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ASTRAEON VELORIA――銀河を旅する自由傭兵――  作者: Ren Hazumi


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【第64話】「私たちは契約を受けない」

【第64話】「私たちは契約を受けない」


ASTRAEONは、契約に関するすべての手続きが完了した後、Eldras採掘回廊における最後の作戦区域を離れた。


もう護衛しなければならない鉱物輸送船はない。


検査しなければならない採掘施設もない。


収集しなければならない保安報告もない。


そして、彼らがフロンティアへ入って以来初めて、ASTRAEONのブリッジにあるメインスクリーンには、仕事の一覧が表示されていなかった。


残されているのは、ただ一つの航路だけ。


Eldras出航回廊。


ASTRAEONを、より秩序立った星系間領域へ戻すための出口航路だ。


ブリッジでは、Tsumugiが航法スクリーンの前に立っていた。


その目の前には、ASTRAEONの現在位置から回廊の出口地点まで伸びる青い航路が表示されている。


Seraphielは、その少し離れた場所に立っていた。


いつものように、彼女は航行に必要なすべてのデータを準備していた。


「出航航路は確認済みです、Tsumugi」


Tsumugiは頷いた。


「交通状況は?」


「正常です。外縁採掘回廊の分岐地点を通過した後、民間出航航路へ入ります」


「つまり、もう採掘管制との調整はない?」


「契約に関する部分は完了しています。Eldras領域を離れるまでは、宇宙交通管制の指示に従うだけです」


Tsumugiはもう一度、地図を見た。


「分かった」


そして、長く息を吐いた。


まるで今になって初めて、本当に仕事が終わったのだと実感したかのようだった。


「Seraphiel」


「はい?」


「私たち、もう終わったんだよね?」


Seraphielは小さく微笑んだ。


「正式には、契約は完了しています。私たちの義務はすべて依頼主側に受領され、支払いもすでに入金されています」


「じゃあ……」


Tsumugiは少し黙った。


そして、とても真剣な声で言った。


「しばらく、契約は受けない」


SeraphielはTsumugiを見つめた。


「……」


数秒が過ぎた。


やがて、Seraphielの微笑みが少しだけ大きくなった。


「ようやく言ってくれましたね」


Tsumugiは振り向いた。


「どうして、ずっとその言葉を待っていたみたいに聞こえるの?」


「Teralisを離れてから、私たちの時間のほとんどが仕事に費やされていましたから」


「確かにそうだね」


「それに、この契約が終わる前にも、支払いを受け取ったら休むとTsumugiは言っていました」


Tsumugiは頷いた。


「うん」


両手をポケットに入れる。


「休暇を取りたい」


Seraphielは落ち着いた声で答えた。


「私も賛成です」


「本当に?」


「もちろんです」


Tsumugiは微笑んだ。


「じゃあ、決まりだね」


彼女はスクリーンから離れるように振り返った。


「しばらく、契約は受けない」


今度は、よりはっきりとした声だった。


「傭兵契約も」


「護衛も」


「偵察も」


「警備も」


「それから、もし誰かが私たちに契約の話を持ち込んできたら……」


Tsumugiは自分を指差した。


「『船長は休暇中です』って答えて」


Seraphielは小さく笑いそうになるのを堪えた。


「ASTRAEONの暫定的な運用方針として記録しておきます」


「そんなに正式なものみたいにしないで」


「ですが、船長の正式な決定です」


「……」


Tsumugiは頬を掻いた。


「じゃあ、あまり長く書かないで」


「承知しました」


Seraphielはデータ端末を開いた。


「ASTRAEON運用状況:非契約航行」


Tsumugiは満足そうに頷いた。


「それでいい」


 


