rheaも画面を見る。


「どう?」


「緊急手術を必要とする急性の損傷は確認されていません」


Rheaが息を吐く。


「よかった」


Seraphielが続ける。


「ただし、身体の代謝は依然として非常に低い状態です」


Tsumugiが尋ねる。


「プリザベーションの影響?」


「はい。彼女の身体は約7か月間、代謝が抑制された状態にありました」


「なら、無理に進めないで」


「そのため、回復処置は段階的に行います」


Tsumugiがうなずく。


「始めて」


セルラー・スキャン


数分が過ぎた。


誰も話さない。


Tsumugiは動き続けるデータを見つめていた。


そして、ふと気づいた。


「Seraphiel」


「はい?」


「まだ若いんだね」


「その通りです」


「それなのに、あの間ずっと一人だった」


Seraphielはすぐには答えなかった。


RheaがTsumugiを見る。


「家族のことを考えてる?」


「少し」


Tsumugiは再びポッドを見る。


「家族がいるなら、もう死んだと思っているかもしれない」


Rheaは否定しなかった。


「なら、家族にも知らせないとね」


「誰なのか分かればね。それまでは、彼女が目を覚ますのを待つしかない」


Rheaは黙った。


それが次の問題だった。


彼らが発見したのは、身元を確認できる情報を持たない少女だった。


簡単に使用できる身分証もない。


AURELIS SERENAからの通信もない。


そして、本人はまだ意識を取り戻していない。


Tsumugiは、服装や船の状態だけから結論を出したくなかった。


「今は患者」


Rheaがうなずく。


「そうね」


ニューラル・スキャン


セルラー・スキャンが終了すると、医療システムは神経系の検査へ移行した。


Seraphielがスキャン強度を下げる。


「ニューラル・スキャンを開始します」


脳活動のグラフが表示される。


いくつかのパターンがゆっくりと動いている。


Rheaが画面へ近づく。


「身体に反応はある?」


「非常に低いレベルですが、意識活動があります」


Tsumugiが振り向く。


「つまり、起きられる?」


「理論上は。しかし、まだ処置を急ぐべきではありません」


Tsumugiがうなずく。


「どうして?」


「神経系は抑制状態から回復し始めたばかりです。刺激を早く与えすぎると、身体が不安定な反応を示す可能性があります」


Rheaが手を上げる。


「じゃあ、待ちながらってことね」


「監視しながらです」


Tsumugiは少女を見る。


「分かった」


しばらくの間、彼らはただ待った。


AURELIS SERENAは外にある。


しかしASTRAEONは、再び静かな空間へ戻っていた。


銃声はない。


デブリもない。


暗い廊下もない。


聞こえるのは医療システムの音だけ。


Tsumugiは長い間、観察室に立っていた。


やがてRheaが話しかける。


「Captain」


「うん?」


「もし、彼女が目を覚ましたら……」


Tsumugiが振り向く。


「何?」


「いきなり船のことを聞かないで」


Tsumugiは少し黙った。


「どうして?」


Rheaが少女の顔を指す。


「彼女は、7か月分の人生を失ったばかりだから」


Tsumugiはその意味を理解した。


「そうね」


Rheaが続ける。


「まず、自分が安全だと分かるようにしてあげて」


Tsumugiがうなずく。


「賛成」


Seraphielが通信システムから付け加える。


「彼女の心理状態と生体状態に合わせて、覚醒手順を調整します」


Tsumugiが小さく笑う。


「Seraphiel」


「はい」


「マニュアルを読んでるみたいに話さないで」


「通信方法を調整できます」


Rheaが短く笑う。


「すぐ従うんだ」


Tsumugiも笑った。


それまで部屋を満たしていた緊張が、少しだけ和らぐ。


しかし、それも一瞬だった。


低温保存状態からの回復


Seraphielが次の段階を開始する。


以前のプリザベーション・システムは、もうそのまま維持する必要がない。


体温が段階的に上げられていく。


速すぎてはいけない。


遅すぎてもいけない。


ASTRAEONの医療システムが、あらゆる変化を監視する。


