【第63話】「フロンティアでの最後の仕事」
【第63話】「フロンティアでの最後の仕事」
Eldras Mining Station 7は、再び動き始めていた。
それまで拘束されていた何隻かの鉱物輸送船は、すでにドッキング区域を離れている。
その航行灯が、交通管制によって指定された出口航路へ向かってゆっくりと移動していた。
ステーション内部でも、活動は徐々に通常へ戻り始めていた。
しかし、ASTRAEONの仕事はまだ終わっていない。
Tsumugiは作戦室に立ち、目の前に開かれたホログラム画面を見つめていた。
Eldras Mining Corridorの地図が、部屋の大部分を埋め尽くしている。
アステロイド航路。
採掘施設の位置。
鉱物輸送航路。
小規模ステーション。
そしてOuter Mining Corridorへ続く航路。
すべてが明確に表示されていた。
Seraphielが彼女の隣に立っている。
「Tsumugi。契約状況を更新しました」
「あとどれくらい残っている?」
「最終段階です」
Tsumugiは地図を見つめた。
「じゃあ、これが終われば、本当に帰れる」
「契約上は、そうです」
Tsumugiが笑う。
「よかった」
部屋の反対側でMobile Frameのデータを確認していたRheaが、すぐに顔を上げた。
「艦長」
「何?」
「これが最終段階なら……」
彼女は自分自身を指差す。
「私、出てもいい?」
TsumugiはRheaを見る。
「出る?」
「Mobile Frameで」
Tsumugiはため息をついた。
「Eldrasに到着してからずっと、その機会を待っていたんだな」
「もちろん」
Rheaが満面の笑みを浮かべる。
「使わないなら、何のために持ってきたの?」
Engineeringの報告書を読んでいたCalistaがすぐに答えた。
「緊急時のため」
Rheaが振り返る。
「そういう言い方はやめて」
「事実だから」
「Calista」
「何?」
「Mobile Frameを消火器みたいに聞こえさせないで」
Calistaが肩をすくめる。
「正しく使うなら、実際そういうもの」
RheaはTsumugiを見る。
「艦長」
Tsumugiには、その話がどこへ向かうのか分かっていた。
「分かった」
Rheaの目が一瞬で輝く。
「本当に?」
「本当だ」
「本当にいいの?」
「そうだ」
Rheaが拳を握る。
「よし!」
Tsumugiは人差し指を一本立てる。
「ただし、Mobile Frameが本当に必要な作戦に限る」
Rheaは黙った。
「……敵を探しちゃダメ?」
「ダメ」
「必要がないなら戦っちゃダメ?」
「その通り」
「船を追いかけちゃダメ?」
「その通り」
Rheaがため息をつく。
「艦長は厳しいな」
契約書類を確認していたLanが笑う。
「そうしないと、ルールを与えなかったときにお前が何をするか分かっているからな」
RheaがLanを見る。
「私、そこまでひどくない」
Calistaが即答した。
「ひどい」
「Calista!」
Tsumugiが小さく笑う。
「もういい。準備して」
Rheaが立ち上がる。
「了解!」
彼女はすぐに部屋を出ていった。
Calistaが首を振る。
「本当に嬉しそう」
「好きにさせておこう」
Tsumugiは再び地図を見る。
「今回は、ちょうど彼女に合った仕事がある」
最後の目的地は、Outer Mining Corridorにある一つの産業航路だった。
そこに巨大な採掘拠点が一つ存在するわけではない。
その区域は、輸送航路によって接続された複数の鉱物処理施設から構成されている。
遠方では、大型のアステロイドがゆっくりと移動している。
すでに採掘されたものもある。
まだ手つかずのものもある。
一時的な産業構造物が設置されているものもいくつかあった。
VesperaはASTRAEONの航行室に立っている。
その前では、アステロイド区域の三次元地図がゆっくりと動いていた。
彼女は一つの航路を拡大する。
「Tsumugi」
「何?」
「航路を確認しました。以前のデータと比べて、いくつかのアステロイドの位置が変化しています」
Tsumugiが近づく。
「どのくらい?」
「鉱物輸送航路を変更する必要がある程度です」
Lanも画面を見る。
「航路が変わるなら、貨物船は別のルートを使わなければならない」
「その通り」とVesperaが答える。