しばらくして、その発表がクルー全員に伝えられた。


彼らはASTRAEON内部のラウンジの一つに集まっていた。


Rheaが最も早くやって来た。


Tsumugiが彼女たちを呼んだと聞いた瞬間、新しい仕事があるのだと思ったのだ。


しかし、船長の決定を聞いた途端、その表情が変わった。


「つまり……」


RheaはTsumugiを指差した。


「本当に契約を受けないの?」


「そう」


「どれくらい?」


Tsumugiは肩をすくめた。


「まだ分からない」


Rheaは黙った。


そして、狐の耳がすぐにピンと立ち上がった。


「休暇?」


「うん」


「本当に休暇?」


「うん」


「契約なし?」


「うん」


「巡回なし?」


「うん」


「船を追いかける必要もなし?」


「Rhea」


「はい?」


「質問が多すぎるよ」


Rheaはすぐに満面の笑みを浮かべた。


「よし!」


両手を握りしめる。


「やっと!」


部屋の反対側に座っていたLanは、その反応を見て微笑んだ。


「どうやらRheaは、かなり休暇を必要としていたみたいですね」


Rheaは振り向いた。


「Lan、まるで私が一番疲れてるみたいな言い方しないでよ」


Lanは眉を上げた。


「違うの?」


「私はまだ元気だよ」


ずっと技術データを読んでいたCalistaが口を挟んだ。


「身体的に元気だからといって、疲れていないとは限らない」


Rheaは彼女を見た。


「Calista……」


「何?」


「便乗しないで」


Calistaは再びスクリーンへ視線を戻した。


「事実を言っただけ」


Tsumugiはソファに腰を下ろした。


そして、一人ずつ全員を見た。


「とにかく、お金はもう受け取った」


Lanがすぐに興味を示した。


「現在の残高はいくらですか?」


近くにある端末からSeraphielが答えた。


「Eldrasの契約金が入金された後、TsumugiのGalactic Credit残高は約2,200,000 Galactic Creditです」


Rheaがすぐに振り向いた。


「220万?」


「うん」


「本当に?」


Tsumugiは頷いた。


「本当に」


Rheaはソファに身体を預けた。


「……私たち、金持ちじゃん」


Tsumugiは小さく笑った。


「さっきそう言ったでしょ」


LanはTsumugiを見る。


「船長」


「何?」


「休暇だからといって、全部使い切らないでくださいね」


Tsumugiは不満そうな顔をした。


「そんなことしないよ」


Calistaがすぐに口を挟んだ。


「本当に?」


「本当」


「船長は以前、情報のために5,000 Galactic Creditを支払いました」


Tsumugiはすぐに黙った。


Rheaが振り向く。


「5,000?」


LanもTsumugiを見る。


「船長?」


Tsumugiは顔を逸らした。


「それは別の話」


Calistaは腕を組んだ。


「別の話?」


「うん」


「それで、結果は?」


Tsumugiは黙り込んだ。


Seraphielが落ち着いた声で答えた。


「その情報自体は有用でした。ただ、TsumugiはまだGalactic Creditの経済的価値に慣れていませんでした」


Tsumugiはため息をついた。


「もう学んだよ」


Lanは薄く微笑んだ。


「それなら、休暇の予算を作りましょう」


Tsumugiは彼女を見る。


「予算?」


「はい」


Lanは自分の端末を取り出した。


「しばらく契約を受けないのであれば、どれだけ使っていいのか決めておく必要があります」


Rheaも頷いた。


「それは理にかなってる」


Calistaも同意した。


「特にASTRAEONには、継続的な運用費が必要だから」


Tsumugiは頷いた。


「確かに」


そしてSeraphielを見る。


「船の通常経費は?」


「通常航行であれば問題ありません。ただしASTRAEONには、燃料、整備、食料、予備部品、そして民間施設に停泊する場合のドッキング費用が必要です」


「つまり、無駄遣いはできない」


「その通りです」


Tsumugiは少し考えた。


「じゃあ、使ったお金に見合う観光地を探すのはどう?」


Lanは微笑んだ。


「そのほうが理にかなっていますね」


Rheaがすぐに手を上げた。


「一つお願いがある」


Tsumugiは彼女を見る。


「何?」


「リゾート」


「リゾート?」


「うん」


Rheaは勢いよく頷いた。


「ここまで来たんだから、本当に休暇らしい場所へ行きたい」


Tsumugiは微笑んだ。


「分かった」


Lanは端末の画面を切り替えた。


「じゃあ、私が行き先を探し始めます」


 


