第五十九章 百五十万の契約
第五十九章 百五十万の契約
テラリス・フロンティア仲裁港は、壮麗なステーションではなかった。
それは宇宙空間に浮かぶ大きなプラットフォームだ——灰色の金属でできた簡素な構造物で、いくつかのドックが指のように側面から突き出している。周囲では、数隻の貨物船とパトロール船が慎重に動き、主要構造物から距離を保っている。美しいパターンで点滅する灯りはない。印象的な建築もない。ただ機能だけ——見せかけのない。
「ここだ」とランが目の前の画面を見つめながら言った。「テラリス・フロンティア仲裁港。エルドラス全域の仲裁センターだ。」
ツムギは頷いた。「ドッキングはどこだ?」
「ドック3。既に許可が出ている。」
アストレオンはゆっくりと指定されたドックへ向かった。窓の外で、ツムギは停泊している他の船を見ることができた——いくつかは小惑星の塵で汚れた船体を持つ大型貨物船、他は舷側に武器が突き出たパトロール船だ。
「セラフィエル、何か不審なものはあるか?」
「ありません、ツムギ。周囲の船はすべて正常に見えます。監視や待ち伏せの兆候はありません。」
「よし。」
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彼らはアストレオンを降りた——ツムギ、ラン、カリスタ。レアは船に残ることを選び、ヴァルキリーを何度目かの点検をしている。既に自分の船で先に到着していたヴェスペラが、ステーションの廊下で待っていた。
「船長」と彼女は彼らが合流した時言った。「見て回った。このステーションは小さいが、かなり賑わっている。何人かの企業代表が待っている。」
「エルドラスの代表か?」
「そのようだ。デッキ2の会議室にいる。」
ツムギは頷いた。「行こう。」
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テラリス・フロンティア仲裁港の会議室は、コラヴェルのような豪華な会議室とは違った。簡素な部屋だ——使い込まれた木の机、不揃いな椅子、そして温かい黄色い光を放つ灯り。壁には色あせたエルドラス鉱山回廊の地図があり、手書きの印がいくつかついている。
机の周りには、既に三人がいた。
一人目は五十歳ほどの人間の男性で、短く切った灰色の髪と鋭い目をしている。清潔な作業服を着ている——濃い青のシャツ、灰色の長ズボン、長く使われているように見えるブーツ。胸にはエルドラス鉱山コンソーシアムの記章——交差する線が入った菱形のシンボル——がついている。
二人目は銀髪を後ろで結んだスペースエルフの女性だ。年齢は三十代ほどで、静かな青い目と読み取れない表情をしている。よりフォーマルな服装——ハイカラーの暗いスーツ——を着ている。
三人目は濃い赤髭と鋭い目をしたドワーフの男性だ。他の者より背が低いが、体はがっしりしている——何年も鉱山で働いてきた者のように。
「星崎船長」と人間の男性が立ち上がって言った。「私はアルドリック・ヴォス、エルドラス鉱山コンソーシアムの運営責任者です。こちらは我々の代表——リラ・ヴォス、警備主任、そしてボリン・ストーンハート、技術主任です。」
ツムギは頷いた。「こちらはラン・ヴァレス、私のビジネスパートナー。そしてカリスタ・フェロ、技術コンサルタントです。」
アルドリックは彼らを座るように促した。
「来てくださってありがとうございます。あなたの評判は聞いています——ヘリオヴァー・ロジスティクス艦隊を壊滅させたこと、そしてオルテイアでヴェイラウン・ロジスティクスを助けたこと。」
「仕事をしただけです。」
「だからこそ、あなたと仕事がしたいのです。」アルドリックはタブレットを差し出した。「これが契約書の全てです。」
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ツムギは注意深く契約書を読んだ。
隣では、ランも読んでいる——目は素早く動き、細部を記録している。カリスタは自分のタブレットで読み、時折眉をひそめたり、静かに頷いたりしている。
契約はツムギが予想していたよりもはるかに複雑だった。
「契約 — エルドラス鉱山コンソーシアム」
「任務:」
・「護衛:」鉱山から港への鉱物コンボイを守る。
・「偵察:」エルドラス地域の海賊および武装グループの活動をマッピングする。
・「民間人保護:」民間人と鉱山労働者を脅威から守る。
・「証拠収集:」鉱山操業を脅かす犯罪活動の証拠を収集する。
・「企業警備:」企業資産を妨害行為や窃盗から守る。
「報酬:1,500,000ギャラクシークレジット」
「期間:30日間」
「リスク:高」
「注記:」
・「この契約は広大な地域を対象とする——エルドラス鉱山回廊は約12の恒星系にわたる。」
・「あなたはその地域の鉱山の安全保障に責任を持つ。」
・「あなたは地元の警備部隊および仲裁当局と協力する。」
・「コンソーシアムの承認なしに攻勢作戦を行うことは許可されない。」
ツムギはタブレットを置いた。
「これは普通の護衛契約ではない。」
「いいえ」とアルドリックは言った。「これは包括的な安全保障契約です。我々は地域全体の安全保障を管理できる人物が必要なのです——一隻のコンボイだけでなく。」
「なぜ自社の警備部隊を使わない?」
「います。しかし十分ではありません。エルドラス地域は広すぎ、脅威が多すぎる。」アルドリックは体を前に傾けた。「我々は過去二ヶ月で三つのコンボイを失いました。労働者を失いました。装備を失いました。このままでは続けられません。」
「だから外部の助けを求めた。」
「はい。そしてあなたの評判で選びました。」