「そして別のルートを使うと?」
「輸送時間が増えます」
Lanがすぐにうなずく。
「なら、補償も計算する必要がある」
Tsumugiは二人を見る。
「あなたたちは、本当にいつも違うことを考えるな」
Vesperaが薄く笑う。
「安全な航路と利益の出る航路が、いつも同じとは限りません」
Lanが続ける。
「だから、両方必要なんだ」
Tsumugiがうなずく。
「なら、まず安全な航路を選んで」
LanがTsumugiを見る。
「艦長、最も速い航路は選ばないんですか?」
「選ばない」
「どうして?」
「もうすぐ終わるから」
Tsumugiは地図を指差す。
「安全ではない航路を無理に船に通らせて、契約を終えた後に新しい問題を作りたくない」
Vesperaが微笑む。
「私も、その判断がいいと思います」
Tsumugiが振り返る。
「あなたもそう思う?」
「はい」
「なら、頼む」
「了解しました」
Vesperaは新しい航路の設定を始めた。
一つずつ。
密集したアステロイド航路を避ける。
岩石の動きが不安定な区域を回避する。
鉱物輸送船には、より広い航行回廊を設定する。
直行航路ほど速くはない。
しかし、はるかに安全だった。
Mobile Frameハンガーでは、RheaがすでにValkyrieの中にいた。
Calistaはプラットフォームの下に立っている。
機械接続部を一つずつ確認していた。
「右スラスター」
「正常」
「左スラスター」
「正常」
「前方センサー」
「正常」
「兵装制御」
「正常」
Calistaが止まる。
「張り切りすぎないで」
Rheaが笑う。
「嬉しいだけ」
「嬉しさで、ここがアステロイド区域だということを忘れないで」
「分かってる」
「ここでは小さなミスでもMobile Frameを破壊する可能性がある」
「分かってる」
「それにMobile Frameが壊れたら――」
「分かってるって!」
Calistaが顔を上げる。
Rheaは笑った。
「本当に分かってる」
Calistaがうなずく。
「それならいい」
そしてデータパネルに触れる。
「Vesperaから航路が送られてきた」
「どう?」
「かなり複雑」
Rheaが笑う。
「いいね」
Calistaが彼女を見る。
「複雑な航路が好きなの?」
「そのほうが面白い」
「私は違う」
Rheaが笑う。
「怖いの?」
Calistaが鼻を鳴らす。
「私はエンジニア」
「それで?」
「怖くない」
「それならいい」
CalistaはValkyrieを見る。
「ただ、避けられた損傷を修理するのは嫌なだけ」
Rheaが笑う。
「じゃあ、頑張る」
「頑張るだけじゃ足りない」
「分かった」
Rheaは通信画面越しにCalistaを見る。
「気をつける」
Calistaがうなずく。
「それならよし」
ValkyrieがASTRAEONのハンガーから出る。
一機だけではない。
採掘施設所属の産業用ドローンが数機、その前を移動している。
任務は単純だった。
航路を確認する。
移動する岩石を特定する。
データを管制センターへ送る。
Valkyrieはその後ろにいる。
Rheaは航行指示に従っていた。
「Rhea。右へ20度」
Vesperaの声が通信を通じて聞こえる。
「了解」
Valkyrieが移動する。
巨大なアステロイドが左側を通過する。
RheaはMobile Frameの機体を少し旋回させた。
「いいね」
「速度を上げすぎないでください」
「分かってる」
「本気で言っています」
「私も本気だよ」
Vesperaはしばらく黙った。
そして答える。
「分かりました」
Rheaは笑う。
その一瞬一瞬を楽しんでいた。
敵艦隊はいない。
大規模な戦闘もない。
爆発もない。
それでも彼女にとっては、Mobile Frameを使ってアステロイドの間を移動するだけで十分楽しかった。
遠方で、一機の採掘ドローンが停止した。
Rheaはすぐに動きを遅くする。
「どうした?」
Vesperaが答える。
「ドローンが金属物体を発見しました」
「採掘設備?」
「まだ分かりません」
Rheaが画面を見る。
「危険?」
「脅威の兆候はありません」
Rheaは待つ。
「それなら?」
「確認します」
Rheaが笑う。
「了解」
Valkyrieが近づく。
その物体は船ではなかった。
兵器でもない。
Mobile Frameでもない。
ただ、アステロイドから外れた古い採掘構造物の一部だった。
