第五十八章 評判の値段
第五十八章 評判の値段
何かが変わったとツムギが気づいたのは、ナルコール・フロンティア・ステーションの廊下を歩いていて、小さな子供が彼を指さした時だった。
「あれだ! アストレオンの船長だ!」
ツムギは立ち止まった。その子供——ウサギの耳を持つビーストマン——は母親の隣に立ち、目をまん丸にして感嘆している。母親は気まずそうに微笑み、頭を下げた。
「申し訳ありません、船長。この子があなたを崇拝していて。」
ツムギは何と答えればいいのかわからなかった。
「それは……問題ない。」
彼は歩き続けたが、周囲の人々の視線を感じていた。何人かはひそひそと話す。何人かは微笑む。何人かは手に持った小さな機器で写真を撮る。
「セラフィエル」と彼は静かに言った。
「はい、ツムギ?」
「俺は有名人になったのか?」
「そのようですね。」
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ナルコールの傭兵協会の事務所で、ツムギは別の係官——金髪に眼鏡をかけた人間の男性——に迎えられた。彼はツムギが入ると立ち上がった。
「星崎船長! ようこそ。」
ツムギは眉をひそめた。「契約を受け取りに来ただけだ。」
「もちろん、もちろんです。お掛けください。利用可能な契約を全てお持ちします。」
係官は足早に去っていった。ツムギは隣に座るランを見た。
「なぜ彼はあんなに……張り切っているんだ?」
ランは微かに微笑んだ。「あなたは有名人です、船長。そして人は有名人に奉仕したがるものです。」
「これは好きじゃない。」
「わかっています。でもこれは評判の結果です。」
係官が書類の山を持って戻ってきた——ツムギが今まで見た中で最も多い量だ。
「これがあなたに利用可能な全ての契約です、船長。いくつか非常に魅力的なものがあります——高報酬の護衛契約、偵察任務、そして協力したいと考えている企業からの申し出もいくつか。」
ツムギはそのリストを読んだ。
「これ全部……俺のために?」
「はい。信頼できる船長としてのあなたの評判が広まっています。多くの企業があなたと仕事をしたいと考えています。」
ツムギはランを見た。ランは肩をすくめた。
「言ったでしょう。評判は資産よ。」
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彼らは書類の山を持ってアストレオンに戻った。
リビングルームでは、レアとカリスタが既に待っていた。ヴェスペラもそこにいた——隅に座って日誌を手にしているが、その目はツムギを追っている。
「どうだった?」とレアが尋ねた。
「選択肢がたくさんある」とツムギは答えた。「多すぎるくらいだ。」
彼は書類をテーブルに置いた。レアとカリスタが近づいて見る。
「ヴェイラウン星系への護衛契約。報酬八万GC。」
「ケラス=ヴェイン区域での偵察契約。報酬十二万GC。」
「エルドラスでの鉱山保護契約。報酬は……百五十万GC。」
レアは静かに口笛を吹いた。「最後のやつ。」
ツムギは頷いた。「エルドラス契約。それが一番魅力的だ。」
カリスタはその契約の詳細を読んだ。「リスク高。不安定な地域。でも報酬は大きい。」
「我々は既にそれを取ることに決めている」とツムギは言った。「でも今はもっと多くの選択肢がある。エルドラスの前に、より安全な契約を選ぶこともできる。」
「あるいは直接エルドラスに行くこともできる」とレアが言った。「早く終われば、早くヴェルクラーデンと戦える。」
ツムギは考えた。
「直接エルドラスに行く。もう十分待った。」
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夜、ツムギはタブレットを手にリビングルームに座っていた。
彼はニュースを読んでいた——滅多にしないことだ。しかしセラフィエルが、人々が自分のことを何と言っているか知っておくべきだと提案したのだ。
「アストレオンの船長、フロンティアの新たなプレイヤーとなる」
「ヘリオヴァー・ロジスティクス艦隊を壊滅させた全長八千六百メートルの豪華ヨットが、今やセクター全体で話題となっている。星崎紬船長、地球出身の人間は、信頼できる——そして危険な——傭兵としての評判を築いてきた。」
「複数の情報筋によると、アストレオン・ヴェロリアは銀河標準をはるかに超える技術を持っているという。しかしその出自を知る者はいない。」
ツムギはタブレットを置いた。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「これは好きじゃない。」
「わかっています。しかしこれは避けられません。アストレオンほどの船を持ち、我々が成し遂げたほどの契約を完了すれば、注目は当然の結果です。」
「何ができる?」
「動き続けることができます。頻繁に移動すればするほど、人々が我々を追跡するのは難しくなります。」
ツムギは頷いた。
「明日エルドラスへ出発する。早ければ早いほどいい。」
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翌朝、アストレオンはナルコール・フロンティア・ステーションを離れた。
コックピットで、ツムギはパイロットシートに座った。隣では、レアがヴァルキリーの準備を整えている。後方では、ランが交易データを確認し、カリスタがエンジニアリングシステムを検査している。
ヴェスペラは展望窓の前に立っていた——彼女自身の船は既に準備ができており、アストレオンを安全な距離から追従する。
「船長、エルドラス鉱山回廊へ向けて十分後にFTLに入ります。」
ツムギは頷いた。
「よし。位置を維持しろ。」
「ツムギ。」
「何だ?」
「新しいメッセージが届きました。」
「表示しろ。」
目の前の画面が点灯し、傭兵協会からの短いメッセージを表示した。
「新規契約 — 優先度:高」
「依頼主:エルドラス鉱山コンソーシアム」
「場所:エルドラス鉱山回廊」
「任務:護衛、偵察、民間人保護、証拠収集」
「報酬:1,500,000ギャラクシークレジット」
「リスク:高」
「注記:この契約には高い戦闘能力を持つ船と経験豊富な乗組員が必要です。Bランク以上の傭兵のみ利用可能。」
ツムギはそのメッセージをもう一度読んだ。
「セラフィエル、これは以前に受けた契約と同じだ。」
「はい。まだ興味があるかを確認するために再送してきました。」
「返信しろ。数日以内に到着すると伝えろ。」
「了解しました。」
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後方では、カリスタがレアと共に休憩エリアに加わった。
「準備はできてるか?」とレアが尋ねた。
「いつでも。」
「大きな契約になる。戦うかもしれない。」
「ヴァルキリーが最高の状態であることを確認する。」
レアは微笑んだ。「ありがとう。」
カリスタは肩をすくめた。「それが仕事だから。」
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夜、ツムギはコックピットの窓の前に立った。
外では、星々が青い光の線となって流れている。遠くに、エルドラス鉱山回廊が待っている——鉱物の豊かさで知られるが、危険でも知られる領域だ。
「セラフィエル。」
「はい、ツムギ?」
「我々は正しいことをしているのか?」
「エルドラス契約を受けることですか?」
「ああ。」
「正しい決断だと信じています。この契約はヴェルクラーデンに対抗し、我々と仕事をする人々を守るのに十分な資源を与えてくれます。」
ツムギは頷いた。
「成功する。」
「私は船長を信じています、ツムギ。」
ツムギは星々を見つめた。
「俺も俺たちを信じている。」
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【次回予告 第五十九章 —— 「百五十万の契約」】
ツムギとその乗組員はエルドラス契約に正式に署名するため、テラリス・フロンティア仲裁港に到着する。そこで彼らはエルドラス鉱山コンソーシアムの代表と会う——そしてこの契約が予想よりもはるかに複雑であることを知る。
【第五十九章へ続く…】