Lanはすぐにグランド・サロンの端末の一つを使い始めた。


目の前の大型スクリーンが、民間旅行のカタログへと切り替わる。


銀河各地のさまざまな地域が表示された。


リゾート惑星。


娯楽ステーション。


軌道都市。


海浜惑星。


雪の世界。


文化コロニー。


さらに、星系間ショッピングの中心地として有名な地域まである。


RheaはLanの後ろに立った。


「あれ」


Lanは画面を見る。


「リゾート惑星?」


「うん」


「どうして?」


「海が綺麗」


Calistaがその画像をちらりと見る。


「ドッキング費用はいくら?」


Lanはデータを確認した。


「かなり高い」


「じゃあ、別の場所を探して」


Rheaは鋭く振り向いた。


「Calista!」


「何?」


「まだ場所を見てもいないじゃん」


「ドッキング費用は見た」


「休暇はドッキング費用だけじゃないでしょ!」


Calistaは肩をすくめた。


「ドッキング費用が高すぎるなら、そのお金をもっと有効なことに使える」


Rheaは頭を抱えた。


「どうして技術者ってみんなこうなの?」


Calistaは淡々と答えた。


「機械は休暇への情熱では動かないから」


その会話を聞いていたTsumugiが笑った。


「まあまあ」


彼女はカタログを見る。


「休暇に行くなら、それぞれ自分が好きなものを探そう」


Lanは頷いた。


「賛成です」


TsumugiはLanを指した。


「Lanは、買い物や文化を楽しめる場所を探して」


続いてCalistaを指す。


「Calistaは、産業に関係する場所を探していいよ」


Calistaがすぐに興味を示した。


「産業観光?」


「うん」


Calistaは目の前のスクリーンを見る。


その瞳が少しずつ輝き始めた。


「古い造船所や、機械工場、船舶生産施設、あるいは一般公開されている採掘施設があれば……」


そこで言葉を止めた。


「面白そう」


Rheaは信じられないという表情で彼女を見る。


「それを休暇って呼ぶの?」


Calistaは振り向いた。


「私はそう思う」


「じゃあ、私たちの好みは本当に違うね」


Calistaは肩をすくめた。


「少なくとも、自分の好きなものは分かってる」


Tsumugiは微笑んだ。


「じゃあVesperaは?」


それまで窓の近くで静かに座っていたVesperaが振り向いた。


「私?」


「うん」


「まだ通ったことのない航路を見てみたい」


Tsumugiは微笑んだ。


「いかにもVesperaらしいね」


Vesperaはスクリーンを見る。


「観光地だからといって、必ず一つの惑星に滞在する必要はない」


「どういう意味?」


「民間の探査航路がある」


Vesperaは地図を拡大した。


「いくつかの航路は、安全な星雲、すでに観測された小惑星帯、そして船から見ることのできる天文現象が存在する地域を通っている」


Rheaがすぐにスクリーンを指差した。


「それ!」


Vesperaは彼女を見る。


「何?」


「ASTRAEONから天文現象が見られるなら、そこがいい」


Tsumugiも頷いた。


「私も」


Seraphielが微笑む。


「それなら選択肢はかなり広いですね」


Lanが付け加えた。


「ただし、最終的な主目的地は決める必要があります」


Tsumugiは頷いた。


「そうだね」


彼女は大型スクリーンを見つめた。


しばらくの間、誰も話さなかった。


選択肢が尽きたからではない。


むしろ、その逆だった。


選択肢が多すぎたのだ。


銀河はあまりにも広い。


そしてASTRAEONを手に入れて以来初めて、Tsumugiは契約を基準に目的地を選ぶ必要がなかった。


報酬がいくらなのかを考える必要もない。


リスクを計算する必要もない。


作戦条項を読む必要もない。


目標について考える必要もない。


ただ一つだけ考えればいい。


「私たちは、どこへ行きたいんだろう?」


Tsumugiは微笑んだ。


「これ、意外と難しいね」


Rheaが笑った。


「8,600メートルの船を操縦できる船長が、休暇先を選ぶだけで困ってる」


Tsumugiは彼女を見る。


「笑わないで」


「笑ってないよ」


「明らかに笑ってる」


Rheaは口を閉じた。


「笑ってない」


Tsumugiは彼女を指差した。


「笑ってる」


Rheaはとうとう大きな声で笑い始めた。


 