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ランが手を挙げた。
「いくつか質問があります。」
「どうぞ」とアルドリックは言った。
「まず、『承認なしの攻勢作戦禁止』の条項について。それはどういう意味ですか?」
「それは、我々の許可なしに海賊基地や武装グループを攻撃できないということです。不必要な紛争を望んでいません。」
「次に、地元警備部隊との調整について。誰が指揮を執るのですか?」
「あなたは自分の作戦に対して権限を持ちますが、合同作戦では彼らと調整する必要があります。」
「三つ目に、支払いについて。保証はありますか?」
アルドリックは微かに微笑んだ。「支払いは三段階で行われます。前払い五十万、二週間後に五十万、契約完了後に五十万。資金はフロンティア銀行のエスクロー口座に預けられます。」
ランは頷いた。「それは公平です。」
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カリスタが口を開いた。
「インフラについて質問があります。」
「どうぞ」とボリン・ストーンハート——ドワーフの男性——が言った。
「エルドラスの鉱山——まだ稼働しているのはいくつですか?」
「大きな鉱山が七つ。うち三つは主要鉱山で、ほとんどの鉱物を生産しています。残り四つは地元住民が管理する小さな鉱山です。」
「インフラは?」
「道路、パイプライン、通信システム。ほとんどが古い。全てを修理する予算がありません。」
カリスタは眉をひそめた。「つまりインフラのリスクもある?」
「はい。それが我々が助けを必要とする理由の一つです。インフラが壊れれば、操業が妨げられます。」
カリスタは頷いた。「到着したらインフラを検査します。」
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会議はほぼ二時間続いた。
終わった時、ツムギと他の者たちはアストレオンに戻った。リビングルームで、彼らは一緒に座った——ツムギ、セラフィエル、レア、ラン、カリスタ、そして聞き役として参加したヴェスペラ。
「で」とレアが言った。「この契約を受けるのか?」
「もう受けると決めている」とツムギは答えた。
「でも今はもっとわかっている。これは単なる護衛じゃない。大規模な安全保障作戦だ。」
「ああ。でも報酬はそれだけの価値がある。」
レアは微笑んだ。「待ちきれない。」
ランが手を挙げた。「一つ気になることがあります。」
「何だ?」
「『承認なしの攻勢作戦禁止』の条項。つまり先に攻撃できない。相手が攻撃してくるまで待たなければならない。」
「それが問題か?」
「問題になり得る。海賊が我々が先に攻撃できないと知れば、我々を弄ぶことができる。」
ツムギは考えた。「方法を探す。」
カリスタが付け加えた。「私は彼らのインフラも検査したい。問題があれば、悪化する前に修理できる。」
「良い考えだ。」
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夜、ツムギはコックピットの窓の前に立った。
外では、テラリス・フロンティア仲裁港が小さな灯りを点滅させている。数隻の船がまだステーションの周りを動き、遠くではエルドラス鉱山回廊が待っている——広大で、豊かで、危険な領域だ。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「この契約を分析したか?」
「はい。全体として、この契約は有益です。しかし注意すべきリスクがいくつかあります——特に攻勢作戦条項と地元部隊との調整です。」
「対処できると思うか?」
「できると信じています。しかし慎重でなければなりません。」
ツムギは頷いた。
「明日エルドラスへ出発する。」
「はい。ルートは準備済みです。」
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突然、セラフィエルが止まった。
「ツムギ。」
その声の調子が変わった——より緊張し、より警戒している。ツムギはすぐに身を固くした。
「何だ?」
「軍事活動を検知しました。」
ツムギは振り返った。「誰の?」
「まだ特定できません。しかし標準センサー範囲外で船の動きがあります——現在地から約二十万キロメートル。通常とは異なるパターンで移動しています。」
「何隻だ?」
「三隻です。中型サイズ。識別信号を送信していません。」
ツムギは画面を見つめた。地図上に三つの赤い点が端に現れている——遠いが、接近している。
「脅威か?」
「まだ。しかし観察しています。」
ツムギは考えた。
「監視を続けろ。接近すれば知らせろ。」
「了解しました、ツムギ。」
ツムギは外の星々を見つめた。
ヴェルクラーデン? それとも別の誰か?
わからない。しかし突き止めるつもりだ。
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【次回予告 第六十章 —— 「大きな契約へ」】
アストレオンはエルドラス鉱山回廊へ向けて出発する準備を整える。レアはモビルフレームを準備し、ランは交易契約を確保し、カリスタはエンジニアリングを検査し、ヴェスペラは自分の船の修理を完了させる。しかし準備の最中、セラフィエルが出自不明の軍事活動を検知する。
【第六十章へ続く…】
ASTRAEON VELORIA小説の更新をお待ちください。次のエピソードと次の巻は読みやすく、ストーリーを理解しやすいように構成しますので、しばらくお待ちください(。・ω・。)