「低温保存状態からの回復処置を開始します」


Tsumugiは体温グラフを見る。


少し上がる。


止まる。


また上がる。


警告はない。


Rheaが腕を組む。


「まだ安定してる?」


「安定しています」


「心拍は?」


「ゆっくり上昇しています」


Tsumugiがガラスへ近づく。


少女の顔が、少しずつ変化しているように見えた。


先ほどまでのような冷たさがない。


皮膚に、少しずつ色が戻っている。


指が、ごく小さく動いた。


Rheaがすぐに気づく。


「動き始めた」


Tsumugiが振り向く。


Seraphielが確認する。


「その通りです。微細な運動反応を検出しました」


Tsumugiは何も言わなかった。


ただ待つ。


少女の指が、再び動く。


今度は、よりはっきりと。


そして眉がわずかに寄った。


まるで身体が、自分を取り巻く世界が変わっていることに気づき始めたかのように。


代謝安定化


最後の段階が始まる。


「代謝安定化を開始します」


医療システムが、身体機能を段階的に再調整する。


急激な動きはない。


奇跡のように見える処置もない。


すべてがゆっくりと進んでいく。


一つ、また一つと、インジケーターが安全範囲へ戻っていく。


Tsumugiが尋ねる。


「あとどれくらいで目を覚ます?」


「合併症がなければ、数十分以内に意識が戻る可能性があります」


Rheaが笑う。


「じゃあ、本当に成功したんだ」


Seraphielが答える。


「まだ完全には成功していません」


Rheaが眉を上げる。


「いい雰囲気を少しくらい維持させてくれてもいいでしょうに」


「患者はまだ目を開けていません」


Tsumugiが小さく笑う。


「そのままでいいよ」


彼らは再び待った。


時間は進み続ける。


10:00。


11:00。


12:00。


13:00。


誰も処置を急がせなかった。


Tsumugiは一度だけ観察室を離れ、食事を取りに行った。


戻ってきた彼女の手には、いくつかの飲み物があった。


Rheaが一つ受け取る。


「ありがとう」


TsumugiはSeraphielにも一つ渡す。


Seraphielは黙っている。


Rheaが彼を見る。


「飲まないの?」


Tsumugiが小さく笑う。


「そうだった」


二人は再び座った。


まるで長い病から回復する誰かが目を覚ますのを待っているような空気だった。


壊れた船から乗客を救出しているという感じではない。


それが、この状況で最も奇妙な部分だったのかもしれない。


彼らはまだ、彼女のことを何も知らない。


それでも少女がASTRAEONへ運ばれてきてから、その存在は少しずつ彼らの意識の中に入り込んでいた。


身分のためではない。


家名のためでもない。


ただ、彼女がまだ生きているからだった。


14時が近づいた頃、治療室から小さな音が聞こえた。


アラームではない。


警告でもない。


ただ、モニタリング・システムに変化が生じた音だった。


Seraphielがすぐに話す。


「Tsumugi」


Tsumugiが立ち上がる。


「何?」


「意識レベルが上昇しています」


Rheaも立ち上がる。


「本当に?」


「はい」


二人はガラスの前に立つ。


少女の目が、閉じたまぶたの下で動いている。


一度。


そして止まる。


数秒後、再び動く。


Tsumugiは何も言わない。


Rheaも黙っている。


Seraphielが自動システムの音量を下げる。


室内がさらに静かになる。


少女のまぶたが震える。


そして、ゆっくりと開いた。


明るい色の瞳が、医療室の天井を見つめる。


大きな反応はない。


叫び声もない。


パニックもない。


ただ、自分がどこにいるのかまだ理解できていない人間の、空白のような視線だけがあった。


呼吸が少し変化する。


瞳が左へ動く。


そして右へ。


医療機器を見る。


光を見る。


ガラスを見る。


そして、治療室の外にいる三人の姿を見る。


Tsumugiは通信パネルへ近づく。


すぐには中へ入らない。


「落ち着いて」


少女は答えない。


Tsumugiは低い声で続ける。


「もう安全だよ」


少女の瞳が、声の主へ向かう。


Tsumugiが続ける。


「私たちはAURELIS SERENAであなたを見つけた」