かなり長い話し合いの後も、彼らは全員が納得できる一つの目的地を決められなかった。


Lanはいくつか興味深い場所を見つけた。


ショッピングセンターで有名な軌道都市。


毎年文化祭が開催される惑星。


星間ホテルとレストランの複合施設を備えた娯楽ステーション。


さらに、人工海が惑星表面の大部分を取り囲んでいるリゾート惑星もあった。


しかし、どの選択肢にも欠点がある。


遠すぎる。


高すぎる。


人が多すぎる。


あるいは、全員には合わない。


Tsumugiはついに身体を預けた。


「もっと具体的なものを探す必要がありそうだね」


Seraphielは頷いた。


「私もそう思います」


「観光専用のデータベースってある?」


「あります」


「どれくらい大きい?」


Seraphielは微笑んだ。


「非常に大規模です」


Tsumugiは彼女を見る。


「じゃあ、探して」


「条件は?」


Tsumugiは考えた。


「ASTRAEONで行ける場所」


「承知しました」


「フロンティアには近すぎない」


「承知しました」


「軍事区域ではない」


「承知しました」


「紛争が起きている場所ではない」


「承知しました」


「できれば……」


Tsumugiは言葉を止めた。


全員を見る。


Rheaは期待に満ちた表情で待っている。


Lanはまだ旅行カタログを開いている。


Calistaは産業施設のデータを読んでいる。


Vesperaは地図を確認している。


Tsumugiは微笑んだ。


「……全員が楽しめる場所」


Seraphielは頷いた。


「承知しました」


そして検索を開始した。


 


Seraphielが検索している間も、ASTRAEONは出航航路へ向けて進み続けた。


船の外では、Eldrasの景色が変わり始めていた。


先ほどまで宇宙空間を埋め尽くしていた採掘施設が、次第に遠ざかっていく。


回廊を忙しく出入りしていた鉱物輸送船も、少なくなっていく。


センサーに映っていた小さなステーションも、ゆっくりと後方へ取り残されていった。


その代わりに、航法航路は次第に整然としていく。


遠方にFTL航行用の標識灯が見え始めた。


大型貨物船が並行航路を進んでいる。


反対側では、数隻の小型民間船が宇宙交通管制の指示に従い、分岐地点へ向かっていた。


ASTRAEONが注目を集めることはなかった。


ただEldrasを離れようとしている船の一隻にすぎない。


それでも、その巨体は他のいくつかの船に距離を取らせていた。


Seraphielが宇宙交通管制から指示を受信した。


「ASTRAEON VELORIA、こちらEldras出航管制。出航回廊への進入を確認しました。指定された船首方位を維持してください。現在速度は承認されています。FTL進入区域を通過後、FTL航行への移行が許可されます」


Seraphielが答える。


「承知しました。ASTRAEON VELORIA、指定方位を維持します」


Tsumugiはスクリーンを見つめた。


「FTL地点まではどれくらい?」


「数十分です」


「分かった」


アラームはない。


脅威もない。


緊急通信もない。


仕事もない。


むしろTsumugiは少し妙な気分になった。


「Seraphiel」


「はい?」


「すごく静かだね」


Seraphielは微笑んだ。


「それが船長の望んでいたことではありませんか?」


Tsumugiは黙った。


そして、小さく笑った。


「そうだね」


 


