第五十七章 コラヴェル企業区
第五十七章 コラヴェル企業区
アストレオンはコラヴェル星系の端でFTLを解除した——ツムギがこれまで見たことのないような恒星系だ。散らばる小惑星も、暗闇に浮かぶ小さなステーションもない。あるのは青緑色の惑星と、その周囲を取り囲む数十の軌道構造物だけだ——貨物プラットフォーム、ドック、通信塔、そして巨大な蜂の巣のように整然と並んだステーション群。
「セラフィエル、これは……」
「コラヴェル企業区です、ツムギ。ヴェルクラーデン・インダストリアルの作戦中枢です。軌道人口は約八十万人。惑星人口は約千二百万人。」
レアが彼の隣に立ち、目を細めてその光景を見つめた。
「整いすぎてる」と彼女は言った。「完璧すぎる。」
ランは頷いた。「それが大企業を違わせるのよ。完璧に見せるだけの資金があるの。」
カリスタがタブレットを手にコックピットに入ってきた。
「コラヴェルについてのデータを読んだ」と彼女は言った。「三つの主要軌道がある。それぞれ異なる機能を持っている。第一軌道は貨物用。第二軌道は管理用。第三軌道は警備用。」
「警備?」とツムギが尋ねた。
「ヴェルクラーデンは独自のパトロール艦隊を持っている。約二百隻。銀河最大ではないが、自分たちの領域を守るには十分だ。」
ツムギは頷いた。
「どこにドッキングする?」
「第二軌道です。管理用ドックです。既に許可が下りています。」
「よし。企業の世界がどんなものか見てみよう。」
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コラヴェルの管理用ドックは、ツムギが訪れたどのドックとも違っていた。
不規則に点滅する灯りはない。錆びたパネルもない。汚れた服で走り回る作業員もない。あるのは清潔な廊下、輝く床、そして安定した白光を放つ照明だけだ。行き交う人々は整った服装をしている——ビジネススーツ、会社の制服、あるいはフォーマルな服装。誰も急いで歩かない。誰も大声で話さない。
「これって……オフィスみたいだ」とレアは静かに言った。
「とても大きなオフィスね」とランが返した。
カリスタは鋭い目で周囲を観察した。「これはヴェルクラーデンの公開された顔よ。投資家、パートナー、重要な客を迎える場所。彼らが……完璧に見せたい場所。」
ツムギは頷いた。彼は空気中の圧力を感じることができた——見えないが、現実の圧力。整った服装をし、丁寧に話し、書かれていないルールに従うことを求める圧力。
彼らは廊下を歩き、会議室へ向かった。
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会議室は広く、濃い木製の長いテーブルと快適な椅子がある。壁にはヴェルクラーデンのロゴ——銀の線が入った赤い三角形——を表示する大きなスクリーンがある。部屋の隅には、既に待っている数人の人物がいた——デイヴェン・クロルではなく、別の者たちだ。
六十歳ほどの白髪と鋭い青い目をした人間の男性がテーブルの端に座っている。その隣では、金髪に厚い眼鏡をかけたスペースエルフの女性が書類を読んでいる。反対側では、灰色の髭と真剣な表情のドワーフの男性が彼らを観察している。
「星崎船長」と年老いた男性が言った。「私はアルクトゥルス・ヴェイン、ヴェルクラーデン・インダストリアルのフロンティア・セクター担当の最高責任者です。来てくださって感謝します。」
ツムギは用意された椅子に座った。後ろにはランとカリスタが立っている。
「会談を求めたのはそちらだ」とツムギは言った。
「はい。協力について話し合いたいのです。」
「二度も断ったはずだ。」
「わかっています。」アルクトゥルスは微かに微笑んだ。「しかしもう一度試したい。今回は、異なる提案で。」
彼はタブレットを差し出した。ツムギはそれを受け取り、読んだ。
この契約は独占契約ではない。これはパートナーシップ契約だ——ヴェルクラーデンが交易ネットワークへのアクセス、他社からの保護、そして物流支援を提供する合意。その見返りに、ツムギは特定の貨物輸送についてヴェルクラーデンに優先権を与える——独占ではなく、優先権だ。
「独占を求めないのか?」とツムギは尋ねた。
「いいえ。あなたが独立を保ちたいことを理解しました。だからより柔軟なパートナーシップを提案します。」
ツムギはその契約を注意深く読んだ。隣でランも読んでいる——目は素早く動き、細部を記録している。
「ラン、どう思う?」
ランは彼を見た。「この契約は前回より良いです。独占条項はありません。縛る条項もありません。しかし……」
「しかし?」