Rheaがため息をつく。
「それだけ?」
「その通りです」
「残念」
Vesperaが落ち着いた声で答える。
「私たちは仕事をしています」
Rheaが笑う。
「はいはい」
そしてCalistaへ座標を送る。
数秒後、Calistaの声が聞こえた。
「確認しました。それは古い採掘構造物の一部です。危険はありません」
Rheaがうなずく。
「じゃあ航路に戻る」
「了解」
Rheaが外で検査を行っている間、CalistaはASTRAEON内部で作業していた。
Outer Mining Corridorの産業システムには、何年も稼働し続けている施設がいくつもある。
一部の機械はまだ旧式の設計を使用している。
別のものはすでに更新されている。
しかし、それらはすべて接続されている。
一つの施設が停止すれば、鉱物輸送に支障が出る可能性がある。
Calistaはデータを確認する。
「Seraphiel」
「はい、Calista?」
「施設の制御ネットワークへのアクセスを」
「限定アクセスが利用可能です」
「それで十分」
彼女は機械データを開く。
「ふうん」
Seraphielが尋ねる。
「問題がありますか?」
「大きな問題ではない」
Calistaが一つの部分を拡大する。
「冷却ポンプが働きすぎている」
「危険ですか?」
「まだ」
「放置したら?」
「効率が落ちる」
「どのくらい?」
「大したことはない」
Calistaは考える。
「でも、この状態で何か月もシステムを動かし続けたら、維持費が上がる」
Seraphielが少し黙る。
「修理しますか?」
「うん」
「許可はありますか?」
Calistaが止まる。
そして笑った。
「いい質問」
彼女は施設管制センターへ連絡する。
「Eldras Mining Station Industrial Control、こちらASTRAEONのCalista Ferro」
オペレーターが答える。
「通信を受信しています」
「処理施設3の冷却システムに非効率な部分を発見しました」
「どのような問題ですか?」
「冷却ポンプが通常の必要量を超えて稼働しています」
「システムは緊急状態ですか?」
「いいえ」
「停止する必要は?」
「ありません」
「では、何を推奨しますか?」
Calistaはデータを見る。
「再調整」
オペレーターが黙る。
「どのくらいかかりますか?」
「長くはかからない」
「実施できますか?」
Calistaが画面を見る。
「できる」
「まず手順を送ってください。こちらで検証します」
Calistaが笑う。
「了解」
通信を切る。
Seraphielが尋ねる。
「直接修理しなかったのですね」
「私たちの船じゃないから」
「その通りです」
「効率が悪いと思った機械を全部私が触っていたら、あとで怒られる」
「その可能性は高いです」
Calistaが小さく笑う。
「少なくとも、あなたは分かっている」
契約室では、LanがRheaが最も嫌う作業を進めていた。
書類だ。
彼は船舶一覧を確認する。
輸送状況。
損傷。
補償。
待機時間。
追加費用。
すべて記録しなければならない。
Tsumugiはその向かいに座っている。
「多いな」
Lanは顔を上げない。
「そうだな」
「もう仕事はほとんど終わってるんじゃない?」
「作戦上は」
「じゃあ?」
「事務上はまだだ」
Tsumugiは黙った。
Lanがようやく彼女を見る。
「艦長」
「何?」
「仕事が終わっても書類が完全でなければ、Consortiumは簡単には支払ってくれない」
Tsumugiはすぐに姿勢を正した。
「なら、続けて」
Lanが笑う。
「そのつもりだ」
Tsumugiが画面を見る。
「支払われる金額はいくら?」
Lanが首を振る。
「すべての報告が届くまでは確定できない」
「分かった」
「ただ、一つだけ明確だ」
「何?」
「この契約は本当に大きい」
Tsumugiが笑う。
「分かってる」
「だから、仕事のすべての部分が記録されていることを確認する必要がある」
「お金のために」
「お金だけじゃない」
Lanは一つの書類を閉じる。
「評判だ」
Tsumugiがうなずく。
「そうだな」
Lanが笑う。
「これほど大きな契約をきちんと完了させれば、ASTRAEONが大規模な仕事でも、無闇に行動せず対応できるという証拠になる」
Tsumugiは身体を預ける。
「その部分は好き」
「どの部分?」