グランド・サロンでは、観光地の検索が続いていた。


Rheaはすでにリゾートの一覧を開き始めている。


Lanはいくつかのショッピングカタログを見つけた。


Calistaは、数分間その場から動かなくなるほど興味を引かれた産業観光施設を見つけた。


Vesperaは天文地図を開いている。


そしてSeraphielはまだデータを処理していた。


Tsumugiはついにブリッジを離れた。


グランド・サロンへ向かって歩いていく。


中へ入った途端、Rheaが彼女を呼んだ。


「船長!」


「何?」


「これ見て」


Rheaは広大な青い海を持つ惑星を見せた。


「綺麗でしょ?」


Tsumugiは見る。


「綺麗だね」


「じゃあ、ここに行こう」


Lanがすぐに口を挟んだ。


「まだ決まっていません」


Rheaは振り向く。


「どうして?」


「ホテル代です」


Rheaは表示されている数字を見る。


そして黙った。


「……高い」


Calistaが小さく笑った。


「だから言ったでしょう」


Rheaは眉をひそめる。


「嬉しそうにしないでよ」


Lanは再びカタログを見る。


「それに、ここはかなり混雑しています」


「それで?」


「ASTRAEONが入れば、かなり注目を集める可能性があります」


Tsumugiはすぐに意味を理解した。


「確かに」


彼らはすでに、ASTRAEONの大きさと評判によって、その存在を隠すことが難しいと学んでいた。


Tsumugiは、始まったばかりの休暇が、写真撮影の要求や船についての質問、あるいは契約を持ちかけようとする人々の連続に変わることを望んでいなかった。


本当に休みたかったのだ。


「人が多すぎる場所はやめよう」


Lanは頷いた。


「分かりました」


Vesperaが付け加える。


「観測航路がある場所なら、なお良いでしょう」


Calistaはスクリーンから目を離さずに手を上げた。


「それと、見学できる産業施設があるなら、私は構わない」


Rheaはため息をついた。


「どうしてみんな条件があるの?」


Tsumugiは微笑んだ。


「みんなのための場所を探してるからだよ」


Rheaはようやく頷いた。


「分かった」


そして再びスクリーンを見る。


「じゃあ、私も手伝う」


 