「明確にすべき条項がいくつかあります。優先輸送について。保護について。双方の権利と義務について。」
アルクトゥルスは頷いた。「話し合えます。」
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協議は二時間近く続いた。
ランが交渉をリードした——冷静だが、断固として。彼女は各条項を問いただし、明確化を求め、不当だと考えるいくつかの点を拒否した。カリスタは技術的な見識で支援した——特に物流コストと運用要件について。
ツムギは観察していた。彼は多くを語らなかった——ただ聞き、観察し、時折承認または拒否を示すだけだった。
会談の終わりに近づいた時、アルクトゥルスが手を上げた。
「星崎船長、個人的にお話ししたいことがあります。」
ツムギは彼を見た。「何について?」
「契約にはないことについて。」
ツムギはランに振り返った。ランが小さく頷いた。
「わかった。」
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二人はより小さな部屋に座った——ツムギとアルクトゥルスだけ。外では、ラン、カリスタ、そして他の者たちが待っている。
「船長」とアルクトゥルスは言った。「率直に話します。ヴェルクラーデン・インダストリアルは拒否されるのが好きではありません。しかし我々は愚かでもありません。あなたが非常に強力な船を持っていることを知っています。有能なクルーを持っていることを知っています。そして市場操作を調査していることを知っています。」
ツムギは答えなかった。
「我々は違法なことは何もしていません」とアルクトゥルスは続けた。「我々がしていることはすべて合法的なビジネス戦略の一部です。しかし我々のいくつかの戦術が……攻撃的に見えるかもしれないことは認識しています。」
「攻撃的?」
「我々は競合を圧迫します。価格を操作します。影響力を使って利益を得ます。それが我々のビジネスのやり方です。」アルクトゥルスはツムギを見た。「しかし我々はあなたのような敵を持ちたくありません。」
ツムギはしばらく彼を見つめた。
「何が欲しい?」
「停戦を提案したい。我々はあなたのパートナーへの圧力をやめます。あなたの配送を妨害するのをやめます。その見返りに、あなたは我々の調査をやめてください。」
ツムギは考えた。
「魅力的な提案だ。」
「同意されますか?」
ツムギは立ち上がった。
「検討する。」
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部屋の外で、ランが彼に近づいた。
「何を言った?」
「停戦を提案してきた。我々が調査をやめれば、彼らは圧力をやめる。」
ランは眉をひそめた。「それは……怪しい。」
「わかっている。」
「なぜ急に和平を求める?」
「彼らが恐れているからだ。」カリスタが廊下の曲がり角から現れた。「彼らは我々が見つけるかもしれないものを恐れている。我々ができることを恐れている。」
ツムギは頷いた。
「調査を続ける。でも彼らには知らせない。」
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夜、彼らはアストレオンに戻った。
リビングルームで、全員が集まった——ツムギ、セラフィエル、レア、ラン、カリスタ。ヴェスペラもそこにいたが、多くは語らなかった。
「で」とレアが言った。「これからどうする?」
「エルドラスの契約を続ける」とツムギは答えた。「あの仕事を終わらせる。その後、ヴェルクラーデンとどうするか決める。」
「調査は?」
「続ける。静かに。」
ランは頷いた。「私がすべて手配するわ。」
カリスタはツムギを見た。「船長、手伝いたい。」
「どうやって?」
「技術データを分析できる。もしヴェルクラーデンが市場操作をしているなら、デジタル的な痕跡があるはず——取引、通信、システムログ。それを探すのを手伝える。」
ツムギは考えた。「セラフィエルと働けるか?」
「できる。」
「私は利用可能なデータでカリスタを支援します。」
ツムギは頷いた。
「わかった。明日から始める。」
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【次回予告 第五十八章 —— 「評判の値段」】
ツムギについての噂が広まり始める——「アストレオンの船長、フロンティアの新たなプレイヤーとなる」。評判は利益をもたらす:より良い契約、より高い信頼、より容易なアクセス。しかしそれはまた、望ましくない注目ももたらす。
【第五十八章へ続く…】