数秒が過ぎる。


少女の唇が動く。


出てきた声は、とても弱かった。


「……私……」


Tsumugiが近づく。


「無理しないで」


少女が唾を飲み込む。


まだ目は周囲に慣れようとしている。


「ここは……どこ……?」


「ASTRAEONの中」


少女が彼女を見る。


「ASTRAEON……?」


「うん」


RheaはTsumugiの数歩後ろに立っている。


Seraphielはすべてのインジケーターを監視し続けている。


少女は手を上げようとする。


動きは遅い。


Tsumugiが医療システムへ合図する。


「運動補助を有効化」


少女の腕が、少しだけ動く。


彼女は自分の手を見る。


まるで、その身体がまだ自分のものなのかを確かめるように。


そして再びTsumugiを見る。


「あなたは……誰……?」


Tsumugiが答える。


「私の名前はHoshizaki Tsumugi」


少女は黙った。


Tsumugiが続ける。


「ASTRAEONの船長」


少女が小さく繰り返す。


「Tsumugi……」


「うん」


過剰な形式ばったやり取りはない。


階級について尋ねることもない。


家族について話すこともない。


彼女はまだ弱すぎる。


Tsumugiが確認したいのは、一つだけだった。


「まだ具合が悪い?」


少女はゆっくりと首を横に振る。


「分からない……」


「無理しないで」


少女が小さくうなずく。


そして再び視線が動く。


今度は、よりはっきりとした意識がある。


部屋を見る。


医療機器。


ベッド。


医療用の制服。


そして再びTsumugiを見る。


「ここ……」


声は、ほとんど囁きだった。


「どこに……?」


「ASTRAEONの中だよ」


少女は眉を寄せる。


まるで、その名前に何の意味もないかのように。


そして尋ねた。


「どれ……」


声が途切れる。


Tsumugiは待った。


少女はもう一度、言葉を試みる。


「どれくらい……」


RheaがTsumugiを見る。


Seraphielがいくつかの自動処理を停止する。


少女はついに言葉を完成させた。


「私は、どれくらい眠っていたんですか……?」


部屋が静まり返る。


Tsumugiはすぐには答えなかった。


知らないからではない。


むしろ、答えを知っているからだった。


約7か月。


AURELIS SERENAが行方不明になってから7か月。


少女がSLEEPING PODへ入ってから7か月。


彼女が知っていた世界が、自分のいないところで動き続けていたかもしれない7か月。


TsumugiがSeraphielを見る。


Seraphielも答えない。


Rheaが視線を落とす。


少女は待っている。


まだ瞳は弱い。


しかし、そこにはもう意識がある。


彼女は何が起きたのかを知らない。


目の前にいる人々が誰なのかすら、まだ知らない。


ただ、自分が眠っていたことだけは分かっている。


そして、その簡単な質問への答えが、単なる救助処置を超える、はるかに大きな出来事の始まりになる。


Tsumugiがようやく口を開く。


しかし、一言も発する前に――


Seraphielが静かに言った。


「Tsumugi」


Tsumugiが振り向く。


「答える前に、一つ確認する必要があります」


Tsumugiがスクリーンを見る。


Rheaも画面を見る。


少女はまだ彼らを見つめている。


待っている。


そして、その数秒間――


誰も、彼女がどれほど長く眠っていたのかを告げなかった。


【次話 第70話 ― 「私の名前はアウレリアです」】


あらすじ: Aureliaは完全に意識を取り戻した後、少しずつ話し始める。彼女は自分をAurelia Veyrienneとだけ名乗り、Dukeの家系や自身の貴族としての身分については口にしない。彼女はまだ、AURELIS SERENAでの旅が始まってから、ほんの短い時間しか経っていないと思っている。やがて約7か月が経過したことを知ったAureliaは、言葉を失う。


同時に、Seraphielは彼女の生体認証登録データに不一致があることを発見し始める。


【第70話へ続く……】

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