「自分たちが強いと証明するために、何かを壊す必要がないところ」
Lanが笑う。
「艦長も成長したな」
「昔から学んでる」
「本当に?」
「……たぶん」
Lanが小さく笑った。
しばらくして、最後の報告が届いた。
Vesperaが最終航路を送る。
「Outer Mining Corridorの航路は、次の船団にとって安全です」
Tsumugiが答える。
「よかった」
Calistaが続けて報告する。
「産業システムの検査が完了しました。重大な損傷はありません。2つの施設で定期メンテナンスが必要ですが、運用に対する直接的な脅威はありません」
「分かった」
続いてRheaの声が入る。
「艦長」
Tsumugiが笑う。
「どうだった?」
「検査完了」
「問題は?」
「ない」
「Mobile Frameは?」
「完璧」
Tsumugiが小さく笑う。
「嬉しそうだな」
「もちろん」
「よかった」
Rheaが続ける。
「艦長」
「何?」
「一つ言いたいことがある」
「何?」
「こういう仕事、好き」
Tsumugiは少し黙った。
「戦うのが好きなだけだと思ってた」
Rheaが笑う。
「戦うのは好き。でも、自分がやったことによって、他の人の旅がより安全になると分かると……」
声が少し変わる。
「なんだか嬉しい」
Tsumugiが笑う。
「それはよかった」
「うん」
Tsumugiは画面を見る。
「じゃあ、終わりだ」
それから間もなく、正式な通知が届いた。
Eldras Mining Consortiumのロゴがメインスクリーンに表示される。
Aldric Vossが通信画面に現れた。
「Captain Hoshizaki」
Tsumugiが答える。
「Aldric」
「すべての報告を受け取りました」
「どうだった?」
Aldricが笑う。
「ASTRAEONに割り当てられたすべての段階が完了しました」
Tsumugiが安堵の息を吐く。
「よかった」
「護衛完了」
Aldricが続ける。
「偵察完了」
一つずつ。
「民間人保護完了」
「証拠収集完了」
「警備および企業資産の検査も完了しました」
Tsumugiがうなずく。
「それなら、契約完了だ」
Aldricが笑う。
「正式には、そうです」
Tsumugiの隣にいるLanが最後の書類を開く。
デジタル署名を確認する。
そしてうなずく。
Tsumugiが見る。
「終わった?」
Lanが答える。
「終わった」
TsumugiはAldricに向き直る。
「ありがとう」
「こちらこそ、感謝します」
Aldricの表情が真剣になる。
「あなたが来る前、Eldrasは多くの時間と資源を失っていました」
Tsumugiは答えない。
「しかし、ASTRAEONがここにいる間に、それまで解決できなかったいくつもの問題に対処することができました」
Aldricが笑う。
「またご一緒できることを願っています」
Tsumugiは頬をかく。
「契約が良ければ、たぶん」
Aldricが笑う。
「覚えておきましょう」
その後、画面が切り替わった。
取引通知が表示される。
「契約報酬 ― Eldras Mining Consortium」
「金額:1,500,000 Galactic Credit」
Tsumugiはその数字を見る。
すぐには何も言わなかった。
Seraphielが支払い前の残高を表示する。
「支払い前残高:約700,000 Galactic Credit」
Tsumugiが瞬きをする。
「700,000」
「その通りです」
「じゃあ、今は?」
画面の数字が変わる。
「支払い後残高:2,200,000 Galactic Credit」
部屋が静まり返る。
最初に口を開いたのはRheaだった。
「……2,200,000?」
Lanが画面を見る。
「その通り」
Calistaもその数字を見る。
「結構あるね」
Rheaが振り返る。
「結構ある?」
Calistaが肩をすくめる。
「前は一つ一つの出費を計算していた人にとっては、かなり大きな金額」
Tsumugiはまだ画面を見ていた。
2,200,000 Galactic Credit。
彼女は初めて銀河における金銭の価値を理解した時のことを思い出した。
5,000 Galactic Creditだけでも、決して小さな金額ではなかった。
その後、さらに大きな残高も見たことがある。
927,000 GC。