しばらくして、Seraphielがようやくグランド・サロンへ入ってきた。


表情は穏やかだった。


しかし、その立ち方を見れば、Tsumugiには彼女が何かを持ってきたことが分かった。


「見つかった?」


Seraphielは頷いた。


「いくつか候補を見つけました」


Lanはすぐにカタログを閉じた。


「いくつ?」


「数多くあります。ただ、Tsumugiが提示したすべての条件を適用したところ、候補はかなり絞られました」


Rheaが立ち上がった。


「つまり、あるの?」


「あります」


Vesperaが彼女を見る。


「どこ?」


Seraphielはすぐには答えなかった。


大型スクリーンを開く。


銀河地図が表示された。


いくつかの航路が点滅する。


そして、その中の一つの地域が強調された。


銀河レジャー回廊


Tsumugiはスクリーンを見つめた。


「銀河レジャー回廊?」


「はい」


Seraphielは地図を拡大した。


「これは複数の観光地域を結ぶ、星系間の民間航路網です。一つの惑星だけではありません。航路上には、それぞれ異なる特色を持つ複数の目的地があります」


Lanがすぐに近づく。


「ショッピングは?」


「あります」


Rheaが尋ねる。


「リゾートは?」


「あります」


Calistaがすぐに尋ねた。


「産業観光は?」


Seraphielは微笑んだ。


「一部の航路では、観光客向けに公開されている産業施設も利用できます」


Calistaはすぐに頷いた。


「いいね」


Vesperaは地図を見る。


「探査航路は?」


「いくつかの観測ルートと天文観測回廊があります」


Vesperaは薄く微笑んだ。


「面白そう」


Tsumugiはスクリーンを見つめた。


「安全なの?」


「銀河レジャー回廊の主要区域は民間航路です。ただし、もちろん銀河に完全にリスクのない地域はありません」


Tsumugiは頷いた。


「それはそうだね」


Seraphielは続ける。


「さらに重要なのは、この航路が私たちの『契約を受けない』という決定に合っていることです。民間船として航行し、現地の手続きに従って観光施設を利用できます」


Tsumugiは微笑んだ。


「じゃあ……」


Rheaを見る。


続いてLan。


Calista。


Vespera。


そしてSeraphiel。


「銀河レジャー回廊?」


Rheaは拳を握った。


「私は賛成」


Lanも頷く。


「私も」


Calistaはもう一度地図を見る。


「見てみたい施設がいくつかある」


Vesperaは静かに答えた。


「私は航路に興味があります」


SeraphielはTsumugiを見る。


「決定は船長にお任せします」


Tsumugiはスクリーンを見る。


数秒間、何も言わなかった。


やがて微笑んだ。


「分かった」


彼女は立ち上がる。


「銀河レジャー回廊へ行こう」


Rheaがすぐに歓声を上げた。


「休暇!」


Lanは微笑んだ。


「それなら、目的地の一覧を準備します」


Calistaが言う。


「私は産業施設の一覧を保存しておく」


Vesperaも頷いた。


「私は観測航路を確認する」


TsumugiはSeraphielを見る。


「あなたは?」


Seraphielは優しく微笑んだ。


「航路と、旅に必要なすべての準備を担当します」


「頼んだよ」


Tsumugiはグランド・サロンの扉へ向かって歩く。


しかし、出る前に立ち止まった。


「あ」


全員が彼女を見る。


Tsumugiは振り向いた。


「旅の途中で、誰も契約を受けないこと」


Rheaが手を上げた。


「受けない」


Lanも頷く。


「分かりました」


Calistaが答える。


「私は興味ない」


Vesperaはただ頷いた。


Seraphielは微笑んだ。


「船長の指示に従い、届いた契約の申し出はすべてお断りします」


Tsumugiは満足そうに頷いた。


「それでいい」


そして再び歩き始めた。


今度は、その足取りがずっと軽かった。


 


その後、ASTRAEONはEldras出航管制から出航許可を受けた。


「ASTRAEON VELORIA、Eldras出航回廊を離れるためのクリアランスを取得しました。FTL航行への移行可能時間帯が利用できます。指定航路に従ってください」


Seraphielが答える。


「承知しました。ASTRAEON VELORIA、FTL航行手順を開始します」


ブリッジで、Tsumugiは再び船長席に座った。


目の前には、銀河レジャー回廊へ向かう航路が開かれている。


契約の表示はない。


目標もない。


任務もない。


あるのは、ただの旅だけだった。


Seraphielが彼女の隣に立つ。


「Tsumugi」


「うん?」


「準備はできていますか?」


Tsumugiは微笑んだ。


「うん」


彼女は前方の星々を見る。


「今回は……」


息を吸う。


「……本当に休暇へ行くんだ」


「はい」


SeraphielがFTLシステムを起動する。


窓の外の光が変わり始めた。


星々が線状に伸びていく。


ASTRAEONの前方の空間が、長い航路を開くかのように変化する。


そして――


ASTRAEONはFTL航行へ入った。


全長8,600メートルの船がEldrasを離れる。


その後方で、フロンティアがゆっくりと消えていく。


前方には――


星系間の民間航路が待っている。


銀河レジャー回廊までの旅には、数日を要する。


そして、長い間で初めて――


Tsumugiは働く必要がなかった。


ただ旅を楽しめばいい。


しかし彼らはまだ知らなかった。


この穏やかな旅が、彼らがまったく探していなかったものへASTRAEONを導くことを。


それは、星間空間の中であまりにも長い間、待ち続けていたもの。


本来なら――


もう生きていないはずのものだった。


【次話 第65話 ― 「観光航路へ」】


「観光航路へ」


ASTRAEONは星系間の民間航路を通り、銀河レジャー回廊へ向けて旅を始める。Tsumugiは初めて、本当の意味で豪華客船の所有者としての生活を楽しもうとしていた。食事をし、休み、娯楽を楽しみ、本を読み、契約のない時間を過ごす。


Rheaはリゾートについて考え始め、Lanはショッピングカタログを眺め、Calistaは産業観光施設を探し、Vesperaは探査と観測の航路を調べていた。


旅は穏やかに進み、フロンティアとは大きく異なる雰囲気だった。


しかしASTRAEONがPelagic Meridian Routeへ向けて旅を続ける中、Seraphielは主要航路の外側に何かを検知する。


一隻の船。


戦艦ではない。


海賊船でもない。


それは――


一隻の民間船だった。


【第65話へ続く……】

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