支出と長い旅の後、その金額はもうそのままでは残っていなかった。
今、残高は再び増えた。
運ではない。
ただでもらった報酬でもない。
自分たちが本当にやり遂げた仕事によって得たものだ。
Tsumugiが笑う。
「私たち、お金持ちだ」
Rheaがすぐに振り返る。
「ついに?」
Tsumugiは彼女を見る。
そして首を振る。
「違う」
Rheaが固まる。
「え?」
Tsumugiが笑う。
「でも、休暇を取るには十分だ」
Rheaが固まった。
そして耳がまっすぐ立つ。
「休暇?」
Lanがゆっくり顔を上げる。
「休暇?」
Calistaも読む手を止める。
「休暇?」
航行室にいたVesperaも、通信を通じて会話を聞いていた。
「休暇?」
Tsumugiは全員を見る。
「そう」
Rheaがすぐに立ち上がる。
「艦長」
「何?」
「本気?」
「本気」
「契約なし?」
「しばらくは」
「護衛なし?」
「なし」
「海賊なし?」
「そうならないことを願う」
Rheaが両手を握る。
「YES!」
Tsumugiが笑う。
Lanも笑う。
Calistaは小さく息を吐く。
Vesperaは数秒黙った。
そして尋ねる。
「どこへ?」
Tsumugiは黙った。
「まだ決めてない」
Lanがすぐに画面を開く。
「なら、いくつか候補を探せます」
Calistaが付け加える。
「興味深い産業施設があるなら、私も見てみたい」
Rheaがすぐに割り込む。
「私はリゾートがいい」
LanがRheaを見る。
「まだ惑星すら決まってないぞ」
「重要なのはリゾート」
Vesperaが薄く笑う。
「面白そうな探索航路を探してみます」
Tsumugiは全員を見る。
ほんの数分前まで、彼らはフロンティアで大規模な契約を完了させたばかりだった。
それなのに、今ではクルー全員が休暇について話し始めている。
Tsumugiは笑いをこらえられなかった。
「分かった」
彼女は立ち上がる。
「しばらく契約のことは考えなくていい」
Rheaが満面の笑みを浮かべる。
「艦長、本気なんだ」
「そうだ」
Tsumugiはもう一度、2,200,000 Galactic Creditの残高を見る。
そして画面を閉じた。
「さあ、ASTRAEONに戻ろう」
Seraphielが笑う。
「了解しました、Tsumugi」
Eldras Mining Station 7の外では、アステロイド航路が今もゆっくりと動いている。
鉱物輸送船は再び仕事を始めている。
精製施設は稼働を続けている。
産業用ドローンも動き続けている。
Eldras Mining Corridorは、ASTRAEONの契約が終わったからといって止まることはない。
しかしTsumugiとクルーにとって、一つの旅路がついに終わった。
フロンティアでの仕事を完了した。
報酬も得た。
そして長い旅の後、初めて――
仕事をしない理由ができた。
Tsumugiはコックピットの窓から星々を見つめる。
「Seraphiel」
「はい?」
「いい場所を探して」
「何のために?」
Tsumugiが笑う。
「休暇」
Seraphielが穏やかな声で答える。
「分かりました、Tsumugi。探してみます」
ASTRAEONがEldras Mining Station 7を離れ始める。
次の旅は、契約へ向かうものではない。
戦場へ向かうものでもない。
フロンティアへ向かうものでもない。
もっとずっと単純なものへ向かう旅だ。
休むための場所。
旅を楽しむための場所。
楽しむための場所。
しかし、本当に休暇へ出発する前に――
彼らはまず、どこへ行くのかを決めなければならない。
そして長い間で初めて、その決断は金銭にも、契約にも、安全にも関係しない。
ただ一つの問いだけ。
彼らは、どこへ休暇に行きたいのか?
【次話 第64話 ― 「私たちは契約を受けない」】
「私たちは契約を受けない」
Eldrasとの契約を完了し、1,500,000 Galactic Creditの支払いを受けた後、Tsumugiはしばらく新しい契約を受けないことを宣言する。Rheaはその決定をすぐに歓迎し、Lanは観光地を探し始め、Calistaは産業観光に興味を示し、Vesperaは探索航路を確認し、Seraphielは彼らの旅に適したGalactic Leisure Corridorを探し始める。
しかし、その観光航路へ向かう旅には数日を要する。
【第64話へ続く……